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54 秘密の洞窟

お風呂久しぶりだな、極楽極楽っと。


「旅して仕事を休んでたのに、普段より稼ぎがデカイって、どんだけだよ。」


「ここだけの話にしとかないと、妬まれるよ。」


ボクの忠告にラグは肩を竦め、スミスも同意する。


「そうだね~ツオーネがいい例だよね。ところで、留守中の泥棒って誰だろ?」


「あっ、そういえばそうだね、誰だろう?」


「考えても仕方ないだろ、そのうち分かる事さ。」


スミスとボクの疑問に、トリルが生返事で答えた。

Cランク昇格の事で、頭の中がモヤモヤしているのか、返しが杜撰だな。


「あっ、そういえば。」


「ノア注意報発令だ。」


おどけたトリルの言葉が、少し癪に障ったぞ。

ボクはいつの間にか、危険人物扱いになっているな、軽く釘を刺しておかねば。


「もうそのジョーダン、笑えないからね!」


「ごめんごめん、それより何だよ?」


「岩場の穴、そろそろ塞いだ方がいいんじゃないかなって話だよ。

この先、ボク達と激昂が街を離れる時期が、重なる事も有ると思うんだ。」


「そうなると、街に残るウルフはミアの2匹か。」


「確かにきついな。」


「もうゼクス達の意見を聞いて、了解は取ってるんだ。」


ロックウルフ達がそれでいいのなら、問題無いと賛成した。

実は、反対意見が出なくて、ほっと胸を撫で下ろしていたんだ。

みんなには内緒で、表面だけ塞いで空洞を利用しようと計画している。

そろそろ、錬金を試す部屋が欲しいなと、考えていたからね。


帰り道でラグが、3後日Cランク昇格の話し合いをするから部屋に集合する事と、

それが決まらないと落ち着かないので、仕事も休みにすると話して、解散した。


次の日、約束や仕事が無い、貴重な一日をどう過ごすかを考える。

岩場の洞窟までジャンプしてみたいが、最近忙しくて飛んでいないからな。

少し不安だったので、書斎から部屋まで試すと難無く成功した。


覚悟を決め、ボクは洞窟の中を強くイメージして、試みた。

クラっと視界が揺れ、暗闇に放り込まれた感覚に襲われる、そして暗闇だった。

一瞬焦ったが、昨日帰りに入り口を塞いだ事を思い出し、ライトを灯した。


「家の中を移動するのと違って、魔力の消費量が、やっぱり多いな。

それにしても…うへ、腐臭が…。掃除しないと、床や壁、天井もか…ハァ~。」


ならば、洗濯機の要領で、掃除すれば早いと思い、

入り口だった正面に排水口を作ると不味いので、洞窟の奥を見に行く。

その際、通路の斜め上に、空気穴を作っておく事も忘れない。

窒息したくないからね。


「結構深いんだな。通路が長いなら、どこかで切り上げて塞ぐか。」


そんな事を考えながらどんどん奥に進むと、ザーザーと流水音が聞こえてきた。

ボクは興味を引かれ、更に洞窟の奥へ歩を進めると、細い滝と小さな泉があった。

通路は、ずっと先まで続いていたが、この空間を拠点にしようと決める。


早速、今通って来た通路を塞ぐ事にした。

掃除しなくて済んで、ホッとしたよ。汚れは何とかなっても、染付いた臭いがね。

安全確認のため、水の鑑定をすると、綺麗な真水と出たので飲んでみる。


「うまい!魔物が潜んでいる様子もないな。

この通路の先も気になるけど、また今度にして取り敢えず塞いでおこう。」


ドライは、この場所がいたく気に入ったようで、滝の周りを浮遊している。

マイナスイオンでも、出ているのかな?


人目を気にしなくていいので、ディメーションも開放しておく。

ワン達は基本臆病なので、直ぐに出て来ないが、放って置いても大丈夫だろう。

しかし、体は大きいのに、まるで子犬か子猫だな。


ボクが机や棚を作り、ドライは蔓で椅子やマットを作る。

準備が出来たら、前々からドライに言われていた物を、作る予定だ。


手順は、まず生命樹の実をすり潰して、ドロドロに煮詰める。

次は焦がさないよう、火加減に注意しつつ、真水と魔力を少しずつ足して、

ゆっくり混ぜながら慎重に練り合わせる。

そして、白金色のサラサラした液体になったら、完成だそうだ。


「あの泉、綺麗な真水って出たけど、使えるのかな?

やっぱり確実な方法がいいか、買い置きの真水でまず試してみようっと。」


ディメーションに入り、ずっと前に買って置いた、錬金の道具を取り出した。

錬金Lv10にしてあるおかげか、初めてなのに、分量や手順が自然に理解できる。

あまりにも失敗無く作業が進むので、拍子抜けだ。

それでも、完成した時は長い溜息が漏れた。


「ドライ出来たよ。」


完成品は10本、精度をドライが確認する。当然ボクも鑑定したけどね。

ボクの鑑定では、

<最高級品・命の水>効果・24時間有効・傷の再生・状態異常解除と出たけど、

これって、俗にいう万能薬とかエリクサーの類かな?


「いい出来じゃない!ノア。」


「ボクはてっきり、体力魔力回復薬だと思って作っていたんだけど…。」


「違うわよ、実のまま食べるとそうだけど、

液状にすると効果が変わるの。討伐の時、先に飲んでおくといいわよ。」


「傷の再生って、どの程度なの?」


「ん~死なない程度?」


「エリクサーと似ているのか、表に出したら凄い騒ぎになるな。」


「状態異常も完璧なのよ。暑(熱)寒(冷)そして毒に呪いまで、何でもOKよ。」


「へ~凄い。じゃ、たくさん作り置きしとくか。」


買い置きの真水を使い切ったので、泉の真水も試したら、

ちゃんと最高級品で完成した。ラッキー!キリよく100本作っておこう。


作り終わった時、疲れを感じた。お腹も空いたな。

白湯を作って、残りの海鮮弁当を取り出す。


「う~、緑茶が恋しいな。」


弁当を半分近く食べた所で、シャーが話しかけてきた。


「ノア、みんなが探しています。」


「ん、場所教えたの、それとも特定された?」


「いいえ。我は位置の特定が出来ますが、他のモノには無理です。」


「ふ~ん、そうなんだ。でっ、要件は何?」


「泥棒の件のようです。3人は門の詰め所で、話を聞いてるみたいですね。」


「それって、別にボクがいなくても大丈夫だよね?うん、きっと大丈夫。」


そのままボクは、ドライとゆっくりお弁当を食べた。


「この中にいたら、夜になっても気付かない可能性があるな。

食事が済んだら、あの辺りに明かり窓でも作るか、ドライ網戸作れる?」


「網戸って何?」


その後、ドライに網戸の作りと性能を詳しく説明した。

面白い事を思い付くものだと、一同不思議な顔をしていたよ。


作業を終わらせた頃、既に日が傾いていた。

泥だらけになったので、温泉に誰もいない事をシャーに確認させてから飛ぶ。


湯舟に浸かって、疲れと汚れを落としてから、クレッセントの部屋を確認した。

朝、門を通ってないので、歩いて帰るわけにいかないし、

みんなが探していたなら、きっと家にも行っているはずだからね。

部屋も探しているだろうけど、言い訳も考えてあるから大丈夫。


幸い部屋は空っぽだったので、ボクは何食わぬ顔でソファーに座った。

シャーに確認したら、みんな部屋に戻る途中だと教えてくれた。


「ノア何処行ったんだよ。」「見つからないね~。」「あー!ノア。」


「こんな処に居たのか。」「さっき見た時いなかったよ。」「だよな!」


「どうしたの?みんな。」


キョトンとした顔で答えると、何処にいたのかと問い詰められたので、

一人でゆっくりしようと思って、ディメーションの入口を閉じた状態で、

籠っていたんだと、返事を返した。

みんな怪訝な顔をしてボクを見ていたが、それ以上追及してこなかった。


ボクを探していた訳は、やはり泥棒の件で騎士団に呼ばれたから。

話を詳しく聞いて驚いたのは、泥棒の正体はジャンだった事だ。


騎士の話では、ボク達が被害届を出すなら、初犯で未成年で未遂なのを踏まえ

身柄を騎士団で預かり、牢屋暮らしのうえ

枷を付けた状態で、一年間下働きをさせる事になると、説明を受けたそうだ。


牢屋に入れられ枷まで付けられ、奴隷扱いはさすがに可哀想だと思い、

届けは出してこなかったよとラグが話す。

ボクも、その意見には賛成だよ。どのみち、ギルド追放は免れないと思うしね。


暗くなったし帰るか、二日後集合な!とラグが念を押して、解散した。


次の日、シャーに揺られながら南門を抜けた。印象付けるのに持って来いだよ。

面倒くさいけど、忽然と消えた感を出さないためだ。

昨日みたいに、何があるか分からないからね。


林に着いたら、周りを確認してジャンプ。一気に洞窟へ飛んだ。

今日はドライに頼まれた、3個の穴を作ろう。


ボクは作業をしながら、これまでの経緯に思いを馳せた。

ラグと会ってから、共に行動するようになったけど、そもそも一人で行動する

予定だった筈なんだよな。


だから、ミアを早い段階で遠ざけたのに、気付いたら傍に友人がいた。

みんなといるのが楽しくて、今更やめられないけれど…。


でも、来月13歳になる、後2年で成人だ。

それまでに色々準備をしたいから、一人の時間がもっと必要になるな。


あ~そういえば、みんなはCランクの件で、どんな答えを出したんだろう。


ボクが旅に出ると話したら、父さんと母さんは悲しむだろうか。


幌を蔓で編み込んだら重くなるかな?夏仕様で側面網戸にしたらどうだろう。


そんな取るに足らない事を考えながら、作業をしていたら、

昼を少し過ぎた頃に終わった。


中に入れる土は、腐葉土が欲しいとドライが言ったので、

今度ストラダム村跡へ飛んでみよう。


昨日は海鮮だったから、今日のお昼は肉にしてカップケーキを付けようかな。

食事が済んだら、温泉でのんびりするか。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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