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53 旅のおまけ

お昼前に、アジョンに到着したよ。本音は温泉に行くか、ベットで休みたい。

けど少しでも早く、ドライから聞いた話を伝えたいから、

激昂が何処にいるか調べるか。依頼を受けて、出かけていないといいな。


「シャー、アイム達のいる場所わかる?」


「少しお待ち下さい。・・・・・・・・・わかりました、溜まり場の2階です。」


ボク達は早る気持ちを抑えて、先ず荷車を溜まり場に停めた。


「あ…お土産いるかな?」


ボクの言葉に、みんな固まる。


「そういえば、考えてなかったな。」


「帰ってすぐ会いに行くと、期待する?」


「かもな~弁当は無理だぞ!俺は家族で食べる事になったら、5個必要だ。」


「ボクもだ…。海鮮串焼きでいいかな?

            みんな2本ずつなら、何とか出せるでしょ。」


お土産の準備をして、階段を駆け上がり203号室の戸を叩いた。

直ぐ返事があり、ドアが開く。


部屋には、オルム一人と3匹だった。

旅の無事を喜んでくれながら、少ししたらメンバーが集まるので、

中で待ってろよと、招き入れてくれた。面白い話もあると言ってたな、何だろう。


面白い話は、メンバーが集まってからだと言って、旅の話を聞きたがったが、

それこそ、集まってからの方が良いんだけどな…。

仕方ないので、当たり障りのない人攫いの話をして、時間を稼いだ。


話の途中でセルジュが加わり、続いてサザン、リーと全員集合したところで、

お土産を渡して、改めてお帰り~ただいまと挨拶を交わす。


そして、本題に入った。

おぞましい話だが、静かに耳を傾ける激昂のメンバー達。

話が終わり、おもむろにサザンが口を開く。


「俺達は今まで、妖精の事を人前で話題にしたことは無かったし、

                  これからも、絶対話す事は無いよ。」


そう、誓ってくれた。

そんな事、わかっていたけどね。念には念を入れたかったんだ。


「じゃ~この土産は、口止め料かな?」


リーが悪い顔で、突拍子も無い事を言い出す。

それを聞いたボク達が、苦い顔をしていると…。


「賄賂だな。」「うん、賄賂だね。」


サザンとオルムまで、ニヤニヤして悪乗りし出す。


「もう、やめなよ。ノア達を苛めちゃ駄目だよ。」


そんな3人を、セルジュが優しくいなしてくれる。兄さん感謝。


でも、リーの発言で重たい空気が吹き飛んだよ。まるでラグみたいだな。

その後は串焼きを頬張りながら、泥棒騒ぎの顛末を聞いた。


「付与魔法の解除はどうやったの?」


「ギルドにクレッセントのメンバーを問い合わせてたけど、

チムニーが頑固で、正式な通知が無いと名前を明かさないって、突っぱねてさ。」


「へ~流石ギルドマスター、かっこいいね。」


「2年前、盗賊討伐の時に来た、騎士団長憶えてる?」


「うん、確かスデラ隊長だったけ。」


「あの人が、通知を持って直々にやって来て、

 付与魔術士スミスの名前と家が判明したから、ミスドさんが呼ばれてね。」


「えぇ~。そんな騒ぎになってたの~。ぼく家に帰るのやめようかな。」


「ミスドさんが処理をして、泥棒は捕まったのさ。めでたしめでたし。」


「そう言えばノア、帰ったらギルドに顔出すようにって、メンバーも揃ってね。」


「え~そんな話の後で、言う?」


「今日は、もうそんな元気無いぞ。明日だ、あした。」


ラグの言葉に同意したボク達は、溜まり場にこもって大人しく夜を待つ事にした。

10月も終わりに近い、日が暮れるのも早くなったし、闇に紛れて家に帰ろう。


ボク達の部屋に戻ると気が緩んだのか、ヘロヘロだった事を思い出す。

生命樹の実をもぎ取り噛り付いた。ジューシーな酸味と甘味が、躰に染み渡る。

そのまま、ゴロンと横になった。

温泉にでも繰り出したいのに、残念だよ。ボーっとしていたら、眠ってしまった。


次に目が覚めた時は、すでに夕暮れ時だった。しまった、寝すぎたかな。

実を食べたおかげで、気分がすっきりして、体も軽くなっている。

ボク達はコッソリ裏から路地に出て、速攻で家に帰った。


夕食の時、土産の海鮮弁当は、家族から大好評でまたよろしくねと、頼まれた。

これでもう、何を買うか迷わなくて済むな。


人攫いを捕まえた話を、家族は既に知っていて驚いたよ。

ギルドの連絡網って凄いんだなと感心した。


話をしている途中で、不意にセルジュの誕生日を思い出す。

そういえば、出発の前日だったな、忙しくて忘れてたよどうしよう。


何かないかと暫く考えて、思いついたのはあのベンチ。ん~他に何か…。

あ~馬もいるな…。4頭いるから1頭は、ボクの分でいいかな?

あとでセルジュに、どっちがいいか聞いてみよう。


セルジュは馬が欲しいと言ったので、明日、溜まり場に来てもらう事にした。

もちろん、みんなから了承済みだ。



次の日、セルジュより先に家を出て、溜まり場に出向き、馬を出しておく。

庭の木に結わえとけばいいか。

心なしか最初に見た時より、毛並みツヤツヤだ…見栄えが数段良くなっている?

これも生命樹効果なのかな。


暫くすると、セルジュが馬の受け取りに来た。

毛並みのいい馬を一目見て、目を輝かせお礼を言っていたよ。

喜んでもらえて良かった。ホッと胸を撫で下ろす。


セルジュが帰った後、ディメーションの中を整理していたら、

見慣れない苗が、砂場の隅に植えてある。ドライに訊ねたらお楽しみだそうだ。

今度は水場の横に、1m四方の穴を3個作ってね!とお願いしてきた。

苗は1つなのに、3個?一体を何企んでいるのやら。本当に楽しみになって来たよ。


ラグ達もぽつぽつ集まったので、覚悟を決めてギルドに向かう事にした。


「何の話だろう。」「罠の事かな。」「人攫いの事じゃね?」「ん~わからん。」


ノロノロ歩いても、距離は伸びない。当たり前だが…。


ギルドに着いた。覚悟を決めてカウンターの前に立つ。

他の冒険者達が、ボク達を指差しながら、ボソボソ話をしている。

何だ、見世物じゃネェ~ぞ。ラグとトリルが小声で文句を言い、舌打ちをした。


アリスさんの耳にも届いたはずだが、平然とした涼やかな笑顔で案内する。

部屋に入ると、チムニーが腕組みをして椅子に座っていた。


「クレッセントか、やっと来たな。昨日見たという話も耳にしたがな。」


「俺の判断です。疲れていたので、帰って来て直ぐは無理だと判断しました。」


チムニーの気迫に負けず、ラグがキッパリ答える。


物怖じせず、ハッキリ返事を返したラグを、チムニーがじっと見え饐える。

それから、豪快に笑った。


「少しお灸をすえるつもりだったが、お前も肝が据わってきたな。」


「お灸って、俺達何かしたか?」


「何言ってる、帰ったら直ぐに来いって、言葉の意味がわからんのか?

疲れているなら、そう言えばいい。

それから、あの罠。仕掛けたなら解除方法くらい、誰かに知らせとくもんだ。」


「あ、はい。ごめんなさい。」


スミスが小さくなって謝った。


「今後、クレッセントが留守の場合、ミスドに連絡をする事になったからな。」


「えぇ~。」


今度は小さな、悲鳴を上げた。


話が終わったと思い立ち去ろうとしたが、まだ話の本題はこれからだと、

引き留められた。


思わせぶりだなと、軽い気持ちで話を聞いたが、驚きに変わる。

確かに嬉しかったが、驚きの方が大きかった。


Cランクと言えば、激昂と肩を並べる事になる。

チムニーがどうだと聞いたが、え、何が?としか答えられない。


「今すぐ返事は出来ないな。メンバーと話し合って決めるよ。」


「そうだな、それがいいな。相談したかったら、いつでも来てくれ。」


ボクの思考は停止したまま、溜まり場に戻っていた。

みんな頬杖ついたり膝を抱えたりして、思い思いのポーズで考え込んでいる。


「あーもう。それぞれ2~3日考えてから、意見を出し合おうぜ。」


「それがいいかもな、少し冷静になって考えよう。」


ラグとトリルの意見にボク達も同意して、

馬と幌馬車と箱馬車の処分をする為、トーマス商会を訪れる事にした。

ボクは別口で、蔓マット30㎝四方の切れ端もアイテムバックに入れる。


店先にいた、従業員のサムに声を掛け、査定を頼む。

店の奥にカレフがいたので、そこはラグ達に任せる。


中へ入り、カレフに蔓マットのサンプルを見せると、

大きい状態を見たいと言ったので、後で荷車を運んで来ると約束した。

そして、一緒に表に出て、持ち込んだ馬と馬車の査定に加わった。


「馬車2台の方は、随分扱いが荒かったようだね、あまりいい値段は付かないよ。 幌馬車が大銀貨100枚、箱の方は150がいいところかな?」


「こんなボロでも、買うとなれば、3倍か4倍になるけどな。」


「えっ、そうなの?」


「それなら、ボクが大銀貨300で買うよ。」


「いいのか、ノア。」


「うん、もしかしたら必要になる時があるかも知れないし、場所もあるしね。」


話を聞いていたサムが、馬も必要だろと聞いてきたが、

ボクにはシャー達がいるから、必要ないよと答えた。


馬の査定は状態と色艶毛並み、文句のつけようがないくらい完璧だったので、

一頭、金貨1枚の値段が付いて驚いたよ。3人は大喜びしていたな。

セルジュの誕生日祝いにしては、ゴージャス過ぎたか。ハハハ。

3人は手続きをする為残り、ボクはシャー達に馬車を引かせ、先に部屋へ戻る。


少し遅れて、手続きを終えた3人が戻って来たので、

用意していた大銀貨300枚を、3人に渡した。

だが、金貨を手にした3人は遠慮して、ボクから受け取る事を渋る。

だけど、それはそれこれはこれと言って、何とか受け取って貰ったよ。


ボクはカレフと約束があるから、店に戻るよと声を掛けて部屋を出た。


カレフは蔓マットを踏んだり、上に座りそして寝転んだりして状態を確かめる。

どうやって作ったのかと聞かれたが、企業秘密ですと答えた。


「店で全く同じものは作れないが、似せて作れない事も無いか。」


「大きさを色々変えて、足元だけのマットとかでも、いいと思うよ。」


「そんな物、何に使うんだ?」


「ゴミや砂を靴底から落とすために、入り口に置いてみたりとか?」


「お~部屋の汚れを防ぐのに活躍するな。店の入り口でもいいな。」


「お店で作れそうならいいけど、ボクが生産するのは無理だからね。」


「分かり切っていること言うなよ。これを作るのはノアだけか?」


「ラグ達も真似て作ったよ。」


「アイデアはノアなんだな。

それじゃ~利権はノアと契約して、別で3人とも契約しとかないといけないな。

社長と相談しとくよ、切れ端の方貰っていいか?」


いいよと、返事を返して店を出る。不労所得がまた増えるな。

どれだけ入っているか、一度確認しようと思いギルドに立ち寄った。


カウンターでアリスに用件を告げると、

財務担当の片眼鏡を掛けたヒェンが現れ、プレートを受け取り奥に行く。


暫く待つと、呆然とした表情のヒェンが戻って、ボクの顔をまじまじと見つめ、

一枚の紙とプレートを手渡した。

紙に記された金額を見て、ヒェンの表情に納得した。ボクもビックリだよ。


表に出て改めて確認したけど、間違いない。

金額は、約58,000,000シリ、金貨5枚と大銀貨800枚?いつの間にこんな…。


不労所得コエー。贅沢しなければ一生遊べて暮らせる金額だな。

これに蔓マットも加算するのか、眩暈がしそうだ。程々にしておこう…。

紙をその場で消し炭にしてから、部屋へ戻った。


部屋に戻ると、これから温泉に行こうと誘われ、繰り出す事になる。


「お湯にゆっくり浸かって、これからの計画を立てるのも悪くないよな。」


ラグの発案だった。


ウキウキしながら部屋を出たところで、トーマス商会の使いと出くわす。

そして、全員店に戻ってほしいと頼まれた。


ボクは見当がついたが、みんなは困惑した顔をしている。

なので、道すがら3人に、蔓マットをカレフに見せた事を話すと、納得していた。


店に着き、通された部屋で、父とカレフが中で待っていた。


「蔓マットをトーマス商会で、売り出す事にした。」


「ノアに聞いたんだが、みんなも作る事が出来るようだね。」


3人が頷くのを確認して、話を続ける。


「金銭が絡む話しなので、個人的な取引を他でされると問題になるんだ。」


「個人的に作って使用したり、プレゼントするくらいなら構わないよ。」


「そこで、うちの店と契約を交わして、契約金を支払いたいんだが、どうかね。」


代わる代わる説明する、父とカレフの話を聞き終わり、ラグが答えた。


「アイデアは、ノアだから俺は金を貰わなくても、別にいいぞ。」


「うん、そうだね。」「俺もそうだな。」


「君達ならそう言うと思ったよ。だが、これはビジネスなんでね、

      そこのところは、キッチリやっておかないといけないんだよ。」


「金額は、一人大銀貨250枚でいいかな?

          それで良ければ、契約書にサインをしてくれ。」


サインをして、店を出た。そして、今度こそ温泉へ直行した。


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