表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/129

51 ピクシーの里帰り4

「うっ、さぶぃ。」


山から下って来る冷気に当てられ、身震いをして目が覚める。

ヒリバ村は、アジョンより北の方角だからか、気温が低いのかな。


そう言えば前は、寝ている間に帰っていたドライが、狸寝入りをしてたっけ…。

そんな事を思い出し、顔がほころんだ。


起き上がり、周囲を探したが、ドライの姿は見当たらない。

まだ、帰って来ていないようだな。


すっかり目が覚めたので、外に出て山を見上げると、頂上が少し霞んでいた。

ドライに呼び掛けてみようかと、迷っていたところに、ラグも起き出して来た。

おはようと挨拶を交わし、二人並んで山を仰ぎ見る。


「ラグ、今日の予定は?」


「フィーア達の帰りを、待つ事のみだな。」


そのまま、無言で山を眺めていたら、スミスとトリルも表に出て来た。


「おはよう。二人とも早いね、アン達から何か連絡はあった?」


「ん~ん、何も無いよ。ドライに呼び掛けしようかと迷っていたんだ。」


「俺もそう思ったけど、よく考えたら、まだ半日しかたって無いしな。

あまり早く呼びかけても、私がいなくて、そんなに寂しいの?

        な~んて後でセンクに、からかわれると思ってやめたよ。」


「からかわれるかどうかは別として、言われてみればそうか、半日か。

                 じゃ~明日まで待った方が良いかな。」


「それでいいんじゃね。そうと決まれば、飯にしようぜ。」


そう言って、ラグが荷車の方へ戻るので、ボク達も後に続いた。




―side アジョン―



「ねぇ~こんな事、やめようよ。」


デギキスが額に大粒の汗をかき、青い顔でジャンの袖を引っ張るが、

体の大きいジャンに、敵う筈がない。


「五月蠅い!お前悔しくないのか?あいつらのせいで、

            ツオーネがギルド追放になったんだぞ。」


「それは、忍び込もうとしたからでしょ?

            そんな事しても何の解決にならないよ。」


「お前だって不思議だろ?

同じ年なのに、あいつ等だけ部屋まで借りて、大出世じゃないか。

他にそんな奴いるのか?絶対何か秘密があるはずだ!俺が暴いてやる。」


デギキスがいくら止めても、頭に血が上ったジャンは、頑として受け入れない。

普段の彼は、俺様的な物言いをするが、その反面、意外と仲間思いだ。

なので、いくらツオーネが悪くても、処分に納得がいかなかった。

その理不尽な怒りが、クレッセントに向かってしまったのだ。


こうなったら、何を言っても聞き入れてもらえないな。

デギキスは仕方なく諦めて、不安な表情でジャンを見送った。


ジャンが向かったのは、クレッセントの部屋の前だ。

ツオーネが裏から忍び込み、罠にはまったと聞いて、正面から入るつもりだ。


あいつ等が街から離れて、留守している今がチャンスだ。

ふん、生意気だな。何だこの絵、ちょっとウルフを使役しているからって。

憤りながら、ノブに手を掛けると、足元が揺らいだ。

ジャンが下を見ると、ずぶずぶと足首の辺りまで床に沈んでいた。


何だこりゃ?慌てて足を引き抜こうとするが、抜けない。

それどころか、どんどん体が沈んでゆく。

焦ってもがく頃には、腰まで嵌ってしまい、ジャンは堪らず大声で叫び出す。


「たっ助けてくれ~誰か~。」


騒ぎを聞きつけて、他の部屋から人が出て来た。

駆け付けた人達は、ジャンを見て状況が飲み込めず、唖然としてしまう。


「突っ立って見てないで、助けてくれよ~。」


ジャンの情けない言葉で我に返り、協力して腕を引っ張るが、沈んでゆく一方だ。

このまま、沈み込んでしまうのではないかと、みんな心配して見守っていたが、

肩まで沈んだところで止まり、ホッと安堵した。


止まったはいいが、引っ張っても抜けない。

強くやり過ぎると、痛いと泣き叫ぶので、どうすることも出来なくて困った。


そこへ、仕事帰りの激昂が戻って来た。建物に入ると、何だか廊下が騒がしい。

野次馬根性丸出しで、リーが見に行くと、ゲラゲラ笑いながら振り返った。

そして、メンバーに手招きをする。

呼ばれたのでそばに行き、床に埋まった人を見て、セルジュは納得した。


「ねぇ~君、部屋に忍び込もうとしたでしょ?」


ジャンはギョッとした顔をして、目を泳がせ黙り込む。

さっきまで心配していた周りの人達は、その言葉を聞き呆れた顔で非難しだした。


「何だ泥棒かよ、同情して損したな。」


「必死に助けようとした俺等が、バカみたいじゃん。」


泥棒と判明し、誰だこいつと興味本位で詮索する声や、不逞奴だと罵る声で、

周りがざわつきだす。


しかし、いくら泥棒でも、このまま放って置く訳にもいかないし、

廊下に埋まったままだと目障りだ。


そこへ、連絡があったが場所はどこだと、周囲に声をかける二人の騎士が現れた。

騎士は、床に埋まった泥棒を見て、困惑した顔になる。


「これは、誰の仕業かな?」


「あ~これは、泥棒除けの付与魔法だと思います。」


「ん?君は誰だね。どうして知っている。」


「この部屋の借主、クレッセントのメンバーに弟がいて、兄のセルジュです。」


「付与魔法と言ったが、どんな魔法を仕掛けたのかな?知っているか。」


「詳しい事は知りませんが、勝手にドアを開けようとすると、

                   罠が発動すると聞いています。」


絵の事をノアに聞いて知っていたが、野次馬が多いので種明かしを控えた。


「そうか、解除の方法を聞いているか、借主はどこだ、まだ帰らんのか?」


「今、旅に出ていて、いつ帰るかはっきり分かりませんし、

                     解除の方法も知らないです。」


セルジュが申し訳なさそうに答えると、騎士達は小声で話し合い、

一人の騎士が、走って応援を呼びに行った。


「後はこちらで処理するので、君達は部屋に戻るか、ここを立ち去りなさい。」


有無を言わさぬ騎士の言葉に、野次馬達は残念そうな顔をして立ち去る。

激昂もこれ以上面倒事に、巻き込まれないうちに、自室へ退散する事にした。



その頃ノア達は、ドライ達の帰りを、ボーっと待つのもつまらないので、

ヒリバ村の西門の外に出て、剣の練習に汗を流していた。


「はぁ~疲れた、休憩しよう。スミス、杖の扱いが様になって来たね。」


「ノアだって、さっきの突き鋭くてヒヤッとしたよ。」


「いいよな~お前等、武器が似ていて。」


「流石に杖で大剣は、受け止めきれないからね。」


「うん、折れちゃう。トリルの練習相手するなら、魔法解禁で!」


「魔力を纏って、体や武器を強化する方法があるってよ?」


「あ~そうだね、ボク少しなら出来るけど?」


「えっ、ノアできるの?何で使って無いの。」


「スミスが使って無いからだよ、片方だけ使ったら危ないんだ。

                   威力が大幅に増えるからね。」


「威力が増えるか、そりゃいいな!どうやるか教えろよ。」


「あ、でもトリルは、ラグから聞いた方がいいんじゃない?

           どうせなら、大剣に魔法を纏えた方がいいと思うよ。」


「そういえば大蛇の時、リーさんが大剣に火を纏ってたな。」


「トリル、魔法ステータス、何持ってんだ?」


「俺は、氷と水だ、火なら良かったんだけどな~。」


「いいじゃん!水。父ちゃんが言ってたぞ、水は、岩をも砕くって。」


ラグはそう言いながら、その場でウォーターアローを作った。

そして、石を拾って勢いよく刺し、実演しながら説明する。


「コツはどの魔法でも同じだ、魔力をとにかく、固く鋭く圧縮するんだ。」


「それに、狙いを凍らせてから、砕く事も出来るよ。メミズの時みたいに。」


「そうか、そうだよな!俺やってみる、魔法を剣に纏う練習を頑張るよ。」


「頼りにしているよ、トリル!なんたって、ボク達の前衛なんだから。」


その後の訓練は、魔力操作の応用を色々試した。

一朝一夕で成功するものじゃ無いから、みんなコツコツ頑張ってね。


お昼時になり、停車場に戻ると村長さんが待っていた。

今朝まで、ここに泊まっていた人達は、既に旅立った後だ。


「何かお困りな事でもありましたか?」


「いえ、何もないですけど。何故ですか?」


「余程天候が悪くない限り、この村に逗留する事が珍しいので、

何か不測の事態でも起こったのかと思いまして、お話を伺いに参りました。」


ようするに、一向に次の目的地へ、出発する気配が無いボク達の事を、

怪しんでいるのかな。


「あ~その事ですか…。それは、あれです。

        そうそう、人と待ち合わせしているんです。ここで!」


「あ~そう言う事でしたか。わかりました。

           何か困ったことがあったら、声を掛けて下さいね。」


村長が立ち去った後、ボク達の緊張がとけた。

だが、今ボクが確信している気持ちを、みんなと共有しなくては。


「ラグの言い訳、嘘だと見抜かれていると思う人。」


「はい。」「俺も。」「当然ボクも。」


3人がニンマリ笑い、ラグを見る。


「それらしく聞こえたから良いんだよ。

     そんな事言うなら、お前達が何か言えばよかったじゃん。」


「あながち嘘じゃ無いしね。人じゃなくて妖精を待ってますって、

       本当の事話したら、可哀想な人と勘違いされちゃうもんね。」

              

拗ねてそっぽを向くラグに、

実際、頼れる男だよ、尊敬するよと、3人で宥めて謝った。

いつもの事だが、ボクはあの時、頭が真っ白で何も思い浮かばなかったし。



その日の夜になっても、ドライ達は戻らなかった。

あまり時間が掛かり過ぎると、村民の目が厳しくなりそうで困るな。

無事に帰って来てねドライ、心の中で願いながら眠りについた。


最後までお読みいただきありがとうございます。

☆☆☆☆☆の評価と ご意見やご感想を寄せていただけたら嬉しいです。


続きが気になるな!と思ったらブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ