48 ピクシーの里帰り
あの討伐以来、クレッセントの知名度が上がった。
なので、近くの村や町への護衛を頼まれる事も多くなった。
Dランクだから さすがに砂漠や山越えの依頼は無いけどね。
3日前 ストラダム村出身の街の人から、お墓参りがしたいので送ってほしいと警護の依頼が来た。
片道10時間程だ、早朝に出れば休憩を挟んでも明るいうちに着く。
無理をすれば日帰りできるが、旅慣れていない街の人達と一緒なので泊まる事になるだろうな。
ラグ達は、手綱と鞍の準備が整ったのでロッキー ロキシー ロックに乗って行く。
残りは、岩場で留守番をすると言っていた。
ボクは、シャーに跨り 荷車をアッシュに任せる。
ウルフが付かず離れず周囲を走っているだけで、他の魔物が寄り付かない。
なので、シルバー レッド ブルーも連れて行く事にした。
出発の朝 2台の幌馬車がギルドの前に停まっていた。
護衛する人の姿の中にレイチェを見かけたが、ボクはまだ親しく話したことが無いので、こちらから話しかける事はしなかった。
早朝に街を出て途中で昼休憩を挟み日が少し傾いた頃、予定通り村の跡地に着いた。
レイチェ達は、荷解きもそこそこに湖へ向かう。
そして 暫くそこで佇み祈っていた。
時が傷を癒したんだろうな、そこに悲痛な空気は無く穏やかな時間が流れている。
野営の準備をする為ぽつりぽつり人が立ち去る中、レイチェだけ最後まで佇んでいた。
報告する事が、沢山あるのだろう。
ボク達が傍にいては、目障りかなっと思ったので レッドとブルーに影からレイチェの護衛をするように指示して戻った。
ボク達の野営の準備は、簡単だ。
テントを張らずに、荷車の中にハンモックを二つ設置するだけで済ます。
食事も依頼主が準備をしてくれる契約なので、手持無沙汰過ぎて困った。
あの時 建物があった場所は、草原になっていた。
草原に危険が無いかを確認するため、ウルフ達を縦横無尽に走らせる。
あいつ等 偵察任務と言うより楽しんでいるな。
ロック達に至っては、食事も兼ねているようで小動物を見つけては、腹を満たしている様子だ。
背後で足音がして振り返ると、食事の準備が出来たとレイチェが呼びに来ていた。
目元が少し赤いが、穏やかに微笑んでいる。
依頼主にお礼を言って、食事をしながら明日の予定を確認した。
お墓の周りの掃除をして、お昼前に出発すると返答があった。
次の日 早朝から掃除を始めたのでボク達も手伝う。
レイチェが傍に来て何処かに花が咲いている場所が無いか尋ねてきたが、ドライ達がいるので心配ないよと答えた。
掃除が終わり仕上げをドライ達に頼む、美しく囀りながら空を舞う小鳥達。
すると、お墓の周りに色とりどりの花が咲き誇った。
レイチェと街の人達は、夢見るような表情で暫く墓所に見入っていたが満足気な顔で振り返り、口々にお礼を伝えてきた。
少ししてから家路に着く、途中お昼休憩を挟んで暗くなる前に街に帰った。
無事に依頼を終わらせ、ホッとしてギルドに達成の報告を済ませる。
その時アリスに明後日から暫く留守にするので、指名依頼を受け無い事を伝え そのまま温泉まで足を延ばした。
「明日は、一日お休みだね。みんなは何するの?」
「俺は、旅の日程を決めて大方の予定をギルドへ報告しないとな。ストラダム村跡とコトネル村に寄らずに進めば、ムバクーヘンまで4日かな?そこからヒリバまで一日 どうする?ムバクーヘンで宿に泊まるか?」
ラグは、リーダーだからギルドへの報告とか大変だな。
「ん~帰りに寄れば?っていうか、帰りに寄ってください。ディメーションのプールが完成したから、ボク砂の調達がしたい」
「じゃ~帰りに寄る事にして、ヒリバまで直行でいいな!」
長い事街を離れるので、ウルフ達13匹も移動する事になる。
留守の間の岩場は、ミアとオルムのウルフ5匹に任せる事になっていた。
「明日は、ノアが持っているサイズの幌付き荷車を買いに行かなくちゃ」
「そうだな、あれがあればテントがいらないしウルフと一緒に休めるしな」
リヤカーを少し大きくしたサイズなので、4台あっても溜まり場の庭に停め置きできる場所があるから、各々買い足しても問題ない。
アバウトだが、旅の予定も決まったので風呂を出て家に帰った。
翌日、食料や薬を大量に買い込むために外に出る。
王都で買ったアマパンが、最近アジョンでも売られるようになった。
甘いものも必要だよね、おやつに買って行こう。
買い物が終わり街をぶらぶらしていると 見覚えのある後姿が、女の子と手を繋いで歩いている。
トリル デートか?声を掛けようか迷っていたら見失ってしまった 残念。
前に話していた気になる女の子と上手くいったのかな?
そんな素振りなんて見せなかったのに、隠していたのか 言いづらかったのか、どっちにしろ後で溜まり場に集合だから、その時に冷やかしてやろうっと。
トーマス商会に顔を出すと、カレフがボクを見つけて手招きをした。
何の用だろうと思い近くに行くと、ハンモックと椅子の売れ行きが好調だと耳打ちされた。
手綱の注文も少しずつ増えているらしい。
他にも何かアイデアがあったら、持ってくるようにと厳命されたよ。
((ノア みなさんも買い物が終わり、溜まり場に向かうようです))
他のウルフから連絡があったのだろう シャーに返事を伝えてもらう。
((わかった。ボクも向かうって言っておいて))
溜まり場に着くと、スミスが先に来ていた。
ボクが成人のお祝いの前倒しで、アイテムバックを貰った事を聞かされ みんなの親も考慮しプレゼントしたようだ。
トーマス商会からの報酬を家に入れた事も要因になったらしい 良かったね。
特にラグは、罠を大量に持ち運べれると喜んでいた。
火薬や仕掛けは要らないが、魔力を込める空の玉が必要だからね。
暫くするとラグとトリルが揃ってやって来た。
ボクは思わず顔がにやけてしまう。
「何だよノア気味悪いな。何かいい事でもあったのか?」
「ん~ラグ、ボク見ちゃったんだよね」
「何を?」
3人が不思議そうに聞いてくる。
「トリル デートしていた?手を繋いでいた子は、誰?」
「ええっ 見たのか」「デートーだーー?」「本当に?」
「うん。仲良く手を繋いで歩いていたよ」
ラグとスミスも興味津々でトリルを見ている。
「前に 気になる女の子をクレッセントに入れたいって言ってたよね。あの子なの?」
顔を赤らめたトリルが観念して頷いた。
「振られる覚悟で 女の子は入れられないって返事したけど、なんかガッカリしているのを慰めているうちに、良い感じで仲良くなれた」
ぶっきらぼうに答えるトリル あんまり冷やかしたら可哀想かな?
4人の中で一番背が高いし、顔もまぁ~イケているし 優しいし、彼女が出来てもおかしくないよね。
トリルに出来て何で俺に出来ないんだよと、ラグがブツブツ言っている。
スミスは頬を紅潮させ、凄い凄いと言いながら羨望の眼で見詰めていた。
ボクは今のところ、興味は無いかな。
トリルは、二人の様子を見て言い訳がましく話しだした。
「2~3日前に、暫く街を離れるとティナに話したら 仕事じゃないなら私も連れてけって言われて、本当に困ったよ。だからプレゼントを買って勘弁してもらったんだよ」
うん、やっぱり面倒くさいと心の中で思ったが口に出さないでおこう。
ラグとスミスには、惚気ているようにしか聞こえないらしい。
ニヤニヤしながら「あぁ~ご馳走様!」 と言っていた。
「ふ~ん ティナって言うんだ。今度紹介してね!」
「おう そのうちな。それよりラグ 明日何時に出るんだ?」
「前に王都へ行った時、ストラダム村出たあと橋の所で昼休憩したろ?一日目は、あそこで野営をしたいと思っているんだ。だから朝日が昇る前に出発した方が良いと思う」
「じゃ~晩御飯は、家で食べて溜まり場に戻って寝た方がいいかな?」
「そうだね、長い事留守にするし 晩御飯は、家族と食べた方がいいね」
意見が纏まったので、解散して家に帰った。
少し前 家族に旅の目的は、ドライ達の里帰りだと伝えてある。
話した時、みんな不思議そうな顔をしたけどね、実際 半分嘘だし。
森の奥まで踏み込まない事を父さんと約束して許して貰えた。
出発が早いので、晩御飯を食べたら溜まり場で寝ると伝えると、母さんが少し寂しそうだった。
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