45 …前の静けさ 2
そろそろ寝るかな、その前に。
「シャー、魔力供給した後なんだけど、
レッドとブルーを連れて、岩場に行って欲しい。
本当は、雨が降っているし、どうしようか迷ったんだ。
それと、シルバーとアッシュは、アジトで留守番をしてくれないかな?」
「やはり、心配ですかノア」
「昨日の今日だからね。
二日続くとは思えないけど、用心した方がいいでしょ?」
((アジトの方は、何故?))
「万が一泥棒に入る奴がいるかも?一応、ワン達を置いてきたけどさ。」
((ワン達では戦闘に適していませんからね。了解です。引き受けますよ。))
((アラ、泥棒の心配なら大丈夫よ。))
「ドライ、どうして?」
((私達が今日、何もしていなかったと思うの?フフフ))
意味深な笑いをするドライに、何をしたのか聞いたが、
泥棒が釣れた時の、お楽しみだと言って、結局教えてくれなかった。
アジトの心配は無いと、ドライが言い切ったので、
シャー達に、岩場に行ってもらう事にする。
「雨が降っているのにごめんね。引き受けてくれてありがとう。
じゃ僕、寝るよ。しっかり魔力を吸収してね。お休み。」
そういえば…。
残りの砂場の作業を、急ピッチで進めて、3mまで掘り下げた後だったな。
魔力は足りるかな?少し心配だ。そこまで考えた所で、意識が途切れた。
―side ドアロス―
宵闇が忍び寄る頃、雨が降って来た。月明かりは期待できないか。
今が9月で良かったよ、少し湿気てムッとするが、寒さで凍えるよりましだ。
用心の為、ライトで岩場の外を照らした。
魔物は闇でも関係ないが、生憎、人間はそうもいかない。
暗闇から襲われちゃ堪ったもんじゃ無いからな。
勿論、襲撃に備え、罠も幾つか設置してある。
俺達Aランク6人に、激昂が4人とウルフが5匹。
あそこにいるウルフも加勢するだろうから、全部で8匹か。
シャー達がいれば、もっと良かったんだがな。
「ドアロス、見張りの順番どうする?」
「あぁ、そうだったな。激昂4人を最初に立てて、
俺達は夜中に交代する方がいいだろ。サザンに伝えてくれハーネル。」
「おう、分かった。」
岩肌に当たる雨音が激しくなってきた。今夜は、荒れるな。
入口の見張りを激昂に任せ、奥にいたハーネルの横に座る。
「なぁ~息子たちの事、気掛かりじゃないか?」
ハーネルが真面目な顔で、語り掛けてきた。
「どうしたと、言いたいところだが、お前もか。」
「あぁ~。余りにも実力の差があるからな。ノアと。」
「俺も、2年前の盗賊討伐の時、思い知ったよ。」
「あのウルフ達を、難なく使役できたのも、ノアの実力だろ。」
「多分な。ラグロスも手伝ったと言ってたが、どうだか。」
「ノアに触発されて、今はいい結果を得ているが、
この先、力不足で大変な事に巻き込まれないかと、思うとな。」
「今は、Eランクだし、
依頼も心配するような事も無いが、経験不足のまま、
どんどんランクだけ上がってしまったらと思うと、気が気じゃないな。」
「俺達の心配が、取り越し苦労ならいいが。」
「そうだな。」
締まらない話を続けても仕方ないので、二人はゴロンと横になり、
見張りの交代まで、寝る事にする。
暫くすると、ハーネルとドアロスの寝息が聞こえてきた。
この時はまだ、二人は知らない。
既に子供達がDランクになっている事を、明日知る事となる。
「ドアロスさん、起きて下さい。」「ハーネルさんも起きて。」
交代の時間になり、激昂が起こしに来た。
隣で、ハーネルが軽く伸びをし、モソモソ起きる。
激昂に労いの言葉を掛けて、岩場の入口に行くと、
いつの間に来たのか、シャドーウルフが5匹、そこに伏せていた。
ノアが寄こしてくれたのか、全く気が利く坊主だ。
雨音がシトシトと響き、
あぁ~眠る時より、穏やかな降りなんだなと感じる。
その時シャーが、
耳をピクッと動かし、ライトの当たる向う側の、暗闇を見据えた。
「何だ?何かいるのか。」
ハーネルの問いかけに、答える間もなく5匹は、影に沈んだ。
次の瞬間、闇夜にギャーギャーと喚く声が響いた。
遠くの方まで、ライトを照らし見てみると、2匹のアームモンチを咥え
シャー達4匹が戻ってくるところだ。
「一匹足りないぞ、どうした、やられたのか?」
焦って、ドアロスが聞いたが、シャーは落ち着いて答える。
「ご心配に及びません、我等は大丈夫です。
1匹のアームモンチをわざと逃がし、アッシュが後を付けているのです。」
そう言って、2匹のアームモンチを、ロックウルフの方に放った。
新鮮な餌を前にしたロックウルフは、喜んで食い付く。
昨日の今日で、仕掛ける気は無かったが、
敵情が気になって視察に寄こしたんだろう。本当に知恵の働く奴だ。
偵察がやられて、このまま大人しくしているだろうかと、不安がよぎる。
緊迫した空気が少しダレてきた頃、アッシュが帰って来た。
アッシュから報告を受けたシャーが、周りに伝える。
「ご安心ください。今夜、敵は、攻める気が無いようです。
それと、敵の巣がわかりました。
どうやら、今まで住んでいた巣が崩壊したため、ここを狙ったようです。
明日、アッシュが案内します。
朝まで、我等が警戒しているので、明日に備え、皆さんは休んでください」
騒ぎを聞きつけ、起きてきた冒険者達も、シャーの言葉を聞いて安心した。
本当に気が利く坊主に、出来のいい従魔だな。心からノアに感謝していた。
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