4 駆け抜ける日々
季節は、秋になり…
天気が良い午前中は、噴水広場で過ごす事が日課になっていた。
ボクは、駆け回るとまではいかないが、危なげに小走り出来るくらいになっている。
セルジュは、面倒見が良くボクの相手をしてくれた。
ミアは、伝い歩きが出来る様になっていたがボク達の後を追えない。
少し不機嫌な様子で噴水の端っこに摑まり、デクシラの横で立ったり座ったりを繰り返している。
うん、この距離感いい感じだよね!
頑張って鍛えた甲斐があったよ。
ボクは、ご満悦だ。
広場にいると屋台から香ばしい匂いや甘い香りが漂ってくるが、当然乳幼児の食事なんて売って無いし、目前の家に帰宅すればいいので買う必要も無い。
色々残念だ…
天気のいい日は、遊びながら体を鍛える事を意識してセルジュの後を付いて回る。
張り切り過ぎて夜の訓練が出来ないと困るので、程々にしているけれどね!
雨の日は、絵本を読んでとデクシラにせがむ。
ほぼジェスチャーでお願いするのだが、なんとか通じる。
文字を追いながら読み聞かせをして貰う。
この時ばかりは、ミアも一緒だ。
幾度も聞いて簡単な文章を丸暗記し、自分でも声を出して読んでみる。
傍からは、奇声を発して絵を夢中で見ているだけに見えるだろうなぁ。
ボクは、着々とこの世界の情報を吸収していた。
ある日、晩御飯の後「あう~」「ばうぃん~む」なんて奇声を発し居間で絵本を広げていたら、父様が訝し気に僕を見ていた。
「なぁ~ソフィア…ノアは、理解して絵本を読んでいる様に見えるんだが、気のせいかな?」
「流石にそれは、親バカって思われるわ。来月4歳になるセルジュだって、やっと簡単な読み書きが出来る様になったばかりじゃない」
「あぁ~そうだったね。思い過ごしかなハハハ」
うんうん、気のせいだよ!そう言う事にしておいてね。
来月10月10日にセルジュは、4歳になり2か月後の12月18日にボクとミアは、1歳の誕生日を迎える。
先は、長いが鍛錬を怠らないようにするぜ!
この世界は、5歳になると教会でスキルを授かる。
儀式は、重要で将来の道標とされている。
個人情報なので公けにする事を憚るが、自ら明かす人もいるので絶対秘密と言う訳でも無い。
ボクは、どんなスキルを授かるのかな?不安でもあるし待ち遠しさもある。
出来るだけ分かり難いものが良いな!
取り敢えず、賢者とか勇者なんて面倒なのは願い下げだ。
まだ4年先の話なので、取り越し苦労は止めておこう。
ボクなりに忙しい日々を過ごす。
文字を覚え本を読み漁り、そして筋トレや魔力操作。
その上、簡単で危険の少ない部屋でも使える魔法の訓練も怠らない。
あと、父様のアイテムボックスから盗み見た魔法陣の構築もこっそり試してみたりと、色々多忙だ。
ミアは、遊び相手にならないボクよりも優しいセルジュにベッタリ引っ付いて、当初の計画通りに事が進み過ぎて怖いくらいだ。
でも、セルジュに少し申し訳ない気がするから、いつかセルジュからお願い事をされたら出来るだけ優先して善処しようと心に留めているよ。
まぁ~無理難題は、却下なのだが…
そして、幸せで退屈な日々を繰り返す。
季節は、廻り4年の月日が瞬く間に通り過ぎた。
3年前セルジュは、教会で計算のスキルを授かった。
トーマス・モリャティ商会の若きリーダーの座は、約束されたようだ。
良かったね兄さん。
本当に良かった!跡取り息子確定でボクも思わずホッとしたよ。
ボクとミアは、5歳の冬を迎えていた。
明日は、いよいよスキルを授かる日だ。
その夜は、興奮してなかなか寝付けなかった。
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