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31 十一日目 憧れのピクシー

眠る時、卵が潰れちゃうかもと思いなかなか寝付けなかった。

でも、馬車に揺られていたらいつの間にか眠っていたけど。

それでも、気が張って休まらなかったのか何だか気怠い。


巾着をそっと覗くと、キチンと抱きかかえて寝れてたようで卵は、無事だ。

隣で寝ていたラグもモソモソ動き出したので、突いてみる。


「おはようラグ」

「おはよう」

「ボクの卵無事だったけど、ラグはどう?」

「お!そうだった」


ラグの卵も割れていない、顔を見合わせてニコッと笑う。

トリルとスミスも起きて確認、二人とも割れていなくて良かった。


「ノア、従魔の魔法の構築を教えて欲しいんだ」

「スミスは、ステータス持って無かったよね?」

「うん、だから努力でなんとかする!」

「根性だな!」

「おっ俺も」

「うん、いいよ。ちょっと待ってね」


アイテムボックスから…鞄だからアイテムバックかな?ん~まっいいか。

とにかく、鞄からなるべく平たいB5くらいの木片と木炭を出して、魔法式を書いて渡した。

この世界の紙は貴重品だ。メモなんかに使えない。


「コツとかある?」

「何を考えているとか」

「そうだな~ボクは、仲間になってね、一緒に遊ぼうって気持ちで、魔法を構築してるかな」

「すっごくノアらしいね!」

「だな!」

「うん」


「上手く孵化すれば、皆の従魔習得の助けになるかも知れない。欲しがってたもんね」

「おぅ、そうだな」

「俺、頑張るぞ!」

「ぼくも頑張ろうっと」


「お腹空いたし、馬の世話もあるから取り敢えず外に出よう!」


予定道理、ロカナの街の東側に到着していた。

馬の歯噛みは外され夜中に着いた旅人用の柵木に結わえられている。

馬の世話を済まし先ずは、傭兵組のテントを覗いたが起きる気配が無い。

この様子だと父達もまだ寝てるな。


母が朝食の準備をしていたので、挨拶をして皆で座り込む。


「皆、卵はどう?潰さなかった」

「大丈夫です」

「そう、良かったわね。支度が出来るまでもう少し待っててね」

「はーい」


食事の用意が出来て、母とミアも一緒に食べる。

話題は、ロカナの街じゃ無い。

王都までここから一日なので、わざわざ寄る必要も無いから、このまま王都を目指すと言っていた。


ミアの興味は、卵に移ったらしく見せて欲しいとせがまれる。

少しだけだよ!見るだけだよ!と念押して巾着からそっと出したら、焦った…卵にヒビが入ってる。

今朝まで何ともなかったのに!


「あれ、どうして…」

「ノアの割れそうだよ…」


ビックリし過ぎて言葉も出ない。

ミアには、悪いがそのまま慎重に巾着にしまった。


「起きた時は、ヒビなんて無かったのに」納得いかない。


急に食欲が無くなり、母にご馳走様と言って一人で馬車に戻った。


もう一度卵を出して、じっくり見詰める。

まさか…孵化?いくら魔物でも早くない?直接両手で包み込みほぅーっと息を掛けてみた。

何と無くだけど。


ピピ…ピキピキ…メキ… なんか手の中から嫌な音が…それに、もそもそ動いている気がする。

そっと、掌を広げ見てみたら「 !!! 」ナニコレ妖精!


生まれたての妖精ピクシーは、フワッと飛び上がり、ボクを見てギギギと乾いた声をあげた。

小さい頃からお友達になりたいと憧れていたけど、まさかこんな嬉しい偶然!あ…そうだ、契約契約。

無事契約を済ませて、手を伸ばし呼んでみた。


「おいで」


クククルルル~乾いた声で歌うように鳴きながら掌に戻った。

そうだ…名前、サンドの時に使わなかった、ドライでいいかな。


「君の名前はドライ、よろしくね」


フワッと飛び上がり、一瞬淡い光に包まれ((マスター宜しくね))頭に響いた。

当然魔力もごっそり持っていかれた。


「おーい、ノア卵大丈夫か?」


食事を終えた3人が戻って来てフリーズ。


「ボクの卵、孵化したみたい」

「 !!! 」

「なんだってー」

「いいなーノア」

「どうやったんだよ?」

「んーわかんない」


何が切っ掛けだったのかと思いながら、ドライを見ると((暖めなくてもいいのよ!魔力を送ってみて))へ~そうなんだ。


「聞いてみんな、ドライが魔力を送ってって言ってるよ」


((魔力操作の練習の時、握っていたでしょ?あれに触発されたの))


あ~なるほど…


「魔力操作の練習の時に、触発されたって言ってる」

「よし!今からやるぞ」

「ぼくも!」

「俺もだ!」

「てかノア、もう名前付けてるんだな、その鳥に」

「?」


「ちょっと待って、皆には鳥に見えるの?」

「鳥だけど?」

「小鳥にしか見えないよ」

「違うのか?」


自分の目で確認した方が早いな。


「取り敢えず、魔力送って孵化させてみて」

「わかった」

「頑張る」

「おう」


ドライは、淡い桜色の髪で毛先の色が薄紫、肌の色はぬけるように白く尖った耳を持っている。

鳥のように歌い鳴くが言葉を話さない、頭に直接語り掛けてくる。


((本当の姿は、マスターにしか見えないよ。皆には、鳥に見えるの))

((へ~どんな鳥なんだろ、見てみたいな))

((じゃ~見せちゃおうかな!))


ヒュルヒュル~と歌いながらクルリと一回転すると、可愛らしい桜色の小鳥になった。

髪と同じで羽根の先が薄紫だ。


((ありがとう、どっちも凄く可愛いよ))


そう言うと、嬉しそうに掌に戻って来た。



「坊主ども、どうした?えらく静かだな!」


あまりにも静かなので、ドアロスが心配して様子を見に来た。


「うぉ、何だその鳥。変わった鳥だな」

「はい、昨日の卵が孵化したんです」

「ほぉ~そうか、それは良かったな、しかし早いな…で?ラグロス達は、何やってんだ」


卵を両手で大事そうに持ち、目を閉じて真剣な顔をしている息子達を怪訝な表情で見た。


「昨日ボク達、魔力操作の訓練をしていたけど、それのおかげで孵化が早まったようなので、真剣に取り組んでいる最中です」

「おう、そうか。まぁ~頑張れ。あ…邪魔して悪いがそろそろ出発だ」

「あ…はい。馬の準備ですね、今行きます」

「頼んだぞ!」

「皆、ボク一人じゃ無理だよ!先に馬の世話してからにして」

皆は「う~」とか「あー」とか「へーい」と言いつつ立ち上がった。


馬車は、ロカナの街の塀と林の間に通る街道をゴトゴト走っている。

中では、魔力操作に真剣に取り組む3人…ボク暇だな…

暫く景色を見ていたが、飽きた。

他にやる事が無いので、ボクも魔力操作の訓練をすることにした。



お日様が高くなり、そろそろお昼かなと思った頃。

まず、スミスに変化が起きた。


生まれたのは、オレンジで毛先が薄緑の小鳥だった。

本当の正体を見たスミスは、はじけそうな笑顔になり。


「ノアこれ!」

「うん、ビックリでしょ!」

「そうだったんだー」

「名前は、どうするの?」

「この間言ってた、呪文からつけてもいい?」

「呪文って…あ!サンドスライムの時の?」

「うん」

「いいよ」

「ありがとう、アンって響き可愛いなって思ってたの、この子にピッタリ」

「気を付けてね、名前付ける時、魔力をごっそり持っていかれるから」

「じゃ~名前は、夜にしよう」


少し残念そうだが、魔力の量があきらかに足りない。

きっと3人共、名前を付けた瞬間に落ちる。

断言するよ。


お昼休憩前に二人の卵も無事孵化して、呪文?から名前を選んだ。

ラグがフィーアで、燃えるような赤に羽先が金色の小鳥。

トリルは、センク萌黄色で羽先が青色だった。

もう一つ付け加えるとピクシー達の瞳の色は、羽先の色と同じだ。


皆は、鳥と言われて驚いたボクの反応も当然納得した。

百聞一見に…

早速3人は、魔法の構築に挑戦する。


((マスター))

((何?))

((3人は、従魔のステータス無かったのよね?))

((うん、そうだよ))

((確認するように言ってみて))

(( ? ))

((仮にも妖精を孵化させたのよ!変化が無い訳ないわ!))

((朗報だな))


「ごめん、集中しているところ悪いんだけど、ステータス確認して」


不思議な顔をしながらも、言われた通りボードを出して見入る。


「あ!従魔Lv1」

「俺もだ!」

「何でノア分かったの?」


「ドライ曰く、仮にも妖精を孵化させたのよ!って言ったんだよ」

「 おぉ~~ 」

「よし!Lv1だけど、無いより絶対有利だ」

「うん!頑張ろう」

「おう!やるぞ」


そして、皆お昼ご飯までに間に合った。

名付けは、やっぱり夜にするって。


肩に小鳥を乗せボク達は、うきうきしている。

馬の世話をしてご飯を食べに行くと、ミアの表情が…解ってたけどね。


何食わぬ顔でボク達が座ってご飯を食べ始めると、傭兵組がこぞって質問を投げかけた。


「ノアあの卵、鳥だったの?」

「それって、魔物なの?」

「そりゃそうだろ、あの色だぞ!」

「まぁ~そうか~」

「可愛いね」


「兄さん達いっぺんに聞かれても…それに、何で答えをリーが言うの?」

「ギルドに登録する前に、増やしちゃって、バカみたい」ミアは悔しそう。

「ミアの言う事も当然だね」父さんは、呆れている。


「あ!親父、俺もテイマーギルドの登録するから、宜しく」

「ぼくも!」

「俺も!」

「え!どういうことだ」


それから、魔物の卵を孵化させたら従魔を習得した事、ついでに従魔術を試したら成功したことを話した。

父達は、絶句した。

父達と言うか、傭兵組も母やミアも皆揃って絶句していたな。

そりゃ驚くよね、ボクもこのミラクルが末だ信じられないんだから。


王都には、閉門までに間に合うかギリギリだと父達が話していた。

でも…今夜か明朝には、王都グレイスにやっと到着だと心が弾んだ。



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