30 十日目 仄暗い森の奥より 2
シャー達の唸り声で目が覚めた。
何事?戸を開けて外を覗くとまだ薄暗い。
目を凝らし馬の方角を見ると、ドアロス ハーネル 傭兵組が、馬を庇うように蛇の魔物と対峙していた。
アナコンダに似た大蛇で体長が6mは、ありそうだ。
チロチロと細長い舌を見せ、頭を揺らし鎌首を擡げ威嚇している。
大蛇は、オルムに喰らい付こうと襲い掛かる。
槍を突き上げ、オルムも対抗した。
その横からスターリーが火魔法を纏った大剣で首を狙い薙ぎ払う。
しかし蛇の皮は、固く少し焦げただけだった。
セルジュは、大蛇がスターリーに気を取られている隙を突き斜め後ろから目を穿つ。
大蛇は、唸った。手負いになり更に暴れまわった。
サザンが土魔法で、大蛇の体を拘束するも鞭のように体を撓らせ一層激しく暴れ出す。
ドアロスとハーネルは、どこ?キョロキョロ見回すと、大蛇の死角で大きな罠を張り巡らしていた。
大蛇が急に方向転換をし、罠に気付き怒りを漲らせ襲い掛かる。
罠の準備がまだだ!そう思ったボクは、思わず飛び出す。
そして、ライトニングを無詠唱で手加減無しで撃ち込んでいた。
雷鳴が轟き稲光が走る、天空から闇を引き裂く落雷が大蛇に突き刺さった。
バリバリバリと空気を震わせるノイズ。
最後の咆哮を上げドスンと大蛇が薙倒れる。
やった!会心の一撃だ!心の中でガッツポーズ。
だが…皆が呆然とした顔で大蛇を見ていた(ボクまたやり過ぎた?)
両親が青い顔をしてボクに駆け寄ってくる。
「ノア怪我はない?」
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫、何ともないよ」
「何で馬車から出たんだ?危ないだろ」
「父さん、ごめんなさい…」
「驚いたわよ、ノアが馬車から飛び出した時丁度雷が落ちたから、でも良かったわ。怪我も無いみたいで」
「兄さん達は、無事なの?」
「これから様子を見て来るよ」
「馬車の中で大人しくしててね」
母さん雷が落ちたと言っていたな…バレてない?馬車に戻ると、ラグ達も大興奮だった。
「大蛇も凄かったが、雷の迫力!」
「うん、バリバリバリって音も!」
「あんな事もあるんだね~大蛇に直撃だなんて…」
ラグ達も自然現象だと勘違いしてる…
「あっノア近くで見たんでしょ、どうだった?」
「体がビリビリ痺れた気がした」
三人の興奮止まないなかボクは、真実を話すかどうか迷っていた。
って言うか、今更言い出せない雰囲気だよな…ハァ~
朝までまだ時間がある。
取り敢えず眠ろう。
ボクは、迷わず現実逃避する事を選んだ。
二度寝したせいか次に目が覚めた時は、かなり寝過ごしていたようだ。
朝食も食べずに寝ていたみたいで、ボクの分だけお弁当が置かれていた。
「お!おはよう」
「お前のお袋心配していたぞ」
「大丈夫?ノア」
「雷が当たってたんじゃないかって」
「お昼まで様子を見る事になったよ」
「みんなありがとう。大丈夫だよ」
「これ、ノアの朝飯」
皆も心配していたのか、だたの二度寝なんだけど…言えない。
この様子だとあの雷は、自然現象と言う事で落ち着いたんだろう。
その方がボクも助かるが問題は、王都に入る時だな。
誤魔化せるだろうか?一難去ってまた一難…厳しい。
頭を振ってネガティブな考えを追い払う。
シャーが、問いかける様にじっと見ていた。
((シャー今は、黙っててね。今度説明するから))
((了解しました))
ボクの横で丸くなって目を閉じた。
昼の休憩になり母さんが様子を見に来たが、「元気だから大丈夫!馬の世話をしに行くね」と言って皆の後を追った。
食後近くを散歩する。
雨は、既に止んでいた。
ここいら辺一帯が大蛇の縄張りだったのか、這いずった後がウネウネと続いている。
通り道の草むらにピンボールの様な卵が、6個落ちていたが2個割れていた。
大蛇が餌にしようと取っておいたのか、食べ忘れたのか…それとも巣から落ちたのかな?巣が無いか探したが見当たらない。
「紫色の卵…」
「何の卵だろ?」
「これ、生きているのかな?」
「試しに持って帰って、暖めてみようか?」
「丁度4個あるな」
「孵化したら最初に見たモノを親だと思うって、本に書いてあったよ」
「本当か?」
「育ててみようよ」
「そうしよう」
「坊主ども、そろそろ、行くぞ!」
「はーい」
「あ!馬」
「急ごう」ボク達は、慌てて戻った。
馬車の中で、どうやったら卵を割らずに持ち歩けるか色々試した。
この方法が、一番安定して安全そうかな…
まず、シャー達をブラッシングして毛を集める。
次に、小箱に敷き詰め中心に卵を据えて上からも毛をかぶせる。
そして、巾着に入れて胸に抱え暖める。
ここで問題、ずっと抱えられる?
「期限決めるか?」
「死んでるかも?」
「草に転がっていたしな」
確か、鶏の卵は20日くらいだったな…魔物の場合どうなんだ?
「シャー、何か知ってる?」
「魔物の育成は、人間より驚くほど早いです。その代わりある程度成長すれば止まります。寿命が長いのもその為です」
「じゃ~10日暖めて駄目だったら諦める。どうかな?」
「それくらいなら頑張れるかも」
「よし、決定な!」
「そうしよう」
「孵化するといいね」
「どんな魔物が産まれるか楽しみだな」
そうすると、あれ?ボクまた増えちゃうのか…
皆と一緒だし、まっいいか。
馬車が傾き下りに入ったと感じた。
旅に出てから、魔力操作の訓練をずっとしていない。
実際、そんな余裕も無かったし今なら出来そうだなと思い目を閉じる。
「ノアまた寝るの?」
「違うよ魔力操作の訓練、ずっとサボってるから」
「今からやるのか?」
「俺もやっとこうかな」
「アッ!俺も」
今までにないくらい、シンとした。
寝ているんじゃないかな?と思い、様子を探ったら案外真剣に集中していた。
木々の隙間が広がり、夕暮れが迫っている事が分かるようになった。
まだ山の中のようだけど、後どれくらいで抜けるのかな?両手で卵を抱えたまま、長い時間魔力操作をしていたようだ。
「ねえ、ボク今気付いたんだけど…鑑定すればよかったんじゃ?」
「そうだよ」
「俺も気づかなかった」
「ぼくもだアハハ」
「どうする、今からでも鑑定する?」
「いや!いい」
「ん~そうだね」
「楽しみが減っちゃう」
「そうか、ならいいや」
「こういう、無駄な努力も俺達の糧になるんだぜ!決まった」
ラグは、本当に天才だな。大爆笑だ。
そろそろ休憩と晩御飯だなと思いたすき掛けの要領で、巾着の紐を左腕に通し胸の上に卵が来るようにして、上着を着る。
そして、キッチリ前を閉じて熱が逃げないようにした。
夕食時に卵を拾った事を皆で報告をした。
大人達は、揃ってまた何かを始めたのかと少し困惑気味だ。
休憩を長めにとった後、ボク達が寝ている間に出発するので、食事が終わったら馬車にいなさいと言われた。
なので、大人しく卵を暖めていた。
明日起きたら、ロカナの街だ。
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