29 九日目 仄暗い森の奥より
夜明け前の薄闇の中、父がボクを馬車に運び込んだ。
だけどボクは、そのまま眠ってしまう。
夢だと思っていた。
窓から入る木漏れ日が、ちらちらと顔に当たる。
ゴトゴトと揺れる馬車の中で目覚めた。
「あれ…いつの間に、馬車に乗ったんだろ…」
馬車の中を見回すと3人は、まだ眠っている。
窓の外に目をやる、すでに森の奥深くまで入り込んでいる様だった。
躰を動かし御者席の後ろの小さい戸をコンコンとノックする。
戸を開け顔をのぞかせたのは、父さんだった。
「やあ、ノア起きたんだね、おはよう」
「父さん、おはよう。ボクいつ馬車に乗ったのか記憶にないんだけど?」
「何だ憶えてないのか。早朝私が運んだんだよ」
言われてみれば、そんな気もした。
「もう少し進んだら休憩するので朝ご飯は、その時に済ませよう」
「はい、わかりました」
「皆にも起きたら話しておいてくれ」
「はい」
戸を閉めて、昨日から影に隠していたシャー達を小さくして出す。
皆起きる気配が無いので、外の景色を眺めながら考え事をしていた。
父さんにアイテムボックスの事を旅の前に話したばかりなのに…
しかも、また従魔を増やしたと言ったらきっと呆れるだろうな。
サンドの事は、手綱が成功した時にどうせ分かってしまう事だから、早く話した方がいいんだけど…ディメーション…ん~どうするかなぁ。
あっでも、アイテムボックスの事をセルジュやミアは、聞いていないみたいだし、父さんだけに話すなら大丈夫かも?
だけど、手綱が成功しなければサンドを見せる事も無く、話す必要も無くなるんだ。
「ノアが悪巧みしているよ?」
「本当だ」
「何考えてるんだよ!」
いつの間に起きたのか、3人がボクを見てニヤニヤしていた。
「悪巧みなんかしていないよ。どうしてそうなるんだよ」
「俺達が起きたのにも気づかず、ボーと考え事をしてるからさ~」
「景色を見ていただけだよ」
「本当かな~」
「どうだか」
「あ…少ししたら馬車を止めてご飯だって」
「腹減ったな~」
「昨夜、飯食うの早かったからな」
「ぼく、いつ馬車に乗った?」
「あっ俺、父ちゃんが運んでくれたの憶えている」
「へ~親父が運んでくれたのか」
「それより、ご飯まだかな~」
些細な悩みなんか何処かに押しやられる勢いで、話題がころころ変わる。
ようやく馬車が停まり、外に出た。
そこは、鬱蒼とした森で木漏れ日が点々と水溜りのようにあるだけで、仄暗かった。
停車場も今までと違い下草も生え放題…山の奥だしこんなものか。
本来森の中の野営は、2泊になるが1泊で済ませる為深夜に出発した。
次のロカナの街に着くのも深夜になるので、砦の前で野営になると食事をしながら話していた。
馬を休ませるため食後も休憩をとった。
自由にしていていいが見える場所にいるようにと、注意を受けた。
「ちょっと、馬にブラシでも掛けてやろうかな…」
ボクがブラシを持って移動すると、皆も付いて来た。
「こんな山の中、ぼく達を運んでくれるんだもんね!」
スミスの言葉に頷きながら、皆丁寧にブラシをかけ出した。
「暗いうちから、運んでくれたしな!」
「感謝しなきゃダナ!」
馬に声を掛けながら世話をする。
暫くすると、ハーネルが声を掛けてきた。
「そろそろ馬車に繋いでくれ」
「はーい」
山道を慎重に馬車は、走る。
鬱蒼とした森の木々がちょっと怖いと感じたのは、内緒だ。
暗くなり、馬車がゴトリと音を立てて停まり「今日は、ここまでだな!」ハーネルの声が聞こえた。
ボク達が外に出ると、いつしか霧雨がシトシトと降っていた。
「あっちゃ~雨の野営?」
「しかも…山の中」
「マジか~」
「取り敢えず、馬だ」
「おう!」
「そうだね」
「だな」
停車場じゃない場所だったので、雨除けになりそうな枝が大きく広がっている木に結わえた。
「明日もよろしくね!」
「お疲れ様!」
声を掛けながら、飼い葉と水やりをして体の水滴を拭ってやった。
食事に向かうと、木々の枝を利用して布を広げ雨除けを作っていた。
その下で、馬車と馬車の間に板が置かれ料理を並べてる。
グッドアイデア!
季節は、新緑の時期もとうに過ぎ5月も終わりに近いが、森の中。
しかも雨…肌寒いというより寒い!出来立ての温かい食事が嬉しかった。
停車した野営の場所も狭く雨が降っているので、雨除けを作った所に父達のテントを一つだけ設置した。
その周りを馬車でコの字に囲み傭兵組は、荷馬車の隅を片付け休みボク達と母達は、それぞれの箱馬車で寝る事になった。
焚火を囲んだ父達と傭兵組が、見張りの相談をしていた。
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