25 五日目 コトネル村
翌朝 食事の時、スデラー隊長から聞いた詳細を父達が皆に報告した。
盗賊は、ボク達が到着する前日に村を襲い蹂躙していた。
そして、この村を拠点に近隣の村や町を襲う計画だったそうだ。
あと一日早ければ…苦い思いが過ぎり暗澹とした気持ちになったが「これから起こる被害を食い止めたんだ、良しとしよう」ドアロスの力強い断言で、少し救われた気持ちになる。
出立準備の為解散になり手早く支度を済ませ、静かに立ち去った。
次の目的地、デクシラの故郷コルネル村まで3日かかる予定だ。
橋を渡り、川の側で馬を休ませ食事と休憩を済ます。
ストラダム村を出てからずっと道の左右には、原っぱと林が続いている。
2日も足止めされたので、少しでも早く先を急ぎたい。
休憩を早く切り上げ、湖を迂回する道程を急ぐ。
延々と続く同じ風景を眺めていると、睡魔が襲ってきた。
隣を見ると皆同じ様だ。
どれだけ時間がたったろう、馬車がガクンと止まりハッと目覚める。
辺りは暗闇だ…皆揃って長すぎる昼寝をしたようだった。
馬の世話をして焚火の近くに戻ると、父達の疲労の色が濃い。
旅の途中とはいえ、この数日休まる間が無かったんだろうな…
ラグ達を呼び寄せコッソリ聞いてみた。
「ねえ、ボクお昼寝してスッキリしてるんだけど」
「俺も今夜寝れるか、心配だな」「うん」「俺も」
「今夜の夜警、父さん達に代わって、ボク達がやってもいいかな?」
「いいじゃん」「いいよ!」「親孝行だね」
早速 父達に話をしに行った。
「ラグロス、お前の考えじゃないな」
「トリルだと嬉しいが、違うな」
親父と父ちゃんは、互いの視線を合わせ頷き合っているが、嬉しそうだ。
合っているけど…言わなくていいのにと思った。
「皆ありがとう。少し無理をして距離を伸ばしてしまってね」
「確かに昼から随分飛ばして、休憩も無かったし」
「二つ目の停車場まで、すっ飛ばしたからな」
「予定より早まって明日は、コトネル村に到着だな」
「子供達の気持ちに甘えてみては?」
「シャー達もいるしな…何あったら直ぐ知らせるんだぞ!」
「坊主どもありがとうな!今夜の夜警は頼むよ」
「じゃ~とっとと寝るとするか」
「そうですね!」
口々に感謝を伝えた4人は、軽い食べ物と酒を手に寝床へ向かった。
焚火を囲んで、母さん ミア デクシラがしんみり思い出話をしている。
交わろうかとも思ったが、気恥しかったので二言三言お礼を言って離れた。
傭兵組が夜警の事を聞いて手伝いを申し出たが、セルジュ達も荷馬車を走らせていたのだからと思い丁寧に断った。
父達と同じように疲れているに違いない、実際疲労の色が滲み出ている。
代わりに、夜警に必要な物を貸してもらう事にした。
実は、ディメーションに必要な物を常備してある。
だが調べて分かった事があり、使える人が凄く限定的で少人数なのだ。
チート過ぎる能力なので、ずっと誰にも明かさない予定だ。
不測の事態を除くが…ん~フラグが立ってしまいそうで嫌な予感。
夜も更けて話の尽きない母とデクシラは、ミアが舟を漕ぎ出したので、ボク達に励ましの言葉とお休みの挨拶をして寝床に向かった。
暗闇の中、焚火の明かりだけじゃ心許ないので、眠りの妨げにならない様に気を付けライトを転々と宙に浮かせる。
暗がりに何か潜んでいたら直ぐにシャー達が気付くだろうしその点は、安心だ。
「デクシラ明日で最後か…」
「ノア寂しいのか?」
「まーねー」言葉少なく返事を返す。
「赤ん坊の頃から面倒見ていたんだから、ばーちゃんの様なものか…」
トリルが、珍しく感傷的な物言いをして皆がしんみりする。
こんな雰囲気を作って申し訳なく思い、話題を変えたいが思い浮かばない…
あーどうしよう…。
「スライム何処かで見つかるかな?」何気ない会話をラグが始めた。
「王都行くまでに、見つかるといいね」
「馬車走らせている間、無理だろ」
そこから、スライムに 変形をどう仕込むかとか、核の保護をどうすればいいか、鞍と手綱のデザインなどなど話題も膨らみ……そして、いつの間にか空が白々と明けていった。
無事に一夜を明かし
「坊主ども、ちゃんと起きてるか」父達が揃って起きて来る。
「おはよう、父さん」「親父、おはよう」
「おはよう。おかげで良く眠れて疲れも取れたよ、ありがとう」
「お前らありがとうな!」
「感謝してますよ」
「おう!よくやった」
褒められて照れくさい。
なので、逃げる様に馬の世話をしに行く。
一仕事を終え、食事の前に昨日借りた道具を返しに傭兵組の寝床に向かった。
「おはよう、セルジュ起きてる?」テントを覗き込む。
「おはようノア。今朝は早いね」眠たそうだ。
「ノアは、徹夜したんだよ忘れたのか?」リーも気怠そうだ。
「これ、ありがとう。ブランケットや肩掛け役に立ったよ」
「そう、良かったよ」
「俺達も起きるか」「だな…」「こいつまだ寝てるぞ」
幸せそうな顔で睡眠中のオルムをリーが容赦なく小突いた。
先に馬の世話をしに行く傭兵組を見送りボク達は、食事に向かった。
大人達が皆忙しく動いているので、手早く食事を終えて馬を馬車に繋ぎに行く、コトネル村まであと少しだ。
揺れる馬車の中でボク達は、お昼休憩迄グッスリ眠っていた。
村の近くまで来ているのか、放牧された牛が野に放たれている。
牛飼いの少年二人が、鈴の付いた杖を持ち6匹の犬に牛が離れすぎないよう指示を出している。
「あの犬凄いね」
「牛が誘導されているな」
「杖の鈴の音で判るんだ」
「言葉が通じないなりに、工夫されているね」
「ノアは必要ないもんな!」
「思うだけで通じるからね」
「便利だよなー」
シャー達も走り出したくてウズウズしているが「あの子達の仕事の邪魔になるから、駄目だよ」と言い含めた。
「そろそろ出るみたいだよ?」
「馬車に戻ろう」
「おう!」
「行こうぜ!」
馬車に乗り込み、コトネル村を目指す。
村には、3時間程で着いた。
馬車を入り口で止めて、デクシラの案内でトーマスとミスド二人が、村長に挨拶をしに出向いた。
ボク達は、待つ間馬車の上から村を見渡す。
この村は、畜産が盛んなようであちらこちらに大きな牧場があり
「うっひょー広いな!」
「建物が低いから、余計に見晴らしが良いね」
「デクシラ小さい村だって言ってたのに」
「広いけど人が少ないとか?」
「動物がいっぱいいるね」
「肉がいっぱいだ!」
「いや、その言い方!」
「シャー、動物達を怯えさせないように、気を付けようね」
騒ぎを聞きつけミアが非難する表情でやってきた。
「あなた達、そんな所に乗っていいと思っているの!」
「はぁ~」
「別にいいだろ」
「普段話もしないのに、こういう時だけ…」
「今降りるよ」ボクが降りるよう皆にも促すと
「ノアは、ミアに甘いな~」
「甘々だな~」
「だね~」
「そんなんじゃないよ」苦笑い。
面倒臭い事にならない様に気を付けているだけだよと、心の中で舌を出す。
ボク達が素直に馬車から降りたのに、まだミアが動かずそこにいた。
「何だ、まだ何か文句あるのか?」気分を害したラグがそっけなく聞いた。
「そうじゃない…けど…」チラチラシャー達を見ている。
「じゃ~あっち行けよ」
「もう用は済んだんだろ?」
「ミア何か用があるの?」可哀想になり、放っておけなく一応聞いてみる。
「別に用はないわ!じゃね」踵を返して戻って行った。素直じゃないな。
シャー達に触りたいのなら、普通に声を掛ければ良かったのに。
まぁ~気付かない振りしたボクが言えた義理じゃないが。
父達が村長さんと戻り宿屋は無いが、村長の家にお客様用の宿舎があるので、そこにお邪魔する事になった。
久しぶりのベットだ!
馬車で村長の家に向かおうと動き出した時、放牧した牛達が少年と犬に連れられ村に帰って来たので足止めになった。
「間の悪い事ですみません」
「村民の生活が第一ですのでお構いなく」
「街にはない光景だし、子供達も楽しんでいるようです」
そう、ボク達は、もうもうと土煙を上げ、沢山の牛を従え帰って来た二人の少年に釘付けだ!
馬車の戸を開け放ち埃も気にせず食い入るように見つめている。
「すげー!」「うん」
少年達は、こちらに気付き声を掛けて来た。
「ねえ~遠くから来たの?」人懐こい笑顔だ。
「うん、普通に移動したら馬車で四日かな?」
「普通にって…」少年は、不思議そうな顔をした。
「おい、邪魔になっているから早く牛を連れて行け」
村長さんに急き立てられ少年達は、ペコリとお辞儀をして先を急いだ。
牛の一団が通り過ぎ改めて村長さんの家へと向かう。
遠くにさっきの少年達が、牛舎に牛を追い立てている姿が見えた。
村長さんの家に着き部屋に落ち着く。
今日で最後になるので、家族の待つ家へデクシラと共に向かう事になった。
村長の家から少し離れていたが、思い出話をして散歩するにはいい距離だ。
ボク達が産まれた頃の事、成長の過程そんな話で聞いていて気恥しくなる。
家に着くと、予定より遅くなって心配していたと娘さんが話していた。
娘と言ってもおばあちゃんだけど…
孫とひ孫にも出迎えられ赤ちゃんを見たデクシラは、蕩けそうな表情で涙ぐんでいた。
幸せそうなデクシラを見て、本当に嬉しかった。
家に入る様勧められたが、時間も遅くなるので辞退し明日村を出る前に寄る事を約束して、村長の家に戻る。
途中、母さんが
「デクシラ良かったわね…」寂しそうにポツリと呟いたのが印象的だった。
夕食前に、ストラダム村の事を話題に出さないようにと口止めされた。
悲惨な出来事だったし、聞いた人も楽しくないだろう。
それに、問題の盗賊も捕まった後なので、不安になるような事を言う必要も無いと父達に言われた。
食事は、たまに微妙な間があったが和やかに進み、お腹いっぱい食べた。
村長にお礼を言って、部屋に戻りベットに潜り込む久しぶりのベットで気持ちがいい。直ぐ眠りに落ちてしまった。
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