23 二日目 ストラダム村 5
肉球が、ホッペタをつつく。
「う~ん…」
更につつかれたので、寝返りを打つ。
「もう少し寝かせて…」
すると、脇腹、背中、頭あらゆる場所をつっつきまわされ…
「あ~~わかった、起きるよ…」
むくりと起き上がりボ----っとする。
隣を見ると、ラグ スミス トリルもシャー達の餌食になっていた。
「あんな起こし方卑怯だよ」
ブツブツ文句を言うラグの横で、諦めた様子のトリルは、欠伸をしてスミスは、まだ半分夢の中のようだな。
「顔を洗ってサッパリするか…」
トリルの誘いが合図となりもぞもぞテントから這い出たら、すでに日差しは、明るい。
10時くらいかな?
水場に向かう途中セルジュに会い、笑顔で挨拶を交わした。
「おはようノア、随分お寝坊さんだね。食事の前に馬の世話忘れないでね」
「ふぁ~い」
気の抜けた返事を返し移動した。
顔を洗い馬の世話を終えて朝食に向かうと、ハーネルとトーマスが、2頭の馬に鞍を乗せている。
「父さん、おはよう」「親父、何処か行くのか?」
ボクとトリルが、駆け寄り話しかけた。
「ノアおはよう。昨夜は、大活躍だったそうだね」
「トリルお前は、挨拶も出来ないのか」
トーマスは、穏やかに挨拶を返しハーネルは、呆れた顔をした。
「悪かったよ親父、おはよう。で…何処か行くのか?」
「あぁ~後片付けだ。48人も連れて行けないだろ?だからアジョン迄戻って、騎士団を連れて来るんだよ」
面倒くさそうにハーネルが答えて、トーマスが話を引き継いだ。
「村人も弔ってやりたいしね。このまま立ち去る訳にもいかないから、早くて明日遅くとも3日程度で戻れると思うから、留守を頼むよ」
「はい。気を付けて行ってらっしゃい」「親父もな!」
二人を見送り食事に向かった。
「おはよう。みんなの元気そうな顔を見て一安心ね」
「おそようノア。随分お寝坊ね!」
母さんのホッとした様子…心配かけたな。
ミアに至っては、もはや日常的といえる軽い憎まれ口を叩く、こんな時でもブレないな。
「お坊ちゃま方おはようございます。昨夜は、ご苦労様でした」
労いの言葉を掛けるデクシラ。
全く、こういう気遣いをミアにも見習ってほしいものだ。
ドアロスとミスドそして傭兵組は、すでに食事を済ませ氷室へ向かったと聞いて、慌ててボク達も食べ終え追いかけた。
ボク達が氷室に着いた頃、4人組の盗賊は、表に出ていた。
「父ちゃんおはよう」「父さんおはよう」「おはよう」
「おじさん、おはようございます」「おう!」「よう!」
一頻り朝の挨拶も終わり、今から何をするか聞いた。
先ず、昨夜その場に放置したままの盗賊たちを酒場に集めて拘束する。
このままだと、見張るにしても不都合だ。
全員で行動する必要も無いが、大人が付いていないと不味いので、5人2組になり手分けして対処する事となった。
ドアロスと傭兵組は、道端5人組の所へ。
ミスドとボク達は、東3人組のもとに向かった。
口を塞がれ拘束されているにも拘らず、怖ろしい顔で睨み何やら呻いている。
脅しているのかな?諦めが悪いな…
呆れながらもボク達が足の拘束だけ外し連れ出そうとしら、子供だと侮ったのか居座ったり逃げ出そうとしている。
やれやれ所詮無駄な抵抗なのに、シャー達がボクの影から飛びで歯をむき威嚇すると、悲鳴に近い呻き声をあげ素直に従った。
酒場に着くと、道端5人組を連れたドアロス達もすでに到着していた。
店の中は、散乱した什器や食べ物アルコール嘔吐物その他諸々の臭いが充満して、酷い有様だった。
「改めて見ると、派手にやったな」
ドアロスは、豪快に笑いながら道端5人組と2階3人組の縄をきつく縛り直して次々放り込んだ。
ミスドは、惨状を目の当たりにして呆然としていた。
そんなミスドを尻目にドアロスがサクサク仕事を片付ける。
「そこいらに居た5人を先に放り込むか、それが済んだら残りは、屋上の6人だな。ヒヨッコ共は、其処で待ってろ」
そう言って二人と傭兵組が正面の建物に向かった。
「ノア、トルネード雷神は封印な!」
突然、ラグがそう切り出しボクが戸惑ってる間に、スミスが聞き返す。
「えぇ~ラグ何で?」
「あんなの出されたら俺達出番無いだろ!」
当然だと言わんばかりだ、トリルも不満気だ。
「だよな~俺等何も手出し出来なかったな…」
ちょっと待て、そもそもボク達、手を出しちゃいけない筈だったよね?
でも、まぁ~言いたい事は分かる。
シャー達があっさり片付けた時、物足りなさをボクも感じたよ。
「分かったよ。悪かったよ、そんなつもり無かったんだけど…」
「結果が、アレじゃ~な~アハハ」トリルが吹き出した。
「あの時の、偉そうに出て来た首領の顔ったらなかったな!ハハハ」
「そうそう!ノアが魔法を放った瞬間、ひきつってたよねーアハハ」
ラグとスミスも、事の顛末を思い出し腹を抱えて笑い出す。
ボク達の笑い声が癪に障ったのか、店の中から盛大な呻き声が聞こえた。
向かいから引っ張って来た6人組も縛り直してサクサク放り込み、盗賊の後始末は、これでいい。
ここの見張りは、シャー達に任せる事にする。
朝寝坊したからか、盗賊を1か所に集め終えただけでお昼になっていた。
「飯食った後、ご遺体をどうするか考えるか」
ドアロスの一言でみんなは、暗い気持ちになり重い足取りで拠点に戻った。
さっきまで明るい気持ちで笑い合っていた事に、少し罪悪感を覚える。
生き残った少女は、今朝目覚めたが心と体に深い傷を負っているので、一言も話さないと母さんから聞いた。
父さん母さんミアが消えた時の絶望、摑まっていると聞いた時の焦燥感、そして生きていると知った希望。
さまざまな思いが交錯し、少女を励ます言葉が僕には、無い。
食事を終え、轍があったことを思い出したドアロスが、台車を引いて来た。
暗澹とした気持ちで氷室に向かう。
大人が中に入り遺体を運びボク達は、穴掘りを担当する。
何処か見晴らしのいい場所が無いかと思い、林の奥に足を踏み入れたら湖のある開けた場所に出た。
湖に向かう道の両側が、なだらかな斜面になっていたので、そこを共同墓地にすると決めた。
サザンが斜面右側に大人用、左に子供用の墓穴を魔法で用意する。
ボク達は、穴の壁を一つ一つ丁寧に固める。
黙々と作業した。
魔法で済ますことも出来たけど…体を動かしたかったんだと思う。
台車に乗せられ遺体が運ばれて来た。
母さんとデクシラが、そのまま埋めるのは、余りにも不憫だと言い血塗れになった遺体の穢れを布で拭う。
言葉少なく作業を黙々と進める。
氷室の遺体を全て運び終え確認したら、大人が138人子供が53人だった。
たった48人の盗賊に、無残に殺されどんなに悔しかったか計り知れない。
そのまま休む間もなく作業を続けた。
日が暮れ、月明かりが照らし始める頃、作業に終わりが見えてきた。
何処で摘んで来たのか、ミアが全ての墓に花を手向けているのが見える。
誰かが魔法を使い、明かりが転々と灯され幻想的な雰囲気を醸す。
雨が降らなくて良かった…騎士団が来た時検証するだろうと墓に蓋は、無い。
全てのご遺体の安置を済ませ、墓所の入口から見渡すと、
月明かりが湖面に反射してきらめき輝く。
左右のお墓は、互いを見守る形で相対している。
心安らかに眠れるといいな、胸の中で強く願った。
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