22 一日目 ストラダム村 4
村の中心に建つ酒場の辺りは、賑わい盗賊達が酒盛りをしていた。
そこから少し離れた空き家に人の気配が無い事を確認して静かに滑り込み、周りを警戒するようシャーに頼んだ。
「まず、盗賊が何処に何人いるのか確認しよう。ノア ウルフ達に頼めるか?」
「大丈夫です」
「アッシュ シルバー ブルー レッド聞いていたね、探って来い頼んだよ」
4匹の報告を待つ時間は、意外と短かった。
連中は、さほど警戒していないのか狭い範囲に少人数の見張りしか置いていなかったのだ。
「酒場を中心に東の建物の2階に3人の見張りがいるって、ブルーから報告が入りました」
「確か総勢48人と言ってたな、あの屑達。奴等4人で44東に3で、後残り41か…」
「アッシュは、西を確認したそうです。道端に座り込んだ5人が、酒盛りしてるって言ってます」
「奴等、なめてるのか?」
「こっちに大人が残っている事を知らないのかもよ?」
「南側を確認したシルバーから、正面の建物の屋上に6人いるって連絡が、あと…レッドからの報告で、酒場の中に25人いて店の前に5人の見張りがいるそうです」
「合計48人だな、あいつら素直に喋ってやがったか」
「先ず外側から崩していこう…建物の中は、人目に付きにくいので、ここから遠回りだが東の2階から片付けるか」
ドアロスとハーネルが方針を話し合っていると、スターリーが疑問に思い聞いた。
「3箇所に散らばって、一気に畳み込めばいいんじゃないですか?」
「いいや、お前達は、冒険者だと言ってもまだ一年目とひよっこの集団だ。目を離す訳にいかない、安全策を取るに越した事は、無いんだ」
ハーネルが、厳しい言葉で諫めた。
東の建物に忍び込み2階へ上がる。
扉が開いていたので覗き込むと、盗賊達は、詰まらなそうに窓の外を眺め話をしていた。
「ガキども、まだ見つからねえらしいな」
「おう!すばしっこい奴等だぜ」
「仲間が皆殺しになったと知った時の絶望した顔を早く拝みたいね」
「お前は、本当に趣味が悪いなケケケ」
会話が耳に入り、こいつらもあいつら同様屑だな…類友かよと半ば感心し呆れる。
これ以上無駄話しを聞く必要も無いので、サッサと済ますかと思い忍び寄ろうと動き出した時
「オジサン達、僕等ここにいるよ!」
突然サザンが、片手を腰に当て反対の手でビシッと指差し、ドアの前で立ちはだかった。
その声にギョッとした盗賊が慌てて立ち上がり、椅子が倒れ3人が振り返るが、予め音も無く背後に忍び寄っていたドアロスとハーネルの腕が、盗賊の首を絞め影に潜んでいたブルーが飛び掛かり胸を押さえつけた。
「うまくいったね!」
満足気なサザンの横で、スターリーが口を尖らす。
「あのセリフ、俺が言いたかったな!」
「ボクも言いたかったよ」「俺も!」「僕もだよ」
それぞれ不満を漏らすも顔は、晴れやかだ。
「坊主ども何和んでやがるんだ。仕事は、まだ終わっちゃいねーぞ!」
ドアロスにドヤされ、気持ちを引き締める。
「さて次は、道端の5人と屋上の6人どっちにするか…」
「上から下は、見渡せるが下から上は、そうでも無いんじゃないか」
「決まりだな。先に正面屋上の6人を片付けるか」
盗賊を縛り上げながらドアロスとハーネルの間で話が決まり次は、正面屋上の6人を捕まえる為に移動した。
足音を忍ばせ早歩きで急ぐ…ベテランの冒険者ならいざ知らず、駆け出しとひよっこには、難易度が高い。
慣れない動きに苦労して一層慎重になり、少し遅れ気味になっていた。
目的の建物の裏側に到着し、裏口から内部に忍び込む。
屋上と言っても小さな村なので、せいぜい2階止まりだ。
古い建物の軋む音にヒヤヒヤしつつ階段をのぼった。
「奴等は、どの辺りにいるんだ?」ハーネルに聞かれシルバーを見る。
((左右と中央に、二人ずつです))
シルバーの答えを小声で伝えた。
「3箇所か…さて、組み分けをどうするかな」
ハーネルは、顎髭を弄りドアロスを見た。
「お前と俺が二手に分かれるのは、当然だな。前衛のセルジュとスターリー二人がハーネルお前と3人で右に、そして倅とトリルが俺と左へ行く。あとは、残った者とウルフ3匹がいれば、真ん中を抑えられるだろ」
ドアロスの提案に目を閉じ思案していたハーネルは、頷いた。
「それじゃ、気付かれないように近づくんだぞ」
「同時にケリを付けるからな、焦るなよ」
ドアロスとハーネルが、ボク等の事を少し気掛かりな様子で見るが、それ以上何も言わずに持ち場へ去る。
「ノア、頑張ろうね!」
セルジュがグッと握った拳を前に突き出してから、ハーネルの後を追った。
さっきの奴等と同じで、背後の警戒を全くしていないので簡単に後ろを取れた。
くだらない会話も同じだし、本当に拍子抜けだぞ!
それでも合図を待つ間は、ドキドキする。
皆が位置に付き合図が出た。
シルバーとブルーが、それぞれ同時に飛び掛かりボク達が取り押さえる為に近付くと、ブルーに胸元を押さえ付けられた盗賊が、ナイフを持った手を振り回した。
「ギャィン!」
「こーのーーーーブルーを傷つけたな!」
ボクは怒りで盗賊の腕を踏みつけ、サザンがナイフを持つ手を蹴っ飛ばした。
「大丈夫?ブルー」腕を踏みつけたままブルーを見る。
((大丈夫、かすり傷です))
ブルーの言葉に安心してシルバーの安全を確認すると、背後から押し倒した強盗の背中を踏みつけていた。
それをスミスとオルムが、縛り上げている所だった。
「よく頑張ったな!」
ドアロスとハーネルも捕縛完了し、安堵の笑みを浮かべていた。
猿轡を噛ませ雁字搦めにした6人の盗賊を下に連行して柱に括り付ける。
「これで動けないだろ」
満足そうに頷くドアロスの横で、ハーネルが気の毒そうな顔で盗賊を見ていた。
「さっきといい、少し過剰じゃないか?」
「万が一があるからな、念には念を入れろだよ!」
豪快に笑うドアロス情けをかける気は、全く無い様だ。
「さて次は、アッシュが見付けた西側の道端5人組か、あれから時間も経過したし今どんな具合か聞いてみてくれ」
ボクは、頷いてアッシュと意識を繋いだ。
((アッシュそっちは、どんな状況か教えてくれる?))
((主…盗賊たちは、居眠りをしています))
((え!マジで?))
((嘘は、申しません))
((分かった…ありがとうアッシュ。すぐ行くよ))
「あの…酒盛りしていたからかな?居眠りしているそうです」
「はぁ~?」「いや…そんな事有り得んだろ」
呆れながらもこれ幸いとサッサと捕まえる為、西に移動した。
状態を聞いて分かっていたが、実際目の当りにするとその光景に呆れ返る。
本当に泥酔したうえ寝入っていたからね。
道端の5人組が、一番厄介だと考え後回しにしたのが功を奏したようだった。
他の盗賊と同じように雁字搦めにして、猿轡を噛ませ近くの柱に括った。
「後は、酒場だな」「近くで確認をしてから、どう動くか決めるか」
見張りの排除が終わり、容易く正面の建物へ近付く事が出来たので、その影から表に居た5人を確認した。
「坊主レッドは、今何処にいるんだ?」
「さっき聞いたら入り口の影に潜んで中と外、両方を監視しています」
「ほお~優秀だな」
ハーネルが羨望の眼差しでウルフ達を見た。
ドアロスがボク達に改めて注意を促す。
「あいつ等も武器を装備しているようだ。坊主達さっきの失敗を繰り返すなよ!背後から前に押し倒しちまえば危険が少ない」
「先ずは、俺とドアロスで両端を片付けるか」
「そうだな、不意打ちでも5箇所は多いな」
そう言うと、二人はサッと両端の盗賊の下に走り、5分後に汗一つ掻かず戻った。
流石Aランクだと尊敬。
「残り3人は、さっきの要領だ」「坊主どもいくぞ!」
やる気を漲らせいざ出陣!意気揚々と出向いたが、終わっていた…。
出番が少なかったシャーとアッシュそしてレッドが、背後から押さえ付け千切れんばかりに尻尾を振っていた。
そしてボク達の仕事は、不貞腐れながら縛り上げる事のみだった。
「楽でいいっちゃー良いんだけどな!」
ドアロスが苦笑している横で、ハーネルも顔を歪めてニヤついてる。
「あっけな過ぎて、笑うしかないな」
ワザとらしい咳ばらいを1つして、真剣な表情に戻ったハーネルが呟く
「ここまでは、順調だったが酒場の中に残り25人。ここからどう動く?」
そして、緩んだ空気を締め直す為、ドアロスがボク達を睨み凄んだ。
「ひよっこ坊主どもは、中に入るなよ!」
「最初の予定通り、シャーが護衛に付いて4人で纏まっていてくれ。場所は、入口付近がいいな。そこから他のウルフの指示を頼むよ」
「はい、あの~」
「ん?何だ、言ってみろ」
「シャーを捕まえた時、雷を帯びた竜巻を利用したんですけど思ったより効果があって、その時のシャーは、グッタリしていました」
「ほぉ~それは凄いな、広範囲攻撃か」
確かにそれを先制攻撃で使えば、盗賊の動きも鈍り制圧しやすいだろうとドアロスとハーネルは、考えた。
「意表を突くいい作戦だな」
「奴等の動きが鈍ればそれだけ楽だしな」
「お前等全員で入り口を守れ。誰一人逃がすんじゃねーぞ!」
「あ…後タイミングは、ノアお前に任せるしっかりな!」
「傭兵組以外中に入るなよ!じゃ、俺達は、裏口で待機する」
二人を見送り、ボク達も入口の両脇から賑わった店の中を覗き込む。
裏口の方角を確認すると、二人の顔がチラッと見えた。
ドキドキして緊張する手汗が半端無い。
あんな事言わなきゃ良かったかもと後悔も過るが、だが覚悟を決めグッと腹に力を入れ、シャー達に囲まれ一歩前に出た。
盗賊たちは、宴会に夢中でボクの事に気付きもしない。
「シャー、ちょっと驚かせてやろう威嚇しろ!」
「ウオォ~~~ン!」
空気を震わす5匹の咆哮に酒場は、シンと静まり奴らがこっちを見る。
そして、盗賊達が場所を譲り人が割れ、その奥から威厳のある人物が現れた。
「小僧、よく来たな」
「オジサン達、ボク等を探しているんでしょ?」
「おぅそうだ。わざわざ死に急ぎに来るとはね」
「そうはならないよ。それにオジサン達悪い人だから、ボクも遠慮しないよ」
「ほぉ~どうするんだ」
首領は、下卑た笑みを浮かべ薄ら笑う。
その面を拝むと腸が煮えくり返ったが、逆に思考が冴えわたりノアの表情は、能面のように強張っていた。
「こうするのさ…トルネード雷神」
突然、風が渦巻きピカピカと稲光が瞬く。
膨大なうねりが部屋の中で暴れ狂い、家具や食器が飛び交い人もそのうねりに巻き込まれた。
人と人そして壁や天井にぶつかり合い、ゴミ屑のように舞い散るさまを眺めた時、助かった少女をふいに思い出す。
すると俄かに頭の芯まで熱くなり、更に怒りが増した。
「ノア!もう充分だよ」セルジュが肩を掴み、引き攣った顔で制止した。
魔法を解き辺りを見回すと、悪い冗談の様な惨状だ。
盗賊たちは、気を失っているかそこいら辺で吐いていた。
汚い言葉で罵っている奴もいたかな。
「ボク、相当頭に来てたみたいだ。でも…やりすぎたかな?」
「ノアーやっちゃったな!」「手加減を覚えようね」「アハハ…」
裏口から部屋を突き切って、ドアロスとハーネルの二人が駆けて来た。
「坊主凄いな…」
ドアロスが、盗賊を縛り上げながら感心する。
「悪人だし気にするな。怪我人は、いるが幸い死人が出ていない」
ハーネルも好意的に捉えていた。
誰一人逃げ出せないように、サザンが窓や戸口をすべて塞ぎ、戦意喪失した盗賊を次々と縛り上げ、漏れが無い様に点呼も忘れずする。
総勢48名の強盗団を無事捕らえ、安心したのか食事もまだな事を思い出し、急に空腹を感じた。
みんなのお腹もグーグー鳴っている。
氷室前で避難していた父さん達に、無事終わったとの連絡をシャーに頼み拠点に戻る。
そして簡単な食事をとった。
やるべき事は、まだ残っていたが、取り敢えず体を休める事にした。
散々な一日だったな、旅を始めて初日なのに先が思いやられる…
寝床に潜り込み、いつの間にか眠りについた。
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