2 viva おひとり様
魔力操作を開始してから1か月が経った頃。
暇だったので、チョットした悪戯を思い付いて試したくなった。
軽い物なら動かせるようになっていたので、セルジュが傍に来た時を見計らいボクの枕元にある小さな玩具をふよふよ浮かせてみたら、目を見開いた後ひっくり返って「わぁーーーー!」と驚き叫んだ。
叫び声を聞きつけたソフィアとデクシラが慌てて駆け寄り、倒れているセルジュに何事かと問い質していたが「おもちゃが浮いた!」と騒ぐばかりで、二人は全然要領を得ない。
結局、光の加減か見間違えだろうと結論付けられ「ノアとミアの周りで騒がないように!」と注意されていた…ごめん兄さん。
ミアは、機嫌が良いと「うぅーあぅー」と手足をパタパタさせていて結構活発なようだ。
そして時々ボクの方を向きニコッと笑う。
可愛らしいと思うが、ぐっと我慢をして無視する。
双子だからか 同じベットに寝かされているので、密着度がハンパ無い。
それに以心伝心なのだろうか、時々優しい雰囲気がミアから流れてくる。
まだ言葉を理解していないので、感情の様なものだろう。
だったら、ボクが疎ましいと思う負の感情も同様に漏れているのか?
ミアの情操教育の視点から今後の事を考えると、少し不安になった。
なので、この密着状態を何とかする為。
ボクは、筋トレを決意した!
まぁ~出来る事は、限られているんですけどね。
ただ緩慢に手足をバタつかせるんじゃなくて、力を入れながら振る!
そうやって徐々に筋肉を発育させるんだ。
魔力操作と筋トレに明け暮れる間に2ヵ月たった。
窓からの日差しが柔らかくなった気がする。
部屋には、子守のデクシラが椅子に座りチラチラとボクらの様子を伺いながら手作業をしていた。
ミアとの適度な距離を築きたいボクは、とうとう行動を起こす。
隣には、並んで寝ているミアがいる「ごめんよ、ミア」心の中で謝罪しつつも躊躇無く腕を振るった。
生後3か月の赤ちゃんの腕だけどね。
胸の辺りに突然軽い痛みが走り、その衝撃に驚いたミアが泣き出す。
「あらあら、ミアちゃん大丈夫?そろそろ別々のベットが必要になってきたわね」
そして無事に?別に用意されたベットにミアが移動した。
一人寝快適!ってか、別々のベットあるならサッサと使おうよ!
ボクは、広くなったベットで嬉しくなってコロンと転がった。
それを見たデクシラは、慌てて部屋を飛び出しソフィアを呼びに行き、駆け付けた母の前で何度もコロンコロンしたら「成長が早い」と二人が大はしゃぎしていた。
自慢じゃないけど、地道な筋トレの成果だ。
夜になるとミアが珍しく夜泣きした。
それぞれのベットで寝ているけど、同じ部屋なので嫌でも聞こえる。
父と母が二人でミアの様子を見に来た。
「やっぱり、一人寝に慣れていないから寂しいのかしら?」
「そうかもしれないね。夜だけ一緒のベットにしたら安心するかな」
やっと離れたのに冗談じゃないと焦った僕は、手足をバタつかせついでにコロンと転がって二人に見せつける。
「元気だなノア。これだけ動くんじゃ危なくて同じベットは、無理だね」
「そうね~ミアが落ち着くまで、私達の部屋に連れて行きましょう」
「明日ミアのベットを運ぶように頼んでおくよ。今夜は、このまま連れて行こう」
そうして、思いがけず完全にプライベートな空間を勝ち取り、これからも満喫出来るようになった(ラッキー!)
ミアを連れて二人が去り、暫く大人しくして外の気配を探る。
今まで夜になると、ミアの目を盗みつつ物を浮かせる簡単な風魔法と魔力操作しか出来なかったが、ようやく他の魔法も試す事が出来る。
この世界に来てからよく見る魔法<光・ライト>電気が無いので明りを灯す時に大人達が使っていた。
後は、蝋燭を灯す<火・ファイヤー>だが、危ないので却下!
<水・ウオーター>失敗して濡れるとまだ寒いしぃ....
泥だらけになるので<土・アース>も問題外。
そうなると、やはり試すなら<ライト>が無難かな?
まだ座る事が出来ないので、仰向けのまま瞼を閉じ小さく灯る豆電球を思い浮かべる。
そして、時間をかけゆっくり慎重に、お臍から掌に魔力を流しイメージする。
「そろそろ、いいかな?」
薄目を開け確認したが、何も無かった…失敗だ。
最初から出来たら天才だよね!大丈夫まだ時間は、いっぱい有るさ。
生後3ヵ月の赤ちゃんなんだからね。
それにこれからは、プライベートな時間も増えるし地道に練習しよう。
その夜、寝落ちするまで失敗を繰り返しながら何回も練習した。
一夜明け
夜更かししたせいか今朝は、随分寝過ごしたらしい。
ミアのベットを移動した物音にも気付かなかった。
ボクの企みどおり事が進んで嬉しい限りなのだが、ミアから不穏な電波が流れてくる。
例の以心伝心だ。
まぁ~実際、部屋から追い出したわけだけど、まだ生後3ヵ月なんだし理解していないだろ?
取り敢えず、なし崩しでワンセット的な状況を脱出できたのでボク的には、問題ない!
寧ろこれからは、寝る前に思いっきり魔法の練習が出来るとほくそ笑むのだった。
ベットの移動はしたが、朝から寝るまでの時間は、一緒の部屋で過ごす。
子守は一人だし、仕事に復帰した母がお昼までお店に出ていて忙しいから仕方がない。
セルジュは3歳なのでお昼を食べた後、仕事を終えた母と暫く外に遊びに出かける。
それまで自分の部屋で本を読んだり、何かしら一人遊びをしていた。
たまにこっちの部屋に来て、ボクやミアに話しかけてくる。
2か月前に悪戯した事を憶えているらしく、時々ボクの様子を注意深く見ているような気がした。
ボクに話し掛けてくる時も、ホッペタを優しく突きながら「ふわふわ~」なんて呟き、玩具をそっと近づけてくる。
ボクは、無邪気な振りをして「キャッキャ」と笑うようにしている。
自分が悪いんだが、面倒くさい。
あんな事しなきゃよかった。
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