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17 春の新色 

「シャー出て来て、他の4匹もね」


シャー達5匹が、影から華麗に飛び出す。


「この大きさで5匹もいると、壮観だな!」「威圧感がねぇ~」


頭を掻きながら苦笑いをしているラグの横で、スミスが呆けた顔をしている、そしてトリルは、ニヤッと顔を歪ませ機嫌よくボクに声を掛ける。


「ノアこいつらの名前も、当然付けるんだろ?」


「うん。だけど薬草採取の後ね!作業の間はシャー達に周りの警戒をお願いしようと思ってさ」


「そりゃいいや、油断大敵だよな!」「ずっと影の中じゃ 窮屈そうだしね」


ラグが鷹揚に頷きスミスも賛成してくれたが、トリルは顔を顰めた。


「でもよぅ、2m級5匹じゃ目立って仕方ないよな?」


確かにトリルの言う通りだ、だが…街の外にいる時くらい影から出してあげたい。

どうしようかと迷っていたら、シャーが解決策を提案した。


「主、我等は小さくもなれます」


「え、どれくらい?」


「思いのままです」


「じゃ~やって見せろよ!」


期待に満ちたラグの言葉に呼応するように シャー達は変化しだし、淡い光が体を包みドンドン小さくなる…って子犬!

その可愛らしい姿にスミスのテンションは、跳ね上がり思わず叫ぶ。


「うわぁ!モフモフかわいぃ~」「これなら街の中でも大丈夫じゃね?」


トリルに至っては、ぶっきらぼうな口調だが表情が物語っていて…


「この大きさなら威圧感無いし、シャー達が辛くないなら小型のままでお願い。作業中は自由にしていていいけど、ボク達から離れ過ぎないようにね」


「あ!警戒もおこたるなよ」


「承知!我等がお守りします」


最後にラグが優しく声を掛けシャーが厳かに答えたが、これってギャップ萌え?

スミスは何と無く好きそうな感じだが、ラグとトリルまでそうなのか…

らしくない二人の様子を見ていて、ボクは笑いを堪えるのに苦労したよ。


颯爽と警戒に向かう5匹…ダメだ、子犬がじゃれ合っているとしか見えない。

威厳を保とうとしているシャー達だけど、あの姿じゃ何やっても可愛いから…。

4人で和みながら眺めるも、ハッ!と我に返る。


「さぁ~ボク達も始めよ」


「ぉ、おう!」


たまに視界に入るシャー達の姿に和みながらも、黙々と作業に取り組んでいたら、昼前に依頼の採取が終わっていた。

少し離れた場所で他のGランク冒険者も薬草採取していたが、僕たちが終わった頃を見計らって3人組が近づいて来た。


「やぁ~君達 聞きたいことがあるんだが。その犬は、君が飼っているの?」


ツオーネ・ドット・コム準男爵の5男だ、嫌みな口調で話すので、少しウザい。


「ボクのだよ」


犬じゃないけどね…と心の声。


「へぇ~灰色っぽい銀色って変わった毛並みだな」


「5匹とも全部?世話とか大変じゃない」


太っちょのジャンとおとなしいデギキスは、ツオーネの取り巻きだ。


「大丈夫だよ」


何しに来たんだろ~?控えめに言ってもボクと仲良しじゃ無いよな…訝しがるボクの横で、ラグとトリルは少し警戒している。

ジャンとツオーネこの二人とラグとトリルは、ハッキリ言って仲が悪い。


「ね~君、僕にこの犬一匹でいいから譲ってくれないか?」


「あー悪いけど 無理!」


「5匹もいるのに?ケチだなーお前」


ツオーネの無茶振りにボクが即答で断ると、ジャンが不穏な空気を醸す。


「何匹いようが、お前らに関係ねーだろ!」


「こいつらは、ノアの従魔で俺らのチームのマスコットだ!」


苛立つラグとトリルの言葉を聞いたツオーネは気に入らないようで


「ハッハー!従魔だって、こんなちびっこいのがか?」


「ツオーネ諦めよう?こんな事もう~やめようよ」


そんなツオーネをデギキスがオロオロして止めていた。

本当に嫌味でいけ好かないな、大体チビとか馬鹿にしているのに何で欲しがるんだろ?ん~昨日の今日で騒ぎを起こしたくないし…ボクが考え込んでいたら、

ちびっこいと言われて癪にさわったのか、シャーが傍に寄って来て鼻先でボクを突っつく、仕方ないか…。


「シャー達、元に戻っていいよ」


淡く光った5匹がズンズン大きくなると、三人は情けない声で叫び尻餅をついた、ついでに顔色も悪いな…


「わぁー」「ひゃー」「えええー」


「どうだ参ったか、こう言う事だ!」


何故か声を揃え威張る、ラグ トリル スミスの3人。

ボクもチョット胸がすっとしたけどね、後…こう言う事ってどういう事?


「おぉ――い、ノ――ア――!」


不意に 門の方角からセルジュの呼び掛ける声がして、セルジュとそのパーティーメンバーが走ってこっちへ向かってくる。


「ハァーハァー ノア昨日言ってた従魔ってその子達?5匹もいたんだ~」


「昨日言って無かったけ?」


「沢山いるなんて聞いてないよ?」


呆れた顔して笑うセルジュの隣で、サザンが感心して眺める。


「ノアは、Gランクなのに 従魔は、Aランク級だな。」


「本当だな、凄いや!」


スターリーはボクの肩をバンバン叩く…痛いよ…


「オレも従魔のステあるからな、負けてらんないね!」


興奮して喋るオルムの様子を見ていて悔しくなったのか、ジャンが負け惜しみを言い出す。


「本当に使役しているのか、勝手に言ってるだけじゃね?」


「何を!」


ラグが掴み掛かろうとしたが、シャーが突然 低い声で話した。


「そう思うなら、我に聞けばいい!」


「!!!!!」


「ノ…ノア 喋る事も聞いてないよ?」兄さん、ごめん驚かせて。


呆けて固まったツオーネ達と青ざめた顔が徐々に興奮して赤くなるセルジュ達。


「オォォォ―――!スゲーよ!」そこからが大変だった。


「どこで捕まえた?」「どうやって捕まえた。」「餌は何?」などと、揉みくちゃにされながら質問攻めにあった。

というより尋問に近かったな‥‥


暫くして 兄さん達は、これから依頼だからと名残惜しそうに立ち去った。

ツオーネ達3人は、固まったままなので放置。

ボク達は、依頼達成していたので シャー達に小さくなってもらい帰った。


ギルドへの報告は、ラグとスミスに任せ ボクとトリルそしてシャー達と一緒に川辺の野原へ向かった。

川の淵に座り足を水に浸すとヒンヤリして気持ちいいな、空を見上げ少し待つと報告を終えたラグ達が串焼きを買ってやってきた。


「報酬でみんなの分も買ってきたぞ、いいよな?!」


「ありがとうラグ スミス。ボクこの場所で串焼きを食べたかったんだ」


「何でここで?」


不思議に思ったスミスが、理由を聞いてきた。


「ボクが歩き始めた頃にさ、家族とここに遊びに来たんだ。その時 父さんと母さんが美味しそうに食べていたのを憶えているんだよ」


「ノアの分無かったのか?」


「まだ小さかったからね、1歳になる前の話だよ」


「よくそんな赤ちゃんの時の事 憶えてるな」


「まぁ~ね、熱いうちに食べてから名前を考えよう」


アツアツの串焼きに齧り付き食べ尽くした後、話し合いを始めた。

喧々諤々と様々な意見が出ては没になり、シャーと同じ漆黒の瞳を持つ2匹の名前が先ず決まった。

後は、それぞれ瞳の色が違う残り2匹の名前を考える。


「ね!よう~く見てよ、この子の瞳の色まるで今日の空の色でしょ」


「本当だ、薄い雲がかかっている淡い青だね」


ボクの説明を聞いて詩的な表現で返答するスミス ん~ナイス!

だがそこに、情緒に欠ける二人の声が割り込んで来た。


「じゃ~ブルーでいいんじゃね?」


「それでいいと思うよ、んでこっちの子は赤いな…」


「なら 色シリーズでレッドで決まりだな!」「異議なし!」


ラグの安易な発想にすぐさま同意をするトリル。

それを見たスミスは、控えめに笑っていた。

ボクもそろそろ考えるのが面倒になっていたので、それでいいかなぁ。

名前を不用意に伝えると、魔力問題があるので夜まで待つ事にした。


「ハァ~、今日はもうやる事無いな~」


「昨日は、大変だったよな。あ…でも親父から鉄拳無かったわ」


「おぉーそれな!俺も拳骨飛んでこなかったよ」


「うん!正直が一番だね」


気の抜けた顔をしていたラグが、トリルの言葉で驚きの表情に変わり、スミスの発言で拗ねた顔つきをする、そんな表情豊かな百面相を見てたら可笑しくて笑えた。


「何だよ、ノア~」


「何にしても良かったねラグ、ボクのお陰だよね。アハハ」


「そう言う事になるか?」


「フッフ~ン 感謝したまえ君達」


「止めろよノア。その気持ち悪いツオーネ口調」


ひとしきり笑い合い、後はダラダラと思い思いに過ごす事となる。

ボクはふと思い出し、残りの4匹との従魔契約も手早く済ませておく。

何か不都合な出来事が起こらないとも限らないし、堅実的にいかねば ボクの大切な従魔達だからね!

そして みんなで小さいシャー達とモフモフしたりジャレたり寝転んだり、楽しく時を過ごした。

モフモフは、正義だ 癒される(ガッツポーズ!)


「あ!そうだ、ボク王都へ行くことになった」


「エッ!どうして」「マジか」「ずりぃ~」


「テイマーギルドの登録にね」頬が緩んでニマーとするボク。


「いいなー俺達も行きたいなー」「一緒に行けたらいいのに…」「何かいい手ないかな」すかさず 希望を口にするラグと考え込むスミスに考える振りをするトリル。


「おれ父ちゃんに頼んでみる」「俺も親父に頼むか」王都へ行く理由も無いのにラグとトリルは、何て言って頼む気なんだろ?


「父さん許してくれるかな」ん~どうだろう?スミスは押しが弱いからな…


みんなで行けたら前世でいう修学旅行的な感じになるな~楽しいだろうな。

交通機関が馬車一択なのがアレだが…

それに日程も王都迄 片道10日掛かるらしいし道中危険だし娯楽も無い…

アレ?あんまり楽しくないかも。

ネガティブ思考は、忘れろ。

きっと気のせいだみんなで行けたら絶対楽しい、行けたらいいな!


5月の夕暮れ時 風はまだ冷たい、ラグが立ち上がり促す。


「冷えて来たな、皆そろそろ帰るか」


「おぅ またな~」「そうだね、バイバイ」「明日ね~」


走って家に帰り玄関に入ると、ミアが腕を組み仁王立ちして待ち構えていた。


「ただいま~って、何だよミア脅かすなよ」


驚いて立ち止まったが、無言のミアから変な思念がボクの脳をダイレクトに刺激してくる。

何なんだよもう…


「兄さんに見せたでしょ?5匹もいるなら私にも譲って!」さも当然の様に要求してきて、本当 何様?と聞きたいところだが堪えた。


「ヤダよ!」


「何で?いいじゃない。そんなにいてどうするのよ?」何その お前の物は、俺の物的な感じ…いたな~そんなアニメキャラ。


「我儘だな…」


あ!しまった。

つい本音が…途端に鬼の様な形相になったが、そこへ天の助けが


「ただいま、玄関で何さわいでいるんだい?」


「お帰り、父さん!」


「あっ父さんお帰りなさい。あの…ノアにお願いしていたの」さっきまでの勢いが萎み ミアの声が段々小さくなった。


「外まで声が響いていたよ。お願いって言う感じじゃ無かったが、一体 何をお願いしてたのかな?」


「……」


バツが悪いのだろう。

ミアは、父さんの質問に口を閉ざす。

悪いと判ってる分、質が悪いよなぁ。


「ノアは、何を頼まれたんだ?」   


「ボクの従魔が5匹いるのを知って、命令口調で譲れって言われたので…嫌だって断りました」


父さんは額に手をやり、深く溜息をついた…その気持ちよくわかるよ、ボクも心の中でハァ~と脱力したもん。


「ミア…ノアの事になるといつもの冷静さを失うね、君らしくない。それにこの従魔は、ノアが友人と協力して勝ち取ったんだ。だから 仲間と相談をしないままノアの独断で簡単に譲ったり出来ないと思うよ。そしてミアが本当に欲しいなら、自分の手で勝ち取らないと意味が無いんだよ。」


「ノア ごめん。」正論で諭されたミアは不承不承納得し、ボクは頷いて謝罪を受け入れた。


「さて、食事にするか」父さんは、明るい声でボクとミアを促し食堂に入ると、何故かここも空気が重い(ぇ 何で?)


「ソフィアただいま。どうかしたのか?」


気の毒だな、帰ったばかりなのに…

(あれ?母さんとデクシラの目元や鼻が赤くなってる。泣いてた?)


「あ…あなた、お帰りなさい」


「あぁ、ただ今。何かあったのかい?」


「デクシラが…うぅうぅぅぅ」


父さんの穏やかな語り掛けに堪え切れず、母さんの口から嗚咽が漏れた。


「旦那様 お帰りなさいませ。今 私から奥様にお暇を頂きたいとお話していたのです」


「えっ どう言う事なんだ?あ、二人とも食事は後だ 二階に上がってなさい」


「はい」


それから、どういう話し合いがあったか分らないが30分位たった後食事に呼ばれ、食事が終わった後 居間で説明を聞いた。


事の始まりは、デクシラの孫娘に赤ちゃんが産まれたという吉報が数日前に届いたので、そのひ孫の世話をする為 帰郷したいと願い出たのだ。


セルジュが産まれる前から この家の手伝いをしていたデクシラ。

寂しくなるけど、家族みんなでお祝いの言葉を贈った。

十年以上苦楽を共にした母さんが、本当に寂しそうな顔をしているのが印象的だったな。


部屋に戻りベットに倒れこむ。

セルジュもミアも寂しそうな顔していたな、正直ボクも寂しい。

本を読んでってよくせがんだよな、ジェスチャーだったけど。

でも デクシラは、ボクの仕草をちゃんと理解して絵本を広げてくれた。

人より早く文字を覚えたのは、デクシラが根気よく本の読み聞かせをしてくれたからだ。

しんみりした気持ちに区切りをつけシャー達を呼んだ。


「今日 みんなで名前を決めたんだよ。一日一匹って思っていたけど…纏めてやちゃおう」


「主 大丈夫ですか?」


「う~ん。まぁ~このまま倒れても寝れる体制でやるから 気を失ったらお終いね」


「主 無理はしない方が…」


「だけど、名前ある子と無い子の気持ちを考えるとね」

             

「じゃ~漆黒の瞳の2匹からいこうか君は、アッシュだよ。ヨロシク!」クラっとしたが、まだ大丈夫そうだ。


「そして君は、シルバーだ。ヨロシクね!」その瞬間、落ちそうになり気怠くグッタリした。


「主 そのお気持ちだけで充分です。無理をしないで下さい」


「全員行けると思ったけど無理だったかぁ。ごめん後は、明日だ」


何とかそれだけ伝えたら、意識がスーッと遠のいた。


夜更けに喉が渇き目覚めると、小サイズのシャー達が守るようにボクを囲んで眠っていた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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