16 懺悔のお時間
川原でお弁当を広げ 各々の反省とこれからの事を話し合う。
ラグが、慎重な面持ちで口火を切った。
「俺達さ、魔物の事知らなさすぎだよな」トリルとスミスも感慨深げに頷き「途中までは、良い感じで押していたのにな…」「影に潜む事知っていたら、攻め方も違ったよ」と 悔しそうな顔をしていた。
「迂闊だったよ。気軽に従魔したい何て言い出してごめん」ボクが項垂れて謝罪すると…
「何言ってるんだよ!シャーが仲間になったじゃん」「結果オーライだったろ?」「一緒にやろうって決めたんだよ、ノアだけの責任じゃないからね」と 口々に励ましてくれる。
「みんな…ありがとう」こいつ等が仲間で良かったと、心の底から思う。
「今ここで シャーを出すと不味いよね?」
「そりゃ~誰かが見たら驚いて、どうなるかな?」
「最悪 ギルドから誰かに討伐要請が出るんじゃないか?」
「街中で魔獣を従えて歩いている従魔士もいるから、大丈夫じゃない?」
ずうっと前に、魔獣を連れてギルドに入って行く従魔士をボクは、見た事があるけど判断できないな。
こういう時、やっぱり大人の知恵が必要だなと考え 思い切って相談する事にした。
「今日の事 父さんに話した方がいいと思うんだけど、どうかな?」
「うぇ~!父ちゃんか~拳骨こえぇな~」
「俺んちも鉄拳制裁だな…」
「ぼくの父さんは、暫く口聞いてくれないかも」
ラグとトリルは痛そうだけど、スミスは精神的に辛いな。
「シャーの事をずっと隠し通すのは、難しいと思うんだ。ボクが父さんに今日の出来事を話したら、多分皆の父さんにもバレると思うよ。それに 例え今隠し通せても後でバレたら、その時の方が余計に怒られる気がするんだよ。だから バラバラじゃなくて皆一緒に揃って話せば、少しはましかも?」
赤信号 みんなで渡れば、怖くない的な?希望的観測を話してみた。
「それが 一番いいかもな」「うん」「そうだね」
「じゃ~誰の家で話す?」「そこは、言い出したノアかな?」
ラグ‥…疑問形でボクの同意を誘うなよ。
「ん~教会の横の集会所を借りたらいいんじゃない?」
「お金は、どうするんだよ?」
「ハァ~わかったよ、もうボクの家で良いよ。」
「よし!じゃ~善は急げだ。サッサと済ませようぜ」
お弁当を食べ終え ラグが音頭を取り動き出す。
「3時間後ノアの家に集合な!父ちゃんもその頃には家にいるはず」
「俺んちも、同じくらいかな」「ぼくの父さんも大丈夫だと思う」
「じゃ~ボクは、お店に行って父さんに話してくるよ」
「おう!後でな」「また後でね~」「バイバーイ」
そして3時間後 ボク達から父達に真剣な話があると伝え、集まってもらった。
「あ、お久しぶりです」「中々機会が無くて、ご無沙汰してます」
「何の話か聞いてますか」「いえ、何も」「お宅もですか?」
「珍しく神妙な顔で来てくれと言うもんだから」
などと 父達が呑気に親交を暖めているが、ボク達は、それどころじゃない。
正直 吐きそうだ。
「どうしよう…ぼく緊張してきた」「ここまで来たんだ。腹を括れ!」
「ハァァァァ~だよな…」「じゃ~話すよ?」
ボクは、みんなに最後の確認をして覚悟を決めた。
「父さんおじさん達。実は、今日の出来事で話しておきたい事があります。」
「ノア今日は、初めて依頼を受けに行った日だね、関係あるのか?」
「坊主ども 何やらかしたんだ」ラグの父ちゃんが凄む、迫力あるな 怖い。
「えっと…取り敢えず見て下さい。シャー来い!」
「わぁふ!」
体長2m強のシャーが、ボクの影から勢いよく飛び出した。
その瞬間 部屋の空気がピーンと張詰め、気温が何度か下がった気がする。
「これは、一体どういう事だ?」父さんが厳しい表情で詰め寄って来た。
「えっと 依頼を受けて、薬草の採取をしていたらシャーがいたんです」
躊躇いながら説明するボクを見たラグが、後を引き継ぎ隣のスミスに振り…
「こいつ、いきなり襲ってきたんだぜ!なぁ~?」
「うん でもね、ぼく達で何とか押さえつけたの!ね?」
「で!ノアが従魔してみたいって言いだしたからさ、俺達協力したんだ」
最後は、スミスが色々端折って話をまとめた。
「まさか このウルフは、灰色狼なのか?Aランクいや単体だからBか…」
「違います。シャドーウルフです」
「シャドーか成程ね。それでか 何も無い場所から飛び出した訳じゃ無くて、影に潜んでいたのか」トリルの父さんは、変なところで感心している。
「シャドーの方が、単体でAランクじゃ無かったですか?」
「しかし、一体どうやって」
「それにしても 近くでこんな魔物が出たとわ」
親達が興奮した様子でざわめく、ボクが落し処を必死に考えていると、父さんが静かに聞いてきた。
「で?この事をギルドには、報告をしたのか」
「いえ、どう話せばいいのか…そもそも従魔してから言うのも変だけど、やって良かったのかも分からなくなったから、相談したかったんです」
小さく項垂れるボクに、ラグとトリルは憤りスミスは肩を落とした。
「ノア何言っているんだよ!」「そうだよ!折角捕まえたのに」
「あんなに苦労したじゃないか?これで駄目だったらガッカリだよ」
「取り敢えずシャーを戻して、父さんとギルドに行こう。街の近くに 魔物が出現したことを報告するべきだね」
父さんの言葉に他の父達も同意し、ギルドへ向かう事になった。
僕達は、目配せをする チムニー先生の呆れた顔が目に浮かんだからだ。
父達がチムニー先生を挟んで、こちらを伺っている。
因みに場所は、修練場だ。
人目を気にせずシャーを出すのに、都合がいいんだそうだ。
「ノア シャーを呼んでくれないか?」
「はい。シャー来い」
「ウォン!」
勢いよく影から飛び出たシャーを見たチムニー先生は、やはり呆れた顔をしてボク等を眺めた。
「お前等 昼前聞いた時は、何も言わなかったじゃないか」
「ごめんなさい」
「ノア 確かに契約したんだね」
ボクが聞かれたのに、シャーが返事をしたから大人達は、パニックになった。
「確かに 主と契約を交わした」
「!!!!!」
「そのウルフ喋った?」「見た事無い!」「どうなっているんだ!」
それだけでも騒然としていたのに、シャーの爆弾発言がまだ続き…
「驚くのはまだ早いぞ。我の影にも…現れよ!」
「ウォン!わおん!ワッフ!おぉん!」
シャーの影から4匹のウフルが、勢いよく飛び出した。
えぇーどう言う事?確か…あ!影に同族を従えているとか、説明にあったなと思い当る。
「ノア、これは一体…」
「あ 違う。ボクも知らなかった。って シャー聞いてないよ!」
「あの時は、紹介する時間が無かったではないか」
驚くボクに、シャーがしれーっと答えた。
「ノア 5匹とも従魔なのかい?」
「どうなんだろ そうなの?」
「我がリーダーなので、我が主と定めれば従うが当然の事。これらは、皆ノアの従魔だ」
その後 もう…何て言うか、チムニー先生にお説教もとい厳しい指導を頂き、やっと解放されたと思ったら親達にも厳しく注意を受け、本当にもう散々だった。
赤信号 皆で渡っても、駄目だったよ…
でも色々間違えた選択をした結果だと肝に銘じて、ボク等も深く反省したんだ。
そして 精神的にヘトヘトになり家に辿り着いた。
父さんも疲れた様子だ。
「お帰りなさい。父さん」
セルジュとミアの声が、綺麗にハモる。
「あなたお帰りなさい。あら お疲れのようね?」
母さんはこちらに向き直り、悪戯っぽくボクの目を覗き込む。
「父さんの様子が変なのは、ノアのせい?」
ボクは、答えるのも億劫だったけど素直に返事した。
「はい、色々騒ぎを起こして ごめんなさい父さん。」
「まぁ~いい 無事で良かったよ。ノア魔獣を従えたのなら、テイマーギルドに登録する事になるよ。」
「まぁ~ノア いつの間にそんな事を…」
「今日です」
「あれ?薬草を取りに行ってたんじゃないのノア」
母とセルジュは、目を見張りボクを見た。
「私も従魔のステータスあるのに って言うか、p足りないのにどうやって伸ばしたのよ!」
あ…面倒くさい展開になるのか?ミアは、いつもどおりだな(そっと溜息をつく)
「今その話は、しなくていい。で 登録すると魔獣にノアの物だという印を付ける事が出来るんだ。それがあれば、他人に危害を加えられる事も無いが、逆に従魔が何かしでかした場合、その責任をノアが請け負う事になる。だから従魔を扱うのは、成人してからと思っていたんだがね。Gランクで従えてしまったか…」
最後は、小さく呟き 憂いた。
父さんの心配をよそにセルジュは、ワクワクしている。
「ノア どんな子かボクにも見せて!」
「明日で良い?部屋の中じゃチョット…」
「わかった!約束ね」
機嫌を損ねる事無く快諾するセルジュ、無理強いする事無く僻む事も無い、本当にいい兄貴だ。
「色々あったみたいね、取り敢えずご飯にしましょう。そうだノア この街には、テイマーギルドが無いから王都まで行くわよ」
「!」こんな時だけどチョット嬉しいぞ、テンションが少し上がった。
食事を終え部屋に戻り、クタクタだったけれど餌の事とか気になるな…
「シャー来て」
吠える事無く、静かに飛び出し佇んだ。
「シャー他の子達も呼んでくれる?」
「承知!」
4匹ともシャーの影から静かに躍り出る。
「あれ…シャーもしかして吠えなくても出てこられるの?」
「あ~あれはノリです」
ノリって キリッとした顔で言われてもな、まぁ~いいか。
「聞きたい事があるんだけど」
「何でしょう?」
「餌は魔力だよね、10日に一回で大丈夫なの?」
「はい、大丈夫です」
「それって、一匹ずつ?」
「いいえ違います。我が摂取して分け与えます」
「あ~そうなんだ」
安堵した 5匹に代わる代わる毎日のように与えていたら、干からびちゃうよ。
「あーで…相談なんだけど」
「何でしょう?」
「魔力の摂取をする時は、夜寝る前にして欲しいな。日中の活動時間に眩暈とかすると、色々差し障りがあるので」
「了解しました。主」
「それだけ あ!そうだ他の子も名前無いと不便だよね。今日は、無理だけど 明日から毎日一匹ずつ付けるよ」
その言葉を聞いた他の4匹が、嬉しそうに反応した。
「それじゃ~今日は、もう寝るけど シャー達、普段どこで寝てるの?」
「どこでも寝れますが、安全な場所なら影の外の方が休まります」
「そっかーじゃ~父さんの許しを貰ってくるよ」
あ…セルジュどうしよぅと、廊下を歩きながら気付いたが、明日約束したし気付かなかった事にしようと思い直しスルーした。
さて 父さんの許しを貰い寝るとしよう。
あぁ~今日は、何だか疲れたな。
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