15 任務 初体験
「何故 こんな事になった…」青い顔でボクは、呟く。
初めての依頼 薬草採取を請け負い、門番に挨拶をして意気揚々と門をくぐり抜けた。
癒し草は、どこにでも生えているから採取の中でも簡単な部類の仕事だ。
さっそく装備のお披露目をしたら、みんなもそれぞれ新装備を携えていた。
お祝いの前倒しと聞いて どの親も考える事は、一緒だねって笑いがこぼれる。
あ…スミスだけは、3月生まれなのでお祝いの持越しで2か月待ったそうだ。
「やっと貰えたよ」と愚痴っていたが、顔がにやけている。
ラグロスの弓は、上下と中心に綺麗な装飾が刻まれていた。
それから嬉しそうに腰の短剣を見せて、父ちゃんから譲って貰えたと自慢気に話す。
トリルは、前衛で大剣を背中に斜め掛けしている。
その剣に余計な装飾は無かったが、重厚感があり一発当たった時の破壊力には、大いに期待ができそうだ。
スミスは、付与と回復職なので杖を持っていた。
ボクと違い刃の仕込みも無いが、上部にエメラルドグリーンの魔宝石が装飾されている。
杖は、シャープで軽そうだが材質は、しなりと硬さを備えた逸品だと自慢した。
装備の品評会も程々にして、午前中に依頼を終わらせ午後から新しい装備を試そうと話し合い、作業に没頭していた。
あいつは、突然現れた。
安全な場所にいたので ボク達は、油断していたんだ。
低い唸り声に威嚇され振り向くと そいつは、ボク達を見据えていた。
全体的に暗い灰色だが、毛先は陽の光を反射してキラキラ銀色に輝いている。
「なぁ あれって、チムニー先生が言ってたウルフか?」
トリルの囁きに、ラグが短く答える。
「かもな…って言うか、デカクないか?」
「立ち上がったら2~3mあるかな?ぼく あいつから逃げれる気がしないよ」
誰と無しに問いかけるスミスの言葉に、二人が頷く。
「怖いけどキラキラしていて綺麗だな。それにカッコイイな」
「 !!! 」
呑気な戯言に愕然とした表情の三人は、ボクを見た。
まぁ~当然か…。
「なぁ~逃げる事出来ないなら、何とかするしかないよな?」
ラグがみんなの覚悟を促すが、スミスとトリルは低く悲鳴を上げる。
「えぇーマジかよ!」「無理無理…」
「ねぇ!ボクさぁ、あいつを捕まえて従魔にしたい」
「はぁ~?」「えぇ~ジョーク?」「お前何言ってんの?」
ボクの突拍子も無い話に、みんなの呆れた反応が返って来る。
それでも、ラグが渋い顔をしながらボクに訊ねてくれた。
「で…計画は?一応聞いてやる」
「まず 土魔法で互い違いに壁を作り、直進できなくして足を鈍らせる」
ボクが作戦を話し出すと、スミスとトリルも興味を持ったようだ。
「ふんふん、それから?」
「足止めをしたところで、電気を帯びた風魔法で空中に放り投げる」
「おうぅ~行けそうじゃん!」
「そして、痺れて目が回ったところを捕縛するでどう?」
「どう?って、簡単そうに言ってるけど出来るのか」
スミスが尤もな意見をぶつけてきた。
「ん~ボク試してみたいけど、駄目かな」
少し弱気になったボクに、ラグが励ますように力強く頷き…
「それで、俺達は何をすればいいんだ?」
「壁をあっちこっちに作るから、それを盾に誘導してほしい。場所はぁ…あそこ!少し開けたあそこがいい」
ボクが方向を指差すと、ラグとトリルが任せろと頷く。
「スミスは付与魔法を、ラグとトリルにがんがんかけてね!」
「よし!じゃ~始めるか」「仕方ないな、頑張る!」「付与は任せて!」
ボクは、まず互い違いになるように あっちこっちに土壁を立てた。
スミスも身体強化の魔法を仲間に付与して、ウルフに弱体化を仕掛ける。
ラグとトリルは、嗾けて逃げるを繰り返し指定ポイントに誘導するが、ウルフも用心深くなかなか思うように乗ってこない。
それでも 時間が経つにつれ、ラグ達に翻弄されて徐々に誘き出されていった。
そう 計画通りの状況だった筈なのに…あいつは忽然と姿を消した。
「あれ…何処に消えたの?うわー」
消えたと思ったらスミスの後ろに現れ襲い掛かり、そしてまた消える。
「おい!どうなってる…」
奴を見失い 焦るラグのすぐ横にいきなり現れ襲い掛かりまた消えた。
「影だ…あいつは影の中に隠れるんだ!トリル危ない」
ボクは、叫んだ。
三人の傷は、致命傷では無かったようだが、顔色が悪く血が滲み出ていて倒れ込んで動かない。
「何故こんな事になった……」
早くみんなの止血をしないと…冷静になれ焦るな考えろ、落ち着くんだ!
ジリジリとした焦燥感が迫るなかボクは、無理やり気持ちを切り替える。
そうだ 空間魔法だ。
それで奴の位置を正確に掴むんだ。
そして冷静かつ素早く、あいつの居場所を探った。
「どこだ…あそこの影か…」
あそこから出た時が勝負だ…ボク、待った。
数秒にも数時間にも感じた。
やがてウルフが影から飛び出したので、奴の足元に数発のフリーズを入れたがギリギリで躱される、あいつは、素早く左右に動きながら獰猛な唸り声をあげ ボクに襲い掛かってきた。
「くっそぉ、そこだー!」
揺さぶり動く奴の残影に惑わされる事無く、風+雷魔法を打ち込み命中させた。
奴は電気を帯びた竜巻にグルグルと舞い上がり、キリモミしている。
「やったぁ!」
このまま暫く風に揉まれてろ!
ようやく戦いの目処がつき、3人の安否を確認するとスミスがみんなを安全な場所まで移動して、治療を施していた。
良かった、無事なんだよな?泣きそうな顔で三人を見る…。
「怪我は、見た目ほど大した事無いよ!」
スミスがホッとして叫んだ、ラグもトリルも元気そうだ。
「あぁ~痛いけどな!ノアなんて顔しているんだよ。」
「俺は、襲われた時に倒れこんだ打ち身だけだぞ。」
「何だってー?あの血は何だったんだ、死んじゃうと思って焦ったボクの気持ちを返して!」
「そんな事よりノア、従魔にするんだろ?」
「そろそろウルフ降ろさないと…何だか可哀想な状態だよ?」
「だけど、みんなに酷い事した奴を従魔にしてもいいの?」
「う~~ん。」「いいんじゃね?」「怪我はしたけど、何とかなったし。」
異口同音ってこの事言うんだな、嬉しくてボクの顔が緩む。
「それに、影に出入りするモンスター凄くね?」
極めつけの決定打をラグが言い放った。
「おぉーそれな!」「ぼく達のチームのマスコットにしようよ。」
呑気な奴らだ。
ウルフを降ろしたがもうヨレヨレで戦意喪失、捕縛する必要も無かった。
「ほら!ノア早く試せよ。」「急げよ。」「今のうちだよ。」
「うん。ありがとう。」
3人に感謝して、ウルフに向き合い魔法陣を構築する。
「どう?」「いけそう?」「失敗した?」
「成功したよ、ついでに鑑定…っと。」
<シャドーウルフ>
群れを好み影に潜む、高い跳躍と瞬発力で敵を翻弄します。
魔法を駆使する個体もいるようです。
群れのリーダーの影には、他の個体を含む場合もあります。
栄養の補給は、魔力を好み10日に一度摂取します。
鑑定結果の情報をみんなと共有した。
「魔法って、どんな?」「さぁ~?今度試すか…。」「名前どうするんだ?」
「シャドーウルフだから、シャーとか?」
ラグの命名に安易な…と思ったが、分かりやすくてそれでもいいかなとも思うけど、スミスとトリルは囃子立てた。
「安易だなー。」「本当、ラグ単純。」
少し落ち着いたのか、シャーがのっそり立ち上がり傍に来て伏せる。
「お前の名前はシャーだよ、これから宜しくね!」
話しかけたとたん、魔力がゴッソリ抜かれフラッと眩暈がした。
「うを!こいつの体光ってるぞ。」「なん~だ、これ?」「あれ…ノア大丈夫?」
「名前付けたら魔力持ってかれて、一瞬立ち眩みしたけど大丈夫。」
「主、なかなかの魔力を持ち合わせておられますね。」
「 !!!! 」
「今、喋ったね…。」「まじ、スゲー。」「えぇぇー!」
「名付けられ、主から魔力を多く貰い受け、少しばかり進化したようです。」
「おっおぉ~。」
ボク達が強い衝撃を受けている中、遠くから大人達の声が聞こえる。
竜巻を目撃した大人達が、慌てて様子を見にやってきたのだった。
それを見たシャーは、サッとボクの影に隠れる。
「おーい。」「大丈夫か?」「さっき、大きい竜巻が見えたんだが。」
大人達はボク達を気遣い、口々に安否を確認してくる。
「お前達その血はなんだ、一体どうした?」
先頭を切って走ってきたチムニー先生は、服に着いた血を見てギョッとして聞いてきたが、すかさずラグがシレっと答えた。
「風に煽られて、地面に打ち付けられました。」
そして、飄々とした顔でトリルも答え、スミスも一緒になって惚けていた。
「うん、オレも倒れて腰を打ったよ、凄い風だったよね。」
「何だったんだろうね?」
「治療も必要だろ、歩けるか?とにかく戻ろう。」
チムニー先生はボク達を気遣い促すが、ボクはなんだか背中がムズムズする。
「あ…でも、まだ依頼が終わってないです。」
「そんな事はどうでもいい、安全が一番大事だからな。しかし、一体どうしたらこんなに地面がボコボコになって荒れるんだ?」
チムニー先生は、不審に思い辺りを見回した。
「風除けを作ったんです。」「そうそう!」
「そしたら次々壊れて大変だったよな!」
ラグが答え、スミスとトリルが同調して捲し立てた。
少し前から思っていたんだが、ボクは咄嗟の噓が苦手らしい。
「まぁ~無事で良かった。」
チムニー先生は不審な顔のままだが、一旦みんな戻ることになった。
お弁当を準備していたのに食べる間も無かったな、少し残念…。
依頼は2~3日中でいいと言われたので、日を改める事にした。
門の脇にある詰め所で治療の必要があるか確認したが、スミスの治癒は完璧だったのでそのまま解放された。
「これからどうする?」
スミスはまだ少し興奮気味だ、ラグがその質問に答え提案する。
「弁当あるしさ、天気がいいし、川へ行って食べよう。」
「賛成!」「ボク…食べながら相談したい事がある。」
みんなが同意したので、四人揃って川に向かって元気に走り出した。
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