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―side ミア&ソフィア―
母に急き立てられ部屋に戻ったミアの表情は、冴えない。
「あらあらそんなに暗い顔をしていたら、幸せが逃げちゃうわよ」
クローゼットの中を確認しながら必要なものをリストアップする母の背中に、ミアが駄々っ子のような声を上げる。
「だって本当は、行きたくないんだもん」
ノアと違い160cmに満たない小さな体と、幼さの残る少し垂れた大きな瞳は、不安気に揺れていた。
ソフィアは、そんな娘に優しく寄り添い背中をそっと撫でる。
これまでミアがアジョンを離れた経験は、2~3回かしら?それも家族や信頼できる人に囲まれての旅だったわね。
二年もの間一人でだなんて不安になって当然よね、それに私も心もとないわ。
そうだ!
「ねぇミア、レイチェルと一緒に行けるよう後でトーマスに話してみるわ。そうすればあなたも心強いでしょ?」
「え、いいの?」
「ええ、それに明日は、気分転換に甘い物でも食べに行きましょう」
「嬉しい。母様ありがとう」
小さな頃の母様呼びに戻っている事にも気付かないほど嬉しかったのだろう、そんな娘の様子にほっと胸を撫で下ろした。
―side セルジュ&ノア―
「そろそろ休むとするか」そう呟き扉に向かったトーマスがふいに立ち止まり「そうだ、ノア幽霊屋敷の件だけど何とかなりそうだよ」と声をかけた。
「えっもう?流石ですね父さん、有難うございます」
「うん、除霊とか後の事は、任せていいんだよね」
「はい」
「そうか、じゃ二人ともお休み」
「おやすみなさい」
トーマスが立ち去った後、兄と両手でハイタッチ!
「よかったね、ノア」
「うん!明日みんなに報告して、先ず除霊しないとだね」
「手伝うよ」
「当然でしょ、当てにしてたよ」
「ちゃっかりしてるな」二人顔を見合わせ笑い合い暫し雑談した後
「それにしても、父さんも思い切った決断をしたな」
「兄さんちょっと待って、そういうデリケートな話をする前にっと」ボクは、音漏れしないよう素早く結界を張り「もう大丈夫」と伝えニッと笑う。
ミアをアジョンから遠ざけたのは、やはりブラコンが一番の原因だろうなと二人の口から乾いた笑いが漏れ出た。
でもこれを機に上手く兄離れができればいいな、好きな男が出来れば万々歳だ!父は、泣くかもだけどなんて笑い他愛ない会話が続く。
そんな中、ボクと冒険したいが為に予定より3年長く冒険者を続けたことで、シシリーを待たせてしまい申し訳ないと、胸の内を真剣な表情で語り出した。
やはり兄は、オルムとミト二人の結婚で少し焦りを感じていたようだ。
そんな話を聞くとボクもちょっぴり責任感じちゃうよな、ちょっぴりだけど。
―side トーマス&ソフィア―
「あなた、ミアの事で相談があるんだけど」
「ん?」
「ほら従魔のリリとララの事もあるし寮生活は、どうかと思うのよね」
「そうだった失念していたよ」
その後、レイチェルの事も含め夫婦で色々話し合った結果。
レカナ街の雰囲気やレカナ専修学園の様子を一度確認しようというところに話が落ち着いた。
翌朝 食事の席にて父に
「私は、仕事でいけないが、ソフィアとミアそれにレイチェルの護衛を激昂とクレッセントに依頼したい、よろしく頼むよ」とお願い(ごり押し)されました。
今ある依頼の調整と仲間との相談も必要なので、その場での即答は、避けたけどね(主にセルジュが)
幸か不幸かクレッセントの予定は、今のところ空白だけど激昂は、そうもいかないんだろうな。
お時間を割いていただき 有難うございます。