123
激昂部屋からの帰りしなに兄から「父さんと話すなら一緒に行くよ。話し合いの結果次第で、激昂の今後にもかかわる事だしね」と声をかけられた。
まぁ クランの事も土地購入が前提条件だし、その事についてクレッセントが今から話し合いをしても、机上の空論になりかねない。
一先ずそこをスッキリさせないと、埒が明かないし・・・
思い立ったが吉日というノリで、そのまま兄と二人で父の書斎へGO!
そして、ニールと幽霊屋敷の件をボクが、激昂&クレッセントとのランチ会での会話をセルジュが説明した。
最後まで口を挟む事無く厳しい表情で腕組みをし、話を聞き終えた父トーマスの反応は「ハァー」と脱力しつつ机に突っ伏した(さっきまでの威厳ドコー?)
俄かにガバッと顔を上げたトーマスが今度は、こめかみに指をあておだやかな瞳で、困った息子たちに視線を投げかけ考えを巡らせる。
そんな父の様子を見守るボクは、それほどヤバイ発言だったのかと畏縮したよ。
一時の沈黙は「暫定的な話しと決定事項を聞いてほしい」と告げた、トーマスの言葉で霧散した。
トーマス・モリャティ商会(通称トーマス商会)は、兄弟が商いを継ぐ意思を示した時点で、自分の名を外しモリャティ商会へ変更予定であり、商業ギルドへ申請済みだと静かに語った。
対外的にアピールする時期は、来年の春頃になるそうだ。
そのトーマス商会の顧客は、創業以来 主に庶民だったが、最近マットの普及がお貴族様にまで及び度々使いの者との小さな諍いが起きるようになってしまったので、ムバクーヘン街にお貴族様専用とまでいかないが、主にお貴族様用窓口の出店をする事にしたそうだ。
(まだこれという店舗に出会えてないが、絶賛物件物色中のよう)
「アジョンをセルジュに継がせ、ムバクーヘンをミアに任せようと考えていたんだ。だからノアが、その土地を買い取りたいのなら商会で買うことにしたらどうだろう。どのみち未成年の君が不動産売買を手掛ける事は、無理難題だしね」
「それは、将来的にボクがその土地を受け継ぐという意味ですか?」
「そう理解してくれていいよ」
思わぬ棚ぼたで、ボクの不労所得の使い道があえなく途絶えてしまった。
「それから、今後の商会や家族の事を話し合いたいと思うんだが、二人とも今夜時間あるか?」
「はい、大丈夫です」「ボクも」
「じゃ今夜また話し合おう。早速土地購入の手配を進めるよ」
「ありがとう父さん」
兄とボクは、土地購入の許可が下りた知らせを持って、それぞれの部屋へ戻った。
商業ギルドとトーマス商会の交渉次第だが、まぁ大丈夫だろう。
「となると、除霊の依頼も取り下げかな?」
「そうなるだろうね」
「でもノアとスミスがいるし、オルムさんも手伝ってくれるんじゃ?余裕じゃね?」
「また俺達の出番ねーじゃん!」
「ですよねー」
ラグとトリルが肩をすぼめ不貞腐れたふりをして笑いを誘った。
お時間いただき ありがとうございました。