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ニールから「ギルドの外で話がしたいんだ」と誘われ、ギルドとトーマス商会の間の工房通りに立つ。
この通りは、70年くらい前に王都から流れ着いた腕のいいドワーフの鍛冶師が鍛冶場を開き、その弟子達やわざわざ遠くから注文しに来る客などで、そこそこ賑わっている。
その通りを少し進んだ屋敷の前で立ち止まり、依頼書を懐から取り出しニールが振り返った。
「兄ちゃんここなんだけど、半年前からこの屋敷の除霊依頼が貼られているんだ」
「そんな依頼あったか?」
「いや、憶えが無いな」
「指名ばかりこなしていたからじゃね?」
「そういやぁ、ここんところギルドの壁見てないわ」
「で・・・なんでニール、お前がそんな事をわざわざ俺達に話すわけ?」
トリルがちろっとニールに視線を向けると、ぴくっと小さな肩が跳ね上がる。
「トリルからかい過ぎ、ニール怖がらないでいいぞ」
「うんうん、ボク達別に怒ってないからね」
「もうトリル言い方!」
子犬のようにシュンとしたニールの後ろに控える友人達も、少し気まずそうな雰囲気を醸している。
これは、何かあったなと思い
5人を宥めすかし、ぽつりぽつり零れた言葉を拾い集め要約すると、外から移住した冒険者がクレッセントに対し聞くに堪えない嘲りを吹聴していた場に遭遇し、兄や慕う先輩達を馬鹿にされたとその場にいた数人の冒険者やひよこ達が抗議した。
「スピード出世のCランク様がいらっしゃる割に、こんな案件が半年もほったらかしですか?ハァァ大丈夫なんですか?ここのギルドも大した事なさそうですねぇ~」
なんて煽られ売り言葉に買い言葉、その場の流れでクレッセントの代理っぽい様相になり「そこまで言うなら・・・」と、つい喧嘩を買ってしまったそうだ。
「兄ちゃん ごめん」
「ニールだけが悪いんじゃないんです」
「他にもたくさんいたけど、兄弟がいるから話しやすいだろってニールに押し付けて」
「そうだよな、あいつら・・・」
「逃げやがって・・・」
すかさずラグが、パンと両手を打ち合わせ「あーハイハイ、これ以上問題大きくするな」と窘める。
「取り合えずその依頼書は、預かるってことでいいか?」
「ラグ 弟がすまん」
「ニールだけのせいじゃないでしょ?」
「だな、寧ろトリルの弟だから押し付けられて迷惑かけてるじゃん?」
「え、そう言う事になるのか?すまんニール」
「ぶ」「ぶぶぶ」「ぶほぅー」
「トリルかわいい」
「トリル単純」
「トリル アフォ」
「おまいら、ヒデー」