106 と ある日のサザン
サザンは、今困り果てている。
巷で人気のシャレた店に居るにもかかわらず、目の前のノエルの表情は不満気だ。
原因は多分 昨日のオルムとミトの爆弾発言だろうな(ハァ~)
セルジュは後継ぎなので、早くから結婚を視野に入れる事は予想していたが、まさかオルムまで…
サザンだって気持ちが無い訳じゃ無い、だが幼い弟や妹たちの事があるので簡単に決断できない事情がある。
それが分かっているので、ノエルも敢えて何も口にしないのだろう。
サザンは、二度父を失っている。
一度目は、記憶もおぼつかない幼き頃…
数年後 母が再婚して行商を生業としている父に嫁ぎアジョンへ越して来た。
引っ越した当初は、まだ5歳で新しい父親にもすぐ慣れ安定した暮らしを送っていた。
そして、8歳の頃妹が産まれ続いて弟を授かり家族が増えて幸せだったが…
ある日 突然旅先から父の訃報が届いた。
それは、サザンが冒険者見習いになった年の出来事だった。
二度も夫を失い暫く悲しみに明け暮れていた母だが、その後 何とか立ち直り幼い子を抱えながらも懸命に働き育て、もちろんサザンも少ないながらも稼いで協力していた。
今では、立派に大黒柱の役目をはたしている。
いまだ10歳に満たない妹弟の面倒を見なくてはいけない。
この環境で結婚の二文字は、重すぎる。
サザンは、苦悩していた。
彼女が期待しているであろう言葉を掛ける事が出来ない。
ふいにノエルが溜息を吐いて「あ~やんなっちゃう。まぁミトは、私より3つ上の19歳だし年齢的に頃合いなのかもしれないわね。私はまだ先で良いわよ!」
何かが吹っ切れたように清々しい表情で笑った。
「そうか 悪いな」
「全然!だって私まだ15よ。サザンより下なのよ。ミトは今年19になるんだもん あんまり待たせると行き遅れの噂が立っちゃうわ」
「言い方!人聞き悪いな。ノエルだって今年16だろ、すぐだぞ」
「大丈夫 でしょ?」悪戯っぽい眼差しでサザンの目を覗き込みウィンクした。
それを受け止め こいつには、かなわないなぁ~と実感するサザンであった。
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