105 と ある日のオルム
アジョンから少し離れた外塀の木陰で座り込みミトを待つ。
「なぁどう思う?セルジュも婚約したしそろそろボクも申し込むべきかなぁ」
三匹のウルフは、誠実な眼差しでじっとオルムを見つめていた。
クレッセントのメンバーに従魔との接し方を質問してから、こうして仕事以外でも事あるごとに話しかけている。
「そうか お前達もそう思うか?むぅ違うのか? ん~だよなぁ 誰かが婚約したから僕もなんて勢いで申し込んでもミトに対して失礼か」
あいつ等と比べて、会話しているような自然な受け答えになって無いな、まだまだだな。
それでも少し前よりは、マシになっている気がするけど…
「どうなんだ?ボクがそう思ってるだけかな」そう語りかけた時、背後で草を踏みしめる微かな音がしたので振り返るとくすくす笑う笑顔のミトが立っていた。
「待った?でもオルムには、ウルフがいるから大丈夫そうね」
少し拗ねた口ぶりのミトも可愛いと思うが、ウルフに嫉妬されてもねぇと苦笑い。
今でこそこの程度だが、アイム達と会話を実践しだした頃は、大変だった。
大雑把に纏めるとやきもちの理由は、ウルフにかまけてないでもっと私を見て欲しい!みたいな感じだったのでその時は、一旦両手を上げて降参した。
それでも、日を置いて命の危険と意思疎通の大切さを丁寧に説明し理解を得たので今では、こうして軽口を叩く程度になった。
輝く笑顔で「話って何?」と聞かれハッとした、そうだ何を迷ってたんだと。
セルジュなんか関係ない ミトのこの笑顔が好きなんだ。
僕とは対照的で、物事をハッキリさせるミトが好きだ。
ウルフにやきもちを焼く可愛いミトが好きだ。
じっと見詰めたまま動かない僕に居心地が悪くなったのか、ミトがソワソワしだした。
「ミト 結婚しよう」唐突な告白にミトがビクッと震え固まる。
暫く固まった後 理解が追い付いたんだろう。
小さな声で「はい」と返事を返し泣きじゃくっていた。
僕は、ミトの肩を優しく抱き寄せ耳元でそっと「幸せになろう」と囁いた。
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