104 と ある日の激昂
「いやぁ~リーがなかなか戻らなくて焦ったけど、ギリギリ間に合ってよかったな」
「本当だぜ ヒヤヒヤさせやがって」
「悪い悪い 湧き水って言うからさチョロチョロ岩から染み出ているとばかり、まさか雪解け水の影響であんな状態だなんて思わなかったぜ」
鑑定のスキルを持っていないスターリーは、多めにアイテムを準備していたが、手あたり次第調べ回り心許なくなった頃 最後にダメもとで鑑定した場所が該当したのだった。
「レカナの森って名前だけど、あそこは実質山脈だから探すの大変だっただろう?よく間に合わせたと思うよ」
「セルジュ お前だけだ!」
仲間からの冷たい応酬の中 一人だけ労わりの言葉をかけるセルジュに対し、変なスイッチが入ったようで、セルジュの両肩にガシッと両手を乗せ大袈裟に天を仰ぐ。
激昂の面々は、左下から右上に3本の青い放物線が描かれた金プレートを眺め 満面の笑みをたたえている。
D Eの青銅 F Gの銅のプレートは同じものだが、BとCはハッキリ区別されていた。
「そういえばオルムよく間に合ったな、往復6日掛かるのに」
「アイム ノウム クルムに無理させたからね、マメに小休止を入れながら三匹を乗り継ぎ ぶっ通しで走って一日半でババールへ到着した時は、僕だけヘロヘロだったけどさ。サザンこそ樹海の中からネクタ草を探すの大変だったろ、どうやって見つけたんだ?」
「情報が無いかアセノスのギルドへ顔を出したら、たまたま知ってる人がいてさ。ラッキーだったよ」
「えええええ 俺なんか森の中をあてもなく彷徨い続けたのにクソー」
サザンは、リーの嘆きに肩を竦めスルーしセルジュに向き合った。
「セルジュ 山越えご苦労様」
「ん~でも、そんなに高くない山だったし防寒対策もしっかりして行ったから、それほど苦じゃ無かったよ。ただ冬眠から目覚めたばかりの岩土フログがいて、それの捕獲に少し手間取ったかな」
「臨時収入じゃないか良かったな、フログの肉は高級食材だし毒袋も高く売れるぞ」
「どれくらいいた?正確な場所憶えてるなら来年も捕獲しに行こうぜ」
岩土フログの生態は変わっていて、土に埋まっている岩の隙間に卵を数個産み付け、そこで一年かけて成長し 春になり土から這い出す前にまた新たに卵を産み付けるので、正確な時間と位置さえわかれば、うま味のある狩り場になりうる。
ただし毒があるので素手で捕まえるのは危険だが、今回野営の荷の中に火ばさみがあった事が幸いした。
「とにかく みんな怪我無く無事に昇格出来て良かったよ お疲れ様。キリが良いので、四月の終わりまで今日から一週間休暇にしよう。慣れない一人の野営とか疲れが溜まっているだろうから」
「休みは嬉しいけど、お前等と違って俺は彼女もいないし 結局溜まり場かギルドでダラダラ過ごす気がするわ」
「いぁ ずっと彼女と一緒って事も無いし、彼女だって仕事あるんだから」
そう慰めたが「ハイハイ ソウデスカ」と気の無い返事を返すリーだった。
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