1 異世界生活は、突然に・・・。
ゆらゆらとぬるま湯に漂う感覚の中、薄目を開けると淡い光の中にいた。
意識が徐々に覚醒するにつれ私は、ゆっくり起き上がり周りを見渡す。
「どこ?」
辺りは、白一色で見知らぬ老人が一人佇んでいた。
「気分は、どうじゃ?」
老人は、優しげな瞳で私の目をのぞき込む。
「あ…大丈夫です。寧ろ体が軽いくらいで…あのここは、どこなんですか?それに貴方は、誰なんです?」
「ここは、天界と異界の狭間じゃ。そしてわしは、神じゃ」
長い白銀の髪と髭、ダブダブの白い衣装と左手には、武骨な木の杖をついている。
テンプレ老人の姿…
ん~?私は、死んだのか…
突然の事で少しパニックに陥り理解が追い付かない。
「そうじゃのぅ~寝ている間に自然死したから、混乱しても仕方がないのぅ~。ゆっくり時間をかけて気持を鎮めれば良い」
私の心の葛藤を読み取ったような気遣い、本当に神様なんだ!
「あの…自然死って?どんな理由だったのでしょ」
「あぁ~あれじゃ。階段を踏み外した時に捻挫じゃと思って放置しておったろ?じゃが骨にヒビが入っておって血栓が出来ていてな、それが寝ている間に脳に飛んで詰まったんじゃよ」
「えええぇぇぇそんな理由で!」
なんて間抜けなんだ。
私は、膝が崩れ落ち手をついて項垂れた。
「まぁ~そう言う事だ。ところで物は相談じゃが、転生してみないか?」
え?何その軽い感じ。ついさっきゆっくり考えてって言ったよね?その時間端折ってるよ?と思ったが、今更どうこう出来る訳じゃ無い。
肉親も特別親しい友人も居ない。
ほぼ天涯孤独の身だったので未練もなかった。
これからの事を選択できるのならと思いいたり、気になった事を質問した。
「あの、転生しないとどうなるんですか?」
「あぁ光の輪に入り、また地球の輪廻に戻るだけじゃ。何に生まれ変わるかは未定じゃな、転生を選べば人になれるんじゃがのぅ~異世界は、魔法もあるし色々便宜を図ってやる事もできるんじゃが、どうじゃ?」
露骨な異世界押し!でも…もしGに生まれ変わったりしたら地獄だぁ。
それに魔法とか魅力的!
「転生でお願いします!」
「ほぅ~そうかそうか良かった。それじゃぁどんな能力を授けるかのぅ~」
「人生を遣り直すなら色々やって楽しみたい。だから4大魔法に空間、錬金、鑑定ついでに魔獣の使役 とにかく全部欲しいです。出来ますか?」
「出来ない事も無いがのぅ~う~ん分かった、大サービスじゃ!だが気を付けるんじゃぞ?能力値が高いと色々な面倒事が、起こりうる可能性があるからのぅ~」
「はい!ありがとうございます」
「家柄や性別は、どうするかのぅ?」
「性別は男で次男くらいがいいかな…普通の家庭がいいな。豊かでも身分が高すぎると色々大変そうなんで、優しい両親がいて貧乏じゃ無ければ上出来です」
「良かろぅ………………授けたぞ。後それだけ色々魔法を楽しみたいのなら、多くの魔力が必要じゃのぅ。ある程度は備えさせるが、自らの努力も必要じゃて。時間は、たっぷりある。赤子のうちから魔力操作の鍛錬をしておくと良い」
「魔力操作?」
「お臍の辺りからゆっくり体の中を巡らすんじゃ。では、異世界を存分に楽しむがよい」
え?何?もっと詳しく…と聞きかけたが、その言葉を最後に私の体の周りが強い光に包まれ……
そして 徐々に意識が遠のいた。
「オギャーオンギャー!」
隣から聞こえるけたたましい泣き声。
ボクじゃない?誰だ…
「アラ~お兄ちゃんは静かなのに、妹のほうは元気ね~」
ふくよかな初老のおばさんが、優しい顔で覗き込んでいる。
ボク達のベットを挟んで、20代半ば位の男性が嬉しそうに佇んでいた。
その男性の隣に、小さな男の子もいる。
「セルジュ弟と妹がいっぺんに増えたね、どうだい?」
「可愛いねぇ~父様。僕いっぱい遊ぶんだ!」
父様と呼ばれた男性は、クシャっと笑をこぼしセルジュの頭を撫でた。
気が付けば、隣で泣いていた妹と思われる赤子は、泣き疲れたのか鼻をグズグズいわせながら寝ていた。
「ふぅ、やっと静かになったな」
「このままお部屋を暗くしていれば暫くは、大丈夫でしょう」
「ソフィアは、どうしている?」
「奥様は、お部屋でお休みですがお目覚めだと思いますわ」
「産後3日目だ、そろそろ双子の名前を決めるべきだな。セルジュ母様の様子を一緒に見に行くかい?」
「はい!父様」
3人が退出して静かになった。
ボクは、産まれて暫く意識が無かったようだ。
それよりも問題は、双子の妹の存在だな。
纏わり付かれたら堪ったもんじゃないな、今後の対策が必要かな。
そういえば、神様が別れ際に魔力量の話をしていたな…確かお臍がどうとか。
早速お臍の辺りに意識を集中してみるが、ん~~~~~反応が無い!
最初は、こんなもんかと思いながらも何度も繰り返すうちに、いつの間にか眠ってしまう。
生後3日の赤ちゃんだもん当然だよね。
あれから毎日、寝ておっぱい呑んであやされての繰り返し。
運動も手足をバタつかせる位しか出来ない。
あまりにも退屈なので、魔力の練習を毎日真面目に繰り返していたら、10日目にやっとジンワリとしたものが、お臍から指先や爪先に巡るようになっていた。
ジンワリと言ったけど、決してオネショじゃない!
名前も無事に決まったようでボクは、ノア。
妹は、ミアと呼ばれた。(安易だ…)
家は、商家でそこそこ裕福らしい。(うん!良かった)
父は、トーマス。
少し癖っ気のあるゴールドの髪に薄緑の瞳、整った顔立ちでイケメンしかも背も高い。
ここまで揃っても、温厚な性格のおかげで嫌みったらしさが無い。
母ソフィア。
髪は、絹のようなプラチナシルバーと慈愛に満ちた青く大きな瞳が印象的、少し垂れ目なので若く見られるらしい。
性格は、意外とサバサバしている。ギャップ萌え系?
兄のセルジュ。
今まで3年間一人っ子だったのでやんちゃではあるが、思いやりのある性格らしい。
見た目は、父譲りで将来有望だろう。
そして僕とミア。
大人達の反応を見る限り、母の容姿に似ているようだ。
なんせまだ「アァー」「ウゥー」としか言葉も発しないので、ミアの性格は把握できない。
今後は、どうやってうまくセルジュに押し付けようかと思案中。
商家なので使用人も何人かいるようだ。
意識が覚醒した時にいた初老でふくよかなおばさんの名は、デクシラ。
ボク達の子守のようだ、双子だしね頼れる人が居た方が良いよね。
まだ他にも数名いるけど、ボクの行動範囲が狭いのでハッキリしない。
そして、今日も魔力操作の練習をコッソリ続けながら眠りに落ちるのだ。
動けるようになるまで、あと半年位かかるのかな?早くハイハイしたい。
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