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アルベルト1−2

アランの剣術大会の時期を修正しました。

 8歳上のアレクシス兄様は、頭脳明晰でとても賢い。

 学園に在籍していた時は、創立以来初めて入学試験から卒業まで全ての試験で満点を取り、学園の歴史を塗り替えた。

 入学して早々、最初のテストで一問外した僕とは大違いだ。

 長男だからスタンフォード侯爵家を継がなければならないけれど、王宮やあらゆる研究機関からどうにか来てくれないかと懇願に近い打診があったそうだ。

 まずは領地の運営が先だと断ったらしい。

 けれど、しばらくしたら宰相閣下の元で補佐をすることになっている。

 将来的には、宰相の地位に就くのだろう。

 髪も瞳も僕と同じ色で、肩より少し上の髪と右側だけ伸ばした前髪、トレードマークの眼鏡が知的だと女性の方々に人気らしい。

 僕は特に特徴がなくてつまらないから、せめて髪だけは伸ばしたりしている。


 4歳上のアラン兄様は、剣術にしてもダンスにしても、とにかく運動という運動に才能がある。

 学園の剣術大会では、第2学年の時に驚異の総試合時間30秒で優勝した。つまり瞬殺だ。

 第3学年が終わる頃にはてっきり聖アーガスト学園を辞めて騎士訓練学校に行くのかと思ったけど、最早訓練学校に行く必要がないと騎士団への即入団が決まっていた。

 しかし学園は最後まで卒業したいと、今は法学科に通っている。

 そんなアラン兄様に、僕はこれまで剣術でまだ3本しか勝てたことがない。

 筋肉もかなりしっかり付いていて、二の腕なんて僕の3倍はありそうだ。

 僕もトレーニングしてみたけれど、全然筋肉が付かなかった。

 それに、アラン兄様は第一王子殿下ととても仲が良い。

 王子様と友だちなんて流石だ。

 僕も第二王子殿下とよく話すけれど、ただの同僚に近い。

 第二王子殿下が気さくな方だから、よく話してくださるだけだ。

 兄様はとても明るくて、自然と周りに人が集まってくる。

 アラン兄様も僕と色味は同じなのに、短く刈り上げた髪と筋肉で、男らしいと女の人にとても人気がある。



 僕は2人と血が繋がっていないのだから当然だけど、それでもこの2人とは雲泥の差だ。


 こんなつまらない僕には、リナリアの様な子は勿体ない。

 だから、この気持ちは言葉にしたことはない。

 きっと困らせてしまうから。


 サマンサ・キャスケル伯爵令嬢(僕はキャスケル先輩と呼んでいる)は生徒会で会計をやっていて、アラン兄様の手伝いで知り合った。

 リナリアのことを話したら、親身になって相談に乗ってくれた親切な先輩だ。

 キャスケル先輩は見事な栗色のストレートヘアだ。

 リナリアは髪をすごく気にしているから、その手入れの秘訣を聞いていた。

 僕もストレートだけれど特に手入れとかはないし…女性なら何かあるかと思って。


 僕はリナリアの髪が好きなのに、それを卑下されると悲しい気持ちになる。

 けれど僕が好きだったとしてもリナリアには関係ないだろうし、少しでも自信を持ってもらいたくて。

 それに自信がついたら、少しくらいあの気持ち良さそうな髪を触らせてもらえるかも…なんて下心もある。

 こんなことリナリアに知られたら生きていけない。


 あの日は、キャスケル先輩の秘伝のヘアオイルレシピを教えてもらっていたのだ。

 わざわざキャスケル伯爵家からレシピに使う薬草を侍女に届けさせてくれて、それを一緒に裏門に取りに行った。

 薬草を受け取りながら使用方法を聞いていて、たぶんそこをリナリアに見られたのだろう。


 勝手にリナリアの髪のことを相談していたなんて、気持ち悪がられるかなと思って、言えなかった。

 下心も知られたくないし…。


 どうしてリナリアが泣き出したのか、どうして婚約破棄なんて言い出したのか、さっぱり分からない。

 僕がリナリア以外の女性と居るのが珍しかったから、もしかして嫉妬…?なんて。

 そんな訳ない。

 こんな僕が女の人にモテる訳はないし、リナリアだってそう思っているだろう。

 それに僕に嫉妬してくれるような気持ちは何もないはずだから。

 でもそうしたら何でなんだろう?

 全く分からない。



「誤解があったのならよく話し合いなさい」というアレク兄様に、気のない返事をした僕は、その時気付いていなかった。


 リナリアに、完璧に誤解されているということに。

今日は挿話をもう1話アップする予定です。

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