表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/32

番外編 アラン1

アラン視点のセシリアとの話です。

「なあレオン。プロポーズするにはやはり薔薇が必要か?」

「突っ込みどころが多すぎて何を言うか迷うが、とりあえず何故今なのかを聞きたいな」



 俺はレオンの膝と背中を抱えた状態、所謂「お姫様抱っこ」と呼ばれる状態でレオンを抱えながら、気になることを聞いてみた。



 何故そのような状態かと言うと、発端はレオンの婚約者であるアメリア嬢の一言だった。


 アメリア嬢が先日、レオンとの恒例のお茶会の際に「王宮の中庭に咲くクリスマスローズが見たい」と言ったのだ。

 レオンはアメリア嬢を溺愛している。

 アメリア嬢に滅多なものは見せられないと、わざわざ自ら中庭に赴き、クリスマスローズの咲きぶりをチェックしていたのだ。

 季節は真冬。

 明け方に小雨がぱらつき、敷石に薄い氷が張っていた。

 そんな中、レオンは寒さを忘れてクリスマスローズに夢中になり、チェックが完了した途端に寒さを感じたようだ。

 付き合わせた庭師と別れ、小走りで建物内に入ろうとした。

 その瞬間、見事にツルッと滑ったのである。

 すかさず俺が抱き止め、このような状態になってしまったのだ。



「いや、この抱き止め方は結婚式とかでやるやつだな、と思ったら、ふとそう思ってな」

「うん、聞いたところで意味は分からなかったな。とりあえず下ろしてくれ。感謝する」


 そしてレオンを下ろし、とにかく寒いから中へ行こうというレオンの肩に上着をかけながら、レオンの執務室へと向かう。


「お前な、あの状況でああいうことを言うなよ!私なら鳥肌が立つだけで済むが、女性には絶対にするなよ?ああいうのが勘違いをさせる原因だからな!」


 執務室に戻り、レオンは暖炉の前に屈んで手を擦り合わせながらそう言う。

 俺はいまいち納得できないものの「わかった」と返し、扉の前に立つ。

 話はするが、護衛の任務中だ。

 そんな俺にレオンは不服そうに「全く。分かってるのかお前は…。しかし誰もいない時で本当に良かった」とぶつぶつ言っている。

 しばらくして暖まったのか、貸していた上着を俺に返しながら、レオンは言った。


「で、何故いきなりプロポーズの話になんてなったんだ?アルベルトに聞かれたのか?」

「いや、今度プロポーズしようと思ってな。どんな風にするのがいいかと」

「はあ!?お前が!?プロポーズ!!?誰に!!?」

「リナリア嬢の友人のシプリー嬢だ」

「初耳!!!」


 レオンが興奮しながら叫ぶ。

 少々興奮しすぎて血管が心配になったので、メイドを呼び茶を用意させる。

 レオンに茶を飲ませ、少し落ち着いた所で話し始める。



「前々から、リナリア嬢の面倒を見ている姿が素敵だなと思っていたんだ。俺に対しても普通に話してくれるし、よく女性に感じるこう、ねっとりした視線も感じない。

 そうしたらあの青い瞳をもっと近くで見てみたいという気持ちが湧いてきてな。こんなことは初めてだったから、きっとこれが恋だと思うんだ」

「うん、なるほど。お前にしては真っ当じゃないか。

 シプリー子爵家は、目立った功績もないが長きに渡り領地を安定させているところだな。確か小麦の栽培もそこそこ行っていたか。子爵位ではあるが、まあ悪くない。

 そういえばシプリー子爵家は既に長女が入婿を取っているから、アランが子爵位を継ぐ訳ではない訳か。侯爵にはもう話したのか?」

「ああ。シプリー家には父から打診をしてもらうことになっている。スタンフォードの持つ爵位の内1つを譲り受けて、シプリー嬢に嫁いでもらうことになると思う。領地は持たないつもりだ。俺に領地経営は向かないだろう。ただ、そこはシプリー嬢に相談だな」

「な、なんだか万全すぎて逆に不安になるな。まあ、それだけ本気ということか?」

「まあ、そうだな」


 俺は顔面に熱が集まるのを感じる。

 自分でも、初めての恋に勝手が分からず先走っている感も認識している。

 けれど、彼女ももう年頃だ。

 いつ婚約者が決まるとも限らない。


「あとはシプリー嬢の気持ち次第だな。シプリー家としては断るべくもない。

 アランもシプリー嬢の気持ちを無視するのは不本意だろう?」



 レオンのその言葉を聞いた途端、俺は崩れ落ちた。

 そうなのだ。

 彼女の気持ちは分からない。

 というより、ほぼ何とも思われていないのではないだろうか。


 俺は四つん這いの状態で頭を抱え、不安に押し潰されそうになる。

 あわわわわというような意味のない言葉を思わず発してしまう。


「ええぇ…なに、お前って恋をするとそんな感じ…?」


 レオンが困惑しながら俺を見ているのを感じる。

 確かに自分でもこんなに弱気になるとは思わなかった。

 しかし、最早俺の伴侶はシプリー嬢しか考えられないのだ。

 俺は勢いよくガバッと起き上がると、レオンの肩を掴んで言った。


「だからこそ!プロポーズを成功させたいんだ!何かいい案はないかレオン!」

「あ、ああ分かった考えるから!考えるから離せアラン!お前に本気で掴まれたら肩が砕けるだろう!」


 そしてレオンといくつかの案を出し合い、ああでもないこうでもないと練りに練った。

 最終的には「私!王太子!忙しいの!四の五の言わずにこれで行け!」とプラン7を押し付けられた。

 確かに、考えていても仕方ない。

 俺はプラン7を実行に移すことにした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ