3 初めての浮気
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9月に入学して半年、まだまだ風が冷たいけれど、日差しは暖かくなってきた。
私はその日、仲良くなったシプリー子爵家のセシリアと一緒に中庭のベンチに座っていた。
セシリアとは席が隣同士で、算術の先生に当てられて絶望しているところを助けてもらったことから仲良くなった。
もう少しで適当に答えは3ですって言うところだった。
答えは偶数だったらしい。算術の授業で数字以外が答えなんて罠である。
うん、算術は苦手だ。
セシリアは金に近い茶髪で、すごくすごく羨ましいことにとっても綺麗なストレートヘアだ。そして綺麗な蒼い瞳で、成績もすごく優秀。
私とは似ても似つかないけれど、不思議と馬があった。
セシリアに言わせると、私は放っておけないらしい。
セシリアとは基本いつも一緒だ。
最初はアルベルトに恐縮していたけれど、段々と慣れて教室では3人で居ることも多い。
リナリアとセシリアでリアリアシスターズ☆と呼ぶのはどうかと提案したのだけれど、「絶対嫌、死んでも嫌、生まれ変わっても嫌」と三段活用で言われたので、仕方なく引き下がった。
けどまだ諦めていない。
さて、そんなセシリアと何故中庭のベンチにいるかと言うと、私が作ってきたランチを一緒に食べるためだ。
「んーやっぱりリナリアの作った料理は美味しい!神様も一つは取り柄を作るものねー」
「ふふふ、私もそう思う!」
そう、実は私は料理は得意中の得意だ。
むしろ料理に全ての才能が全振りしたと言って良い。
もし私がシーブルック伯爵家の一人娘じゃなければ、絶対料理人になっていた。
貴族の娘が料理を出来てもね…という突っ込みは耳に入らない仕様になっている。
食後に、焼いてきたキャラメルとくるみのパウンドケーキを頂く。
うん、我ながら店を出せるレベルだ。
「でも本当に私が頂いていいのかしら。
これ、スタンフォード様の為に作ってきたのでしょう?」
アルベルトとは、いつも一緒に昼食を食べている。
私の作ってきたランチを天使スマイルで美味しいと言って、全部食べてくれる。
やはりそのうち召されるかもしれない。
けれど、ここ最近は忙しいのかなかなか一緒に食べられない。
アルベルトの2番目のお兄様、アラン様が第一王子殿下と同い年で仲が良く、その関係でアルベルトは幼い頃から王子殿下方と仲良くしていた。
第一王子殿下は今17才。それより3つ下、そして私たちより1つ上に第二王子殿下がいらっしゃる。
現在第5学年の第一王子殿下はこの学園の生徒会長をされており、アラン様も書記として役員になっている。
それ故、第二王子殿下とアルベルトはお兄様たちにこき使…いや頼まれて、まだ基本課程ながら生徒会のお手伝いをしているのだ。
最近は、もうすぐ行われる春のダンスパーティーに向けて、生徒会は大忙しだ。
ダンスパーティーは第2学年からの参加なので、私たちは特に何もない。
だがアルベルトはその手伝いで、なかなか昼食をゆっくり食べる時間がないのだ。
けれど一応、今日はもしかしたらと思いながら毎日ランチを作ってきている。
2人分を1人では食べられないので、セシリアと一緒に食べる日々だ。
もちろん女子会も楽しいけどね。
でも…やっぱりアルベルトが居ないのは寂しい。
「生徒会のお手伝いで忙しいなら仕方ないもの。
残して捨ててしまうのは勿体無いし、むしろ助かるわ。リアリアシスターズで食べるのも楽しいし」
「やめて」
すると、2人に強烈な北風が吹き付けてきた。
「…寒いわね」
「うん、これは寒いわ」
日差しが暖かくなってきて〜なんてちょっと調子に乗っていた。
めちゃめちゃ寒い。
私とセシリアはいそいそとランチを片付けて校舎内に戻ろうとした。
すると、見慣れている一括りにした金髪が見えた気がした。
私たちが使っていた中庭のベンチは、業者や使用人が使う業務用の裏門の近くにあり、校舎の角からちらりとそちらが見えるのだ。
え?と思いよく見ると、裏門の前でアルベルトと1人の女性が話していた。
たぶん上級生だ。
まだまだお子様体型な私と違い、女性らしい綺麗な人。
しかも美しいストレートヘア。
2人はとても親密そうだ。
そして…アルベルトの影になってよく見えないけれど、多分手を繋いでいる。
私はあまりの衝撃に固まってしまった。
生徒会の仕事ではなかったの?
そんなところで何をしてるの?
2人はどういう関係?
呆然とした私の腕をセシリアが引き、現実に戻された。
「リナリア!大丈夫?
あれ、スタンフォード様…?あの女性って…確か生徒会の会計をしている先輩ね。
ねえ、リナリア、スタンフォード様に事情を聞かなくてもいいの?」
「う、うん…」
私は迷ったけど、きっと何か事情があるのだろうと自分で納得し、今度アルベルトに会ったときに話を聞くことにした。
今は混乱していて上手く話せなさそうだったから。
「行こう、セシリア」
「え、ええ…」
私はセシリアを伴い、アルベルトたちに背を向けて立ち去った。