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エピローグ

 その後、キャンベル辺境伯家からスタンフォード侯爵家とシーブルック伯爵家に対し正式な謝罪が送られてきた。

「娘を虚仮にするとは…!」と年末年始を我が家で過ごすために帰ってきていたお父様が、棍棒を持ってキャンベル家に押しかけそうになっているのを、お母様が頭を叩いて止めていた。

 お母様はよくお父様の文句を言っているけれど、何だかんだ仲が良いのだこの人たちは。


 娘の一方的な勘違いであること、キャンベル辺境伯家には何の意図もないこと。

 ご迷惑をおかけして申し訳ない、と、大変腰が低く丁寧な謝罪だった。

 なのでこちらとしても「まぁ学園の中の話ですから」と水に流した。

 と言ってもお詫びに、キャンベル辺境伯領で採れるリンゴを安く仕入れるルートを取り付けていた。

 見た目に反してなかなかに強かなお父様だった。

 これでまたタルトタタンが作れる。


 後に、キャンベルさんは元々あった伯爵家の子息との婚約が整った、と風の噂に聞いた。

 その子息は、終業式で針の筵の中1人立つキャンベルさんを見て、支えてあげたいと思ったらしい。

 どこがどんな人の琴線に触れるか、本当に分からないものね。

 これから色々大変だと思うけれど、彼女には幸せになってほしいと思う。







 冬休み。

 アルベルトとはたくさん色んなことをした。

 舞台を見に行ったり、湖にスケートに行ったり、あ、そうそう。

 しばらく会えていなかったジャックにも会って、“ネギにくスティック”改verを献上した。

 アルベルトはこのネズミを柔らかいタワシだと思っていたみたいだけど、ネズミだと伝えると「わあ!リナリアはいつも予想の付かないものを作ってくれるね!だからいつも楽しいよ!」と言ってくれた。

 実はいまいち褒められた感じがしないけれど、アルベルトが笑ってくれたから、それで良いのだ。


 そういえば、私が習得した“たろいもスマイル”はどうやら眠そうな顔に見えているらしく、件の「相手に良い印象を与える35の法則」の作者に抗議の手紙を送ったりもした。

 受取拒否で手紙が返ってきた。

 解せぬ。




 それから、とんでもなくビックリすることがあった。

 なんと、アラン様がセシリアにプロポーズしたのだ!

 私に対して面倒見よく付き合うセシリアを素敵だなって思っていたんだって!

 そしてなんとなんと、セシリアもアラン様のことが好きだったらしい!

 知らなかった!話してくれればよかったのに!

 これで名実ともにリアリアシスターズ⭐︎だね!ってセシリアに言ったら、本気で嫌そうな顔をされた。

 でも、これでセシリアは私の本当のお姉様だ!






 時が過ぎ、私たちは最終学年になった。


 そして、今日。

 今日が私たちの、最後のダンスパーティーだ。

 アルベルトはまた、アルベルトの髪と瞳の色のドレスを贈ってくれた。

 鮮やかなレモンイエローの光沢を抑えた生地に、胸元から首までを同色のレースで覆ったイリュージョンネック。

 腰に極淡いピーコックブルーのリボン。

 髪はアルベルトにもらったヘアオイルを使った。

 これを使うと髪がふわふわで無くなるから、自分でプレゼントしておいてアルベルトはちょっと寂しそうだ。

 そんなところも可愛い。


「アルベルト。私、本当にダンスが苦手なの。

 だから、アラン様に特別にレッスンをつけていただいていたの。

 少しでも…あなたとちゃんと踊りたくて」

「そうだったんだね。

 リナリアが僕のために頑張ってくれて、嬉しいよ。

 でも、これからは僕と練習しよう?

 リナリアが何も考えなくてもきちんと踊れるように、僕も上手くリードできるように頑張るから」

「アルベルト…」



 そして、曲が流れ始めた。

 これは4年前に、アルベルトとこのダンスパーティーで踊った曲だ。



「リナリア。

 僕だけを見ていて」



 アルベルトは、そう言いながら私の瞳を見つめた。

 アルベルトも、私しか見えていないみたい。


 するとアルベルトのリードで、スムーズに足が進む。

 これまで必死に覚えた裏技ステップを踏んでいる訳じゃない。

 ただ、アルベルトを見て、アルベルトに身を委ねているだけ。


 なんだ。

 これで良いんだ。



 向こうでセシリアがとても驚いた顔をしている。

 遠くの方に、キャンベルさんと婚約者の伯爵子息が踊っているのが見えた。

 なんとかやっているようだ。




「リナリア。

 余所見しないで」


 そう言われてもう一度アルベルトを見つめた。


 私の愛しい人。

 私を愛してくれる人。

 これからは、きちんと言葉で伝えよう。

 悲しいこと、不安なこと、楽しいこと、全て。

 アルベルトの話も、たくさん聞こう。


 


 大丈夫。

 私たちはもう間違わないから。



 私たちはお互いを見つめ合ったまま、同時に笑った。


これにて完結です。

ありがとうがございました!


連載当初から毎日読みにきてくださる方がいらっしゃったようで、そんな方々のおかげで最後まで書き続けることができました!

本当に感謝感謝です!

次回作は来年かなと思っています。

ありがとうございました!

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