表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/32

アルベルト4−1

少し短いですがキリがいいので。


改行が一部おかしかったので、修正しました。

いつも改行がうまくいかない…。

 ダンスパーティーの日から、意を決して「押してだめなら引いてみる」作戦を実行した。

 そうすると、予想以上に自分が辛い。

 せっかくリナリアが話しかけてきてくれた時も笑顔を返せなくて、後でとても落ち込んだ。

 自分で自分の顔を殴ってやりたくなる。


 けれど、リナリアは以前よりずっと僕のことを気にしているようで、よく視線を感じる。

 作戦が上手くいっているということだろう。

 クリス殿下やアレク兄様にはアラン兄様のことは言いづらく、そのことを伏せて作戦のことを話したら「それは逆効果だ」と何度か言われた。

 クリス殿下は「お前はただそのキラキラしい笑顔を振りまいておけばいい」と適当なことを言うし、アレク兄様は「アルベルトはそのままで十分魅力的だし、リナリア嬢もそんなあなたの事を好いている」なんて言う。

 そんな訳ないのに。

 クリス殿下はどうも僕を(おだ)てて働かせようという節があるし、アレク兄様は昔から僕に甘いから、身内贔屓でそんなことを言っているだけだ。

 僕の周りの男性陣は当てにならない。

 ちらりとリナリアと仲のいいシプリー嬢の意見を聞くということも考えたが、万一彼女からリナリアに話が漏れることが恐ろしくてやめた。

 好きでもない男が自分の親友に相談しているだなんて、リナリアに気持ち悪がられそうだ。

 そうなると、やはりチェスター先輩の意見を参考にした方がいいだろう。


 そんなチェスター先輩が「私だけの意見では心配だから、信頼出来る助っ人を呼んでもいいか」と聞いて来たので了承し、2人の令嬢を紹介してくれた。

 やはり頼りになる。


 1人はオリヴィア・ディアス子爵令嬢。

 チェスター先輩と同じく第5学年で、現在は会計科にいる。

 第3学年までチェスター先輩と同じクラスで、爵位を越えて仲良くなったのだとか。

 青みがかった黒髪が艶やかに真っ直ぐ伸びていて、少し冷たい印象だけれど、すらりとした体躯がとても大人っぽい。

 クリス殿下が言っていた“色恋沙汰のプロ”の1人で、よく殿下は「一度でいいからあの足に踏まれてみたいな〜立場的に無理だけど〜」と言っている。


 もう1人はマリア・ウェザーズ男爵令嬢。

 僕の1つ上で、クリス殿下と同じ第3学年だ。

 金髪碧眼の可愛らしい雰囲気の女性で、ディアス先輩の幼馴染なんだそう。

 そして小さい体に不釣り合いなほど、その、胸が大きい。

 これまた“色恋沙汰のプロ”であり、クリス殿下が「あの膨らみに顔を埋めたいな〜立場的に無理だけど〜」とよく言っている。

 殿下は立場をよく理解して我慢していることが多く、偉いなと思う。


「わたくしたち、爵位もクラスも違いますが、とても仲良しですの。彼女たちならば秘密を守るとわたくしが保証しますわ」


 チェスター先輩は胸を張ってそう言った。


 ーーアナベルの着眼点は良かった。

   確かに2人はアナベルよりもずっと恋愛偏差値が高い。

   しかし残念ながら、そこには落とし穴があった。

   2人はちょっと、癖の強い人種であった。



「そうですわね。

 私が気になる男性は、私の足を見ない男性でしょうか。

 不躾ないやらしい視線を感じると、思わず本気で踏み付けてやりたくなりますもの。

 その点、スタンフォード様はとても素敵ですわ。

 もう少し個人的に親しくなりたいと…」

「はいはーい!私も胸をジロジロ見られるのはとーっても気持ち悪いです!

 え、こいつ下半身で生きてんの?って一瞬で冷めちゃいまーす!

 でもスタンフォード様はそんなことなくて、とても素敵ですー!」


 ーー妖艶な笑みを浮かべながら足を組み替えるオリヴィアに、

   両手を胸の前で組み合わせて小首を傾げるあざといマリア。

   完全に捕食者の顔である。

   しかし、アルベルトには全く効果がないのであった。


「なるほど…ではあまり視線を向けられるのは女性は嫌だと言うことですね。

 いけない…あまりにリナリアが可愛らしいものだから、しょっちゅう目で追ってしまっていました…。

 確かに僕なんかに見られてると思ったら、気持ち悪いだろうな、危なかった。

 でもリナリアがぴょこぴょこ動いてるともうそれだけで愛しくて、リナリアが生きて同じ空気を吸っているというだけで神に感謝したくなるのです。

 それを見ないというのはかなり難しい…。でも頑張らなくては」


 そしてもうお決まりと言えるアルベルトのリナリア語りが始まった。

 いかにリナリアが素晴らしく、自分には勿体無い人物なのか延々と語り出した。


 ーー2人は悟った。

   こいつはマジでリナリアしか見えていない。

   アプローチするだけ無駄だと。


「あーうん。

 あんまりジロジロ見られるのは嫌かしら。

 そんなに素敵な女性なら特にね。

 私、そのリナリアさんという方を存じ上げないけれど」

「ちっ。無駄な労力使った(小声)

 マリアも知らなーい。

 そんなにすごい子なら、他の学年にも噂が流れて来そうだけどねー?」

「先輩方!ありがとうございました!」


 僕のやり方はやっぱり間違っていたんだ!

 なるべくリナリアを見ないように、素っ気なく!

 あ、先輩方の髪の手入れについても確認しなければ!

 何度も一度に呼び出すと申し訳ない。

 みんな別々のクラスだが、あとでそれぞれ訪問しよう。

 カーネル先輩のヘアオイルはかなり良いものだけれど、更に改良を重ねて究極のヘアオイルを作らねば!


 でもこの「押してダメなら引いてみる作戦」はどれくらい続けるといいのだろう?


 そんなことを思っているうち、あっという間に1年とちょっとが過ぎて、チェスター先輩とディアス先輩は卒業してしまったのだった。

12時と19時にもアップします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ