5話
「おはようございます」
異世界生活2日目、やはりかなり疲れていたのだろう。
爆睡してしまった。そのお陰でかなりすっきりした目覚めではあったが。
「あら、おはよう。ご飯は食べる?」
挨拶を返してくれたのはこの宿を営む主人の奥さん、まあ女将だ。
決っして太ってはいない、それなのに食堂のおばちゃんや肝っ玉母さん
という言葉がめちゃくちゃ似合いそうな人だ。
ご飯を作ってくれている人でもある。
「食べます」
そういうと5分ぐらいで朝食が出てきた。
メニューは硬いパンが2つ、大きめに切られたステーキとスープだ。
朝からステーキとか重すぎない?と思う人も多かろうが、ここは異世界、
放牧、養鶏、養豚、など畜産業は魔物が跋扈するこの世界では無いに等しい。
ミルク、鶏卵など朝の定番は無い。
その代わりに魔物の肉は豊富だ。ある程度戦えるなら食うには困らない。
何で知ってるかって?昨日の晩御飯の時に聞いたんだよ。
ミルクや卵は貴族の食べ物らしい。
なんでそんなこと聞くんだ?って顔はされたが酒をおごると上機嫌に
話してくれた。
おごりと言ってもツケなんだけどね。
それにもう俺は超肉体労働をこなすであろう冒険者の端くれ。
冒険者は依頼中はろくな飯にありつないことがほとんどだから食える時に
食えというスタンスらしい。
先輩風を吹かせた講習勢が教えてくれた。
「アマンダさん、1の鐘が鳴ってからどのくらい経ってますか?」
アマンダさんは女将のことだ。
「2の鐘までの半分は過ぎたろうね」
「ありがとうございます」
1の鐘は夜明け、3の鐘は日が一番高くなったころ、5の鐘は日入りで、
2と4の鐘はそれぞれの間に鳴るらしい。
2の鐘が鳴るまでは街の散策でもしよう。
◇◇◇◇◇◇◇
2の鐘が鳴ったので冒険者ギルドに向かい、ルミエールさんに話しかけた。
そしたらギルドの奥の階段を降りた先にある修練場に連れて行かれ、
ここでしばらく待つようにと言われた。
暫くすると同じ宿にいた講習生達が、そして最後に教官らしき人が現れた。
「お前らはいつも通り始めとけー」
教官が言うと
「「「「「うぃーす」」」」」
何ともやる気なさげな声が聞こえた。
「俺はブレン、講習生達の教官をやってる元Bランク冒険者だ。
よろしくな」
「俺はケイです。よろしく」
ブレンと名乗った男は引き締まってはいるが見た目はぱっとしないおじさんだ。
「スキル習得をここではするわけなんだが、とりあえず
習得の仕方を教えるか。武器系のスキル習得は素振りを一定回数
こなすことで習得することが出来る。最低で100回、最高で10万回だ。
才能があれば少ない回数で済む。10万回も素振りしないと習得できない
ようなスキルがあったならそのスキルを使うのはあきらめたほうがいい。
絶望的なまでに成長が遅いからな。大体の冒険者は1万回前後で習得できた
武器を主に使っている。Sランク冒険者なんかが主に使っているスキルは
5000回以内に習得したものばかりだ。同じ回数で習得したスキルでも
その後の成長速度まで一緒とは限らんが・・・少ない回数で習得した
スキルほどより早くより強くなる」
「なるほど」
「じゃあ、実際やってみるか。ここには大体の武器が揃っている。
好きな武器を手に取って素振りをしてみるといい」
そう言って武器を並べていく。
全て木製だ。
色々と並べられたが生憎とおれは剣の素振りの方法しか知らない。
「これにします」
なので木剣を手に取った。
「やはり剣を手に取るか。人気があるな剣は」
「いえ、剣ぐらいしか素振りの方法知らないんで」
「そんなことか、何のために俺がいると思ってんだ?それくらい
教えるぞ」
「とりあえず、剣を振ってみます」
剣道を思い出しながら素振りをしてみる。実際やったことはほとんど
無いが素振りくらいなら多分大丈夫だろう。
約5分後・・・
ピコン【『剣術』スキルを習得しました】
「あ、ブレンさん。習得したみたいです」
「はっ?もうか?100回しかやってないのに習得できたのか?
嘘だろう・・・もう1回剣を振ってみてくれ」
「はい」
もう一度剣を振る。なんとなくどうやって振ればいいのかがわかる。
剣速も先ほどより早い気がする。
「確かにさっきまでとはちげぇ・・・まさかこんなところで
最上級の才能に出会うとはな。驚いたぜ」
かなり驚いた顔をしながらブレンさんはそういった。
「こんなに早くスキルを獲得しちまうとはな・・・次はどうする?
別の武器も試してみるか、剣術スキルを鍛えるか」
「別の武器も試してみたいですね」
「じゃあ槍でもやってみるか?これもそこそこ人気の武器だぞ」
「じゃあ槍にします。素振りの仕方教えてください」
「おう、任せとけ」
20分後・・・
ピコン【『槍術』スキルを習得しました】
「あ、習得しました」
「なに!じゃあ次は鎚だ!」
40分後・・・
ピコン【『槌術』スキルを習得しました】
「あ、習得しました」
「なにぃ!じゃあ次は斧だ!」
1時間後・・・
ピコン【『斧術』スキルを習得しました】
「あ、習得しました」
「なにぃ!!!!!じゃあ次は杖だ!」
30分後・・・
ピコン【『杖術』スキルを習得しました】
「あ、習得しました」
「グフッ、大剣は体格にあっていないし、短剣は魔法使いの
自衛手段で剣術を取得したこいつにはあまり意味がない、
鞭はニッチ過ぎるし何より本人が別にいいと言っている以上
強制は出来ん、まさか使えそうな武器のすべてを1000回以内で
覚えるとは・・・ならば盾だ!盾をやるぞ!」
「別にいいけど・・・」
なんでこいつと戦ってる感じになってるんだ?
「盾の習得方法は攻撃を盾で受けることだ。今から攻撃する
から盾で受け止めろ」
「わかりました」
15分後・・・
「あ、習得しました」
「おのれぇぇぇぇ!!!!・・・俺の負けだ。こんな才能見たことも
聞いたこともねえよ」
「いや、俺もまさかこんなことになるとは」
なんでなんだろうか?
「お前の体には武神様でも宿ってんのか?」
冗談交じりにブレンさんから言われた。
「そんなわけがないだろう」
「まあ、そうだよなぁ」
神特製のボディではあるが。・・・あ、まさかそれが原因か?
確かに多少は変わると言っていたがてっきり外見的な変化だけだと・・・
思ってみれば俺は数時間も武器を振り回しているのに対して疲れていない。
身体能力も格段に上がっているな。
・・・このボディが一番のチートじゃねーの?
いや、なんにせよ神様ありがとう。
「・・・今日はこれで終わりだ。また明日遅れないようにな。
ちょっとおじさん自信なくしちゃったな・・・」
・・・なんか・・・ごめん。
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ステータス
名前:ケイ
年齢:15
スキル
鑑定Lv1(5/100) アイテムボックスLv1(2/100)
投擲Lv1(1/100) 剣術Lv1(0/100)
槍術Lv1(0/100) 槌術Lv1(0/100)
斧術Lv1(0/100) 杖術Lv1(0/100)
盾術Lv1(0/100)
ユニークスキル
練度増加Lv1(2/100)
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できる限り説明させていただきます。