4話
「冒険者ギルドのご利用は始めてですか?」
やはり受付嬢で間違いなかったようだ。
「はい、初めてです」
「冒険者登録をされますか?ご依頼をされますか?」
「冒険者登録でお願いします」
「では登録手続きをさせていただきます。こちらに血を一滴
垂らしてください」
そう言った受付嬢は鉄片と針を手渡してきた。
故意的な自傷行為とか難易度高いぞ。
「躊躇われているのでしたら代わりにやりましょうか?」
若干馬鹿にされているような気がしないでもない。
「大丈夫だ」
そう言った勢いで針を指先に刺した。若干刺さりすぎた気が
するがまあいいだろう、問題なく血は出たし。
「ではこちらはお預かりしますね」
そういって奥に引っ込むとすぐにまた戻ってきた。
「冒険者プレートができるまで少し時間がかかりますので
その間に冒険者ギルドについて説明しますね」
「お願いします」
「冒険者ギルドに所属する冒険者にはランクと言うものが
付けられます。下からF.E.D.C.B.A.S.SS.SSS.と上がっていきます。
全ての冒険者はFからのスタートとなり、このランクを上げる為には
依頼を受け、達成することが必須となります。依頼はあそこの掲示板
に出ているものを受付である私たちのところまで持ってきていただく
必要があります。依頼にもランクがあり、受注することのできる依頼は
ご自分の冒険者ランクの一つ上までとなります。ここまでで
何かわからないところはありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうですか、少々お待ちください。プレートを取ってまいります」
そう言って奥に行ったかと思えばすぐに戻ってきた。
「こちらが冒険者プレートになります」
そう言って手渡されたのは手のひらサイズの鉄の板だった。
「冒険者プレートの説明をさせていただきます。プレートの
左半分を占める大きなFがあなたの現在の冒険者ランクになります。
右半分にはあなたの名前、討伐履歴、賞罰になります。
名前はそのままも意味なのでいいでしょう。討伐履歴は
自分の倒した魔物の種類、数が記載されます。パーティーを
組んでいた場合、パーティーで倒した魔物はパーティー全員の
討伐履歴に記載されます。賞罰はあなたの達成した功績、犯した罪
が記載されます。功績は隠すことが出来ますが、罪は隠すことが
出来ません。その代わり償いを終えると消えます。もし賞罰の欄に
罪が記載されていると犯罪者として国や冒険者から追われますので
しないでくださいね。説明は以上となりますが何か質問はありますか?」
「大丈夫です」
「ではこれであなたは冒険者になりました。ですがまだ依頼を受けることは
出来ません」
「なぜですか?」
「あなたは一つとして戦闘系のスキルを所持していません。そのような
方はすぐに死んでしまいますので10日間は強制的に講習を受けてもらい
1つでも戦闘系のスキルを身に着けてもらいます。その間は当然依頼を
受けることは出来ませんが食事と寝床はギルドが立て替えますので
心配は無用です」
「なるほど、でもギルドが立て替えても払いきる前に冒険者が
死んだら損しますよね。なんでそんなことするのですか?」
「確かに損ですが微々たるものですし、戦闘系のスキルを
1つでも習得していれば生存率は段違いです。冒険者が生きて、
生活のために魔物を狩り続けるほどに冒険者ギルドは儲かる
仕組みになっています。それに冒険者が多ければ魔物の被害が
減るとともに、緊急時に街を守る戦力にもなります。
冒険者が多い街はそれだけ安全になり栄えるのでなるべく
冒険者が生き残れるようにこの制度が実施されています」
「なるほど、確かにそれは道理ですね」
「それとともに生存率を上げる為にパーティーを組むことを
推奨していますがそれは講習修了時でいいでしょう。獲得するスキル
で色々と変わってくると思いますので」
「そうですね」
「では、以上で説明は終わりです。宿はギルドを出て右にしばらく歩いた
所にある小鳥のさえずり亭に行ってください。看板の上に木彫りの小鳥が
大量に引っ付いているのでわかりやすいはずです。その宿はギルドと提携
している宿で、講習を受ける人を受け入れてくれる宿です。宿の人間に
この紙を見せてください。10日間は無料で飲み食い寝泊まりが出来ます」
そう言って紙を渡してきた。冒険者ギルド講習者と書いてある。
「わかりました」
「それから、明日から10日間は2つ目の鐘が鳴ったらギルドに来てください。
明日は私がいますので声をかけてください」
「わかりました、あ、名前教えてもらってもいいですか?
俺の名前はケイです」
「はい、私はルミエールです」
「丁寧に教えてくれてありがとうルミエールさん。じゃあ、また明日」
「はい、余り遅れ過ぎないようにしてくださいね」
そう言ってギルドを立ち去り、宿に向かった。
疲れていたのか飯を食ったあとベッドに寝ころんだらすぐに寝入ってしまった。