2月14日が恐ろしい日?
「2月14日が恐ろしい日?」
「そう。みんな菓子会社の陰謀で浮かれあがってるけどね、本当はもっと息を潜めとかなくちゃいけない日なんだよ」
いつもアホな事を言ってる友人が本当に何か恐ろしいものを語る様な口調でそう言ってくる。
「前に豆にチョコをコーティングして愛溢れる解決法とか言ってたのに?」
「は?豆にチョコをコーティングして何がかいけ――――ングググググッ?!ごふぇんなふぁい!!」
アホを言う口の両頬を思いっきり握ってやった。
自分で言った事には責任を持たないといけない。
お姉さんとの約束だぞ?
「で、何が恐ろしい日なの?ただチョコなり花なりを渡すだけでしょ?」
「別にバレンタインっていう行事は関係ないんだよ。外国由来のを製菓業界が持って来ただけだし。重要なのは日本の歴史」
「日本の歴史って言ったって、何かある?」
「あるよ!かの将門公が討ち取られになられた日だよ!」
――――んん?
「…………それだけ?」
「いやそれだけって、将門公がお亡くなりになった日だよ!?息を潜めて鎮魂の儀でも大っぴらにやってもおかしくないってのに!」
「だって確か新皇を名乗りつつ自分の失策で負けた人だよね。平清盛とか源義朝とかなら分かるけど、別に……」
「違う違う!かの御方は討ち取られて首級をあげられても腐りもせず目を見開いて『身体を繋いでもう一戦しよう!』って夜な夜な叫んだあげく、三日後には胴体を求めて飛び去ったなんて伝説があるぐらいな方だよ!?首塚で鎮魂されてるけど、未だに御方の無念は晴れてないから!」
「良くある誇張伝説じゃないの?人の首は飛ぶ系のは外国とかにもあったでしょ、確か」
「それを大蔵省やGHQ、日本長期信用銀行とかにも言える?死人がでる程にガチで酷い事になってるから。ファミコン時代にも某天を支える神な会社が御方をネタに使おうとしたら敬称付けに変更して参拝するまでトラブル地獄に陥ったり、参杯を怠った作品では親会社が倒産したりしてるんだよ?」
無駄に詳しいな。
「それに東国武士の祖として神田明神に合祀された時には源氏も御方を信仰してるんだよ。徳川幕府も信仰してたし、江戸町民からは守護神として崇められたりもしたし!今でも首塚付近の場所だと首塚に対して尻を向けない配置になってるって話だし!」
「ああ、そうなんだ?まぁ、凄いってのは分かったよ。うん」
「あんまり分かって無さそうだけど、まぁ御方はヤバくも凄い方なんだよ。そんな方が討ち取られた日にチョコを片手に愛を語り合う?無いね!いや、もしかしたら加護があったりするかもだけど、やっぱり無いよね!」
「別に自分が関わって無い事まで気にするとは思わないけど。むしろそうやってネタにしてる方がヤバいんじゃないの?」
「…………ヤバいかな?」
「自覚があるならヤバいって事じゃない」
「――――閉廷。この話はここで終わりです。チョコ美味しいよね!」
「特にホワイトが好きかな」
「断然ビター。甘さ控えめなのがいい」
「そっか、じゃあこれをあげよう」
「友チョコ?」
「友チョコ。妹のリクエストでとっても甘いミルクチョコレート」
「それって余もの処分じゃないですかい?」
「重要なのは気持ち。愛が多く入った特製チョコだよ」
「妹ちゃんに対しての愛だけどね!」