魔王の真の力
バトルシーン難しすぎぃぃ!!
ダメだわ、バトルシーン本当に難しい……
でもまぁ、一応予定ではまだまだ続く予定なのでよろしくお願いします。(予定は未定)
「どうも、私達が聖なる十字架。私がリーダーのヤークよ」
緑色のショートヘアー、出ている所は出て…………ない
髪の色は明るい色のエシュールとは違い、ダークグリーンだ
日本にいた時なら、流石にねぇわと思っていたけど、それが当たり前の世界なら、違和感は感じなかった――厳つい男の桃色髪はは流石に笑ってしまったが
「俺はガル、新米冒険者だ。よろしくな」
右手を挙げ軽く挨拶する、礼儀だしな。雑だけどないよりマシだろ
「僕はレイルです、よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げている、身長は小さい。ぱっとみ十三歳くらいかな?
「子供?」
「ち、違います! 僕は十六歳です!」
おー、俺と同じじゃん、にしても小さいな
「俺様はエーギルだ。貴様がガルとかいう野郎か。精々俺様の手足になるんだな」
なにこいつ、喧嘩売ってんのか? マジで泣かしてやろうかこいつ
「ちょっとエーギル、やめなさいよ」
「そうですよ! ガルさんはサイクロプス相手に1人でも戦えるとエシュールさんに認められたほどの人ですよ!?」
そーだそーだもっとやれ!
「はっ! 知ったことか! エシュールさんはサイクロプスに俺達だけでも勝てると信じてくれているのですよね! こいつは念のため俺達の囮になるために連れていくんですよね!」
こいつ頭腐ってんじゃねぇの? マジで殺すぞこいつ
だが俺は大人だ。そう簡単にはマジ切れしねぇ。我慢してやるよ。ついついイラッとして殴ったら死にましたじゃ流石にな……
「何を言っておるか!!」
エーギルは突然叫んだエシュールの覇気に怯えている。実際俺もちょっと怖いわ
「で、ですが、こんな新参者……」
いかにも憎らしいという顔で俺を見ている。俺はこいつと初対面のつもりなんだけど、いつ恨み買ったよ? この世界来て二日目だぞ?
「おいおい、えーっと……エーギルだっけ? 多分だけど俺お前よりは強いぞ?」
「そんな訳がないだろうが! 俺はこの町で最強の魔法剣士だぞ!」
へー魔法剣士なんだ。全員魔法使いだと思ってたわ。だから背中に剣背負ってるのか
そう自慢げに言っているエーギルに、何が可笑しいのか、エシュールが笑う
「ハッハッハ、ガルは私より強いぞ」
「バ、バカな!? そんな訳!」
「昨日私とガルで決闘をしたが負けたぞ」
エーギルがすごい形相でこちらをみてくる
「まぁ、本当だけど」
ちょっとやばかったけどな、ズルしたし。今度からこういう時は、できるだけ使わないでおこう
「すみませんうちのメンバーが……本当はいいやつなんですよ。でも少しエシュールさんにのめり込み気味と言うか……」
「あー、エーギルはエシュールさんのこと好きなんだな?」
と小声でヤークに聞く。流石の俺も本人の前で言う気にはなれない
「そうなの、でももう少し抑えてほしいわ」
なんと言うか……ご愁傷さまだな
「ふぅ、じゃあ依頼の話をする。討伐対象は言った通りサイクロプスじゃ。戦闘方法はガル一人で戦い、聖なる十字架が魔法で支援する。勝てないと判断したら、ガル、頼めるか?」
マジかよ。全部投げられたなぁ
「まぁ、なんとかしますよ」
「信じてるぞ」
美人にそんな顔されたら、紳士としてやるしかないよね――ガルが紳士かどうは、エシュールに腹パンした時点でお察しの、自身でもネタとして思っているだけだが
「じゃ、そろそろ行きましょうか」
「……ガル頼むぞ」
わかってますって。最悪俺だけでやりますから
俺はエシュールに頷き、町の外へ向かった
「ここがサイクロプスが発見された森ですね」
レイルが依頼書を読みながら確認している。思ったより近かったな
「探知の魔法を使うわ。隠れ潜む敵を探知し、見つけたまえ! 探知!」
辺りに地図のような地上絵が出現し、一箇所が光る
おー、これが探知魔法か。光ってるとこがサイクロプスのいる所だな。わかりやすいけどナビさんがいれば、これは要らないな
「近くよ。こんな近くにサイクロプスがいるなんて……。気を引き締めて行きましょう」
「うん」
「ああ」
みんな戦闘モードか俺も気を引き締めていこう
「みんな、来るよ!」
レイルが緑の珠が乗っている杖を持つ。探知魔法の地図を見ると地図の光がすごいスピードで近づいてくる
「サイクロプスにしては速すぎます!」
「ま、まさか!」
ヤークが青い顔をしてレイルと同じ杖を構えている
まさかってなんだよ! 変なフラグ立てんなよ!
『強化種ですね。』
強化種ってなんだよ!?
森の中から赤い一つ目の巨人がこちらへ走ってきている
「もう来たよ!」
「サイクロプスじゃないわ!?」
なんだよあれ!? 聞いているサイクロプスじゃねぇんだけど!?
『サイクロンタイタンですね。中位のSランクの魔物です。』
嘘だろ、Sランクだって!?
「クソが! 俺様が行く!」
エーギルが剣を抜きサイクロンタイタンへ走り始める
相手はSランクだ。エーギル一人で勝てるわけがない
「おい待て! お前は後ろから魔法を撃て!」
俺はエーギルを止めようとするが、エーギルは振り返り俺を睨む
「貴様の指図なんか受けねぇよ!」
「エーギル!」
相手はSランク、刀は慣れるまで使いたくない。無いだろうが、刃こぼれでもしたら大変だしな。だが素手で勝てる相手なのか?
「クソ!」
考えている暇なんてない、サイクロンタイタンに向かって走り出す
「ガルさん!」
「お前達は魔法で援護してくれ!」
「わかりました!」
エーギルはサイクロンタイタンと戦っている。優勢には見えるが恐らく無駄な攻撃なんだろう。サイクロンタイタンはつまらなそうに頭を掻いている
「聖属性付与! オラァァ! 聖なる斬撃!」
エーギルの剣を光が纏う。その光は輝きを増し、サイクロンタイタンを切り刻もうとする
「援護するわ! 聖なる風よ、敵を浄化し、切り裂きたまえ! 聖なる風の刃!」
「僕も援護するよ! 聖なる炎よ、敵を浄化し、燃やし尽くしたまえ! 聖なる火炎!」
魔力は可視化され、それぞれの魔法へと変換される
これが聖なる十字架と呼ばれる所以。全員が聖属性の魔法を使えるってことか
本来聖属性は聖騎士レベルのみが使える魔法で、一部の者しか使えないと夜寝る前ナビさんに聞いた
ちなみに闇属性は魔人以上の間族、心に深い闇を持つ者のみが使うことが出来るらしい。でも俺は脳味噌筋肉だからあんまし魔法は使うつもりは無いけどな。なにより詠唱噛みそうだし
皆が全力で攻撃している。この気に乗じて攻める!
俺はクラウチングスタートの体制をとった。相変わらず走りにくいったらありゃしないが仕方が無い。慣れない命の取り合いは、まだこの姿勢からじゃないと覚悟が決められない
「ふぅ……」
俺の上を魔法が通る
サイクロンタイタンに近づいたら、まず勢いに任せた本気の一撃をかます。そしてそっからは適当に!
頭の中の笛が鳴り、走り出した。そしてすぐに魔法を追い越す
「速い! ガルさん……魔法のスピードを超えた!?」
「うぉぉら!」
殴り殺してやる! 魔法も着弾し、エーギルも切りつけている。俺は地を蹴り、跳躍して弱点であろう目玉を狙う
「これで、終わりやがれ!」
目玉には当たらなかったが、確実に顔面を蹴り、すごい勢いでサイクロンタイタンが吹き飛ぶ
「はぁはぁ……」
「終わったの?」
皆が安堵した瞬間エーギルが叫ぶ
「まだだ!」
「なッ!」
俺の体の三倍はありそうな大きさのハンマーが俺を吹っ飛ばした
「ぐァッ」
「「ガルさん!」」
ヤークとレイルが叫ぶ。クッソ、いってぇ!
俺を吹っ飛ばして嬉しいのか、サイクロンタイタンは不気味に笑っている
「まだまだ余裕ってか?」
冗談キツイぜ。仕方ねぇな、試してない"アレ"やってみるかな
「ガルさん、エーギル! 逃げましょう!」
レイルが吹っ飛ばされ、近くに飛ばされた俺の手を引っ張る
「クソッ、仕方が無いか……ガル! お前が囮になれ」
こいつマジでクソだな……。でもそれは間違っていない、"アレ"はどんなものか分からないしな
「エーギル! 何言っているの!」
絶望しているのかヤークは泣きそうになっている。Sランクとの対峙だ、仕方が無い
「いや、お前らは逃げろ」
「ガルさんも逃げましょう!」
お前はいいやつだなレイル。つっても"アレ"をレイルにも見せるわけにはいかない。どうなるかわかんねぇしな
『戦闘補助を行いますか?』
いや、能力を発動する
『了解致しました。』
なんかすまんな、戦いたいんだろ?
『いいえ、ガル様の仰せのままに私は動くだけでございます。』
そうか……初めて本気出すからよ、それ見て我慢しな!
「お前ら離れろ! 今すぐにだ!」
「ですが!」
レイルも目に涙を貯め、泣きそうになっている。子供っぽい見た目だからかレイルには悪いが、それはとても似合っているように見えた
「邪魔なんだよ! 本気出すから逃げろっつってんだ!」
「……わかりました、死なないでくださいね……」
負けねぇよ。本気出してあいつらを巻き込んだらエシュールさんに悪いしな
「……よく言ってくれた。すまないな、付き合わせしまった」
は? え、お前がやれって言ったんじゃんか、なに言ってんだコイツ
「おいおい、お前が囮になれっていったんだろ?」
「安心しろ、俺様も残る。その為にあいつらを逃がしたんだ」
おいおいこいつも実はイイヤツってか? 勘弁して欲しいぜ。でもこういうとこホント嫌いだわコイツ
「邪魔だっつってんだろ! 巻き込まれて死にてぇのか!? お前が死んでも俺はどうでもいいが、エシュールさんはどう思うだろうな?」
エシュールさんの名前を出し帰らせる。我ながらいい案だぜ
俺は頭の中で小さくドヤ顔をしているが、エーギルはすまなそうな顔をしている
「だが……」
「早く逃げろ! お前も邪魔だ!」
鬼気迫る感じで言う、実際そうだしな
「……すまん。死ぬんじゃねぇぞ!」
作戦成功!
エーギルが見えなくなるまで俺はサイクロンタイタンを殴り続ける。だがものともしないように殴り返してくる
「あぶねッ」
既のところで避けることが出来た。大ぶりのくせに速いんだよな
「てめぇ、デケェ癖に速いんだよ!」
殴り続けているがやはりそこまで効いていないな……
俺は後ろを振り返り遠くに逃げた事を確認する。よし、いねぇな
少しサイクロンタイタンから離れる
サイクロンタイタンは俺を舐めているのか、手招きしている
さぁ、やるか
「我、真なる魔王なり! 今敵を穿つ為、力を解放する! 魔王闘気解放、完全解放!」
そう唱えた瞬間、黒いモヤに包まれた
◆
サイクロプスの討伐はガルさんだけでも何とかなるはずだった
まだガルさんがサイクロプスに負けたなら、魔力を全開放してガルさんと一緒に皆で町に逃げることが出来たかもしれない
でもサイクロンタイタンは速い、恐らく魔法の詠唱中に全滅するだろう。所詮は閃光魔法だ。発動しても遠くまでは逃げれない
「クソッ! 俺様が突っ切らなければ……」
「いえ、僕がサイクロンタイタンを見た時に逃げると判断すれば……ギルドの皆とエシュールさんとなら勝てたかもしれないし、聖騎士を呼べば……」
後悔は消えない。ガルが死んでしまったら、それが永遠に付いてくる。トラウマとして
「私……戻る」
ヤークは立ち上がり、ガルさんがいた場所へと歩き出した
「だめだよ! ガルさんは僕達のために……」
本当に泣きそうだ。僕は昔から泣き虫だった
でも皆に冒険者になろうと誘われ、
『冒険者になれば強くなれる。冒険者になればお前の泣き虫は治る。お前にはその力がある。だから俺と組め!』
とエーギルに無茶苦茶なことを言われた。でも僕は冒険者になろうと思った。冒険者が強いというのは思っていたし、憧れもあった。もう泣かないといういい括りだったから、僕は冒険者になった
「僕は……」
僕は行かなければいけない。冒険者として。男として
でもやはり怖い。相手はSランクの魔物、勝ち目なんかあるはずない
黙った僕達を見かねたのか、エーギルが話し出す
「……はぁ。お前ら、死ぬ覚悟はできているのか? ガルの援護に行くなら恐らく死ぬだろう。それでもお前らが行くというなら止めはしない」
「エーギル……私は行くわ!」
ヤークは覚悟をしたのか、さっきの悲しそうな顔ではなく、勇ましい頼りがいのあるリーダーの時の顔に戻った
「僕も……僕も行くよ! もう……泣きたくないから。ガルさんを見捨てたくないから!」
僕も覚悟を決めた。一か八か、僕の命をかけてもガルさんを助けに行く!
「ハッ! 流石はお前ら! もちろん俺様も行くぜ」
エーギルは満面の笑みで立ち上がった。本当は怖いはずなのに
「でもエーギルはいいの? エシュールさんのこと……」
エーギルはエシュールさんの事が好きなんだろう。いつも見ているから、なんとなくだけどわかる
「べ、別に関係ねーだろ!?」
目線が泳いでるよ?
「ふふっ、そうね。エーギルはエシュールさんにいい顔しないとだめだもんね」
「な、何言ってんだよ!? ったく……お前ら助けにいこうぜ!」
「じゃあ皆、ガルさんを助けにいこう!」
「「おう!」」
僕達はガルさんとサイクロンタイタンのいた所に戻ろうとした瞬間空気が変わった
「「「!?」」」
なんだ、これ……1歩も動けない……
皆も動けないようだ
「レイ……ル、ヤーク、大丈夫……か?」
「大丈……夫」
「なによ……これ、怖い……の?」
これは恐怖。圧倒的な恐怖を感じ、動くことすらできない
恐らくこれはサイクロンタイタンじゃない。Sランクとはいえ、あいつがここまでの力を隠し持っているとは思えないから
これって……まさか……
「この魔力……ガル……なのか?」
エーギルが恐ろしそうに呟いた
まさか……本気を出すって本当だったのか
「もう……だめ……意識が」
意識が遠のいていく
「クソが……」
「みんな……」
そして僕達は意識を失った
◆
力が溢れてくる。姿も変わった
頭には禍々しい角が2本生え、顔には黒い線が浮かび上がり悪魔のような翼が生え、染めただけのはずの金色の髪が伸びる
「これが魔王の本当の力ってか」
『そうでございます。初めての解放ですので、少々魔力が漏れすぎているようですが。』
真なる魔王を前に、サイクロンタイタンは怯えている
「おいお前、ちょっと俺の力試しするからさ。そう簡単に死ぬんじゃねぇぞ?」
俺は地面を強く蹴り飛び上がる。瞬間、地面は割れ、小さなクレーターが出来、俺はサイクロンタイタンの目の前にいた
速ぇ! 通常の比じゃない!
大きな目がある顔の頬に一発拳を入れる。サイクロンタイタンは倒れそうになったが、踏ん張ったようだ
「グギャァガァァ!!」
流石はSランク、倒れないのか。精々遊ばせてもらうぜ
俺は落下中に翼を使い、滑空し、横腹に蹴りを入れる。翼の使い方は変な筋肉を使うようで、とても難しい
踏ん張りきれなかったのか、サイクロンタイタンは苦しそうに倒れ込む
「そんなものかよ。おいおい期待はずれだぜ?」
「グガァァォォォ!!!」
サイクロンタイタンは雄叫びをあげた瞬間、巨大なハンマーが風を纏う
「武器属性付与か」
『風属性のようです。』
「見りゃわかるな」
サイクロンタイタンは突進し、ハンマーを振りかぶる
スピードが数段上がっているようだな
『一部ですが身体属性付与もしている様ですね。』
そんなのあるのかよ、便利だな。でも、
「当たらねぇよ」
ハンマーが降ってきた瞬間俺は股を抜け背後にまわる
翼を使い飛び上がり、降下と同時にかかと落としを後頭部に入れる
脳への衝撃が大きかったのか、サイクロンタイタンはまた倒れた
この身体には多少慣れたな。また今度色々試そう
「お前、もう死んでいいよ。お前でかいだけで飽きたし」
俺は右腕に魔力を流す。腕に黒い炎を纏う
おー、これが身体属性付与か。案外簡単に出来たな
『その通りです。流石はガル様、見ただけで能力をコピーするとは……。』
何となくやったら出来たわ
「色々と試せたしな、そろそろ終わらせようか」
俺は空へ飛び上がる。そして立ち上がろうとするサイクロンタイタンに向かって頭から降下加速する
そして拳を振りかぶり、バアルの声とともに、
『「地獄へ導く一撃」』
振るう
起き上がろうとしていた巨体を頭から貫く
「ガァァギィヤァァァ!!!!!」
サイクロンタイタンは絶叫する。身体は頭から穴が開き、血が吹き出す
だが魔王は止まらず、そのまま地面まで加速する
「ウラァァ!!!」
体を貫通し地面へとたどり着く。勢いは止まらず、地面に拳がついた瞬間大きなクレーターが出来た
「終わったかな?」
サイクロンタイタンを見ると倒れ、そこから動かない
「にしても汚ぇ……さすがに風呂入りてぇ……」
体は返り血塗れで、服も汚れている。端的に言うと、とても臭くて汚い
これはマジで風呂入りたい。心からの叫びだよコレ
『風呂屋ならありますので後に案内致します。』
「風呂あんの!? 後で案内してくれ! マジで頼む!」
良かったぁ、体拭くだけだったらぜってぇ匂いは取れねぇからな。異世界に石鹸ってあるのかな?
「とりあえずあいつらと合流しようか」
無事に逃げれたのか心配だしな。エーギル以外
『わかりました。案内致します。』
『到着いたしました。』
何も無い木陰に、聖なる十字架の3人が倒れていた
「おい!? どうしたんだ!」
まさか魔物におそわれた……にしては傷がないようだな
『恐らくガル様の溢れ過ぎた魔力を受け、身体が耐えられなかったのでしょう。』
えぇ……そんなに強かったんだ。まぁ確かにサイクロンタイタンも敵じゃなかったけどな……。どちらかというともっと制御しろってことだけど
「おい、目を覚ませ」
エーギルの頬を強めに叩く、俺の恨みもこもっているからな
「ぐわっ! ……ガル!? 生きていたのか!」
おーおー、驚いてる驚いてる
「だから言っただろ? 本気出すってよ」
「貴様……一人でサイクロンタイタンを……」
あいつそんな強くなかったけどな。どうでもいいがあの地獄へ導く一撃って厨二病くさい技名は、ナビさんが頭の中で言ったからつい声に出しただけだからな! 決して俺の趣味じゃないからな!
誰に言われたわけではなかったが、そう思わずにいられなかった。地獄へ導く一撃って……
「まぁな、それより帰るぞ。一応耳も取ってあるし」
大きな耳を入れた袋を振り回す
「耳? あ、ああ、皆も起こすか。だが貴様、臭いぞ」
「うるせぇ! 返り血塗れなだけだよ!」
俺はレイルを起こし、エーギルはヤークを起こした
「ん、んん……」
「……ッは! ガルさんは!?」
「よっ」
しゃがんで右手をあげる
「ガルさん……あなたは……一体何なんでしょうか?」
「俺? 何なんでしょうかって……」
なんと言って誤魔化そうか。魔王だなんて言えねぇしな
「ガルさんあなたはサイクロンタイタンを1人で? あの魔力はやっぱりガルさんなの?」
「まぁ、な、俺は普通の武闘家だよ」
「そんなわけ!」
少し困ったような顔をして、目配せをし、俺は人差し指を縦に自分の唇に立てる
「……わかりました。ですが、エシュールさんには報告させていただきます。」
んー、仕方ないのかな。まぁエシュールさんなら悪いようにはしないだろうし、別にいいか
「わかったよ、とりあえず帰ろう。体が臭くて仕方ねぇよ」
「ふふっ、そうね。ガルさん臭いわ」
ヤークは笑って鼻をつまんでいる
直球だな!? まぁ臭いけどね。そんなのされたら流石に俺でも傷つくよ?
「ああ、帰ろう」
俺達は町に帰る
ああ、もうどうでもいいから風呂入りたい……