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不良な俺は世界を救う魔王  作者: しゅーみん
異世界転生編
13/88

ルシは馬鹿

 

 また夢を見る。これは過去の夢。みかんを握りつぶしたようなオレンジ色の光が窓から差し込んでいる中、俺が母さんの胸ぐらをつかみ、暴力を振るおうとしている

 母さんがそれこそ正論、ちゃんと学校に行きなさいやらあなたのためを思ってやら言っている


「うるせえ!全部あんたが悪いんだろうが!」


 目の前にいる俺は叫び、母さんは泣いている。少し心が痛むが俺がこうなった原因は母さんの不倫のせいだ。母さんがあんな事をしなければ父さんと三人で多少ギスギスしていても普通に暮らせていたかもしれないのに

 隣に住んでいる幼馴染が俺の大声に気づいたのか古い横開き式の玄関をガラガラと開け、土足で入ってきた


「何やってるの!お母さんに暴力はダメだよ!」

「うるせえ!お前には関係ないだろ!」


 腕にしがみつく澪を振りほどいた、そういえばこのときはまだ澪も普通の女子だったんだな、この後「海斗に負けないくらい力が強くなれば暴力をふるう前に止められるよね」とか言っていろんな格闘技習い始めたんだよな

 俺は澪に暴力をふるった、とことん俺も屑だな……

 目の前の俺を殴ろうとするが身体が動かなかった

 それでも澪は泣きながらしがみついてくる


「もう……やめてよ…なんでこうなったの、昔はあんなにやさしかったのにどうして」


 優しかったわけじゃない、子供のころは好きな女子にはかっこつけたかっただけだ

 澪をまた振りほどき舌打ちをして俺は家を飛び出た。行くあてはなかったが、適当に友人の家に行けばいいだろう

 数週間後俺はまたこの家に連れ戻されることになった。強くなった澪に連れて帰られただけだが



 家を飛び出したところで俺は目が覚めた


「この頃夢をよく見るなぁ」


 あくびをしながら何気なくつぶやき、周りを見回すと昨日借りた宿屋で寝ていた俺をルシとライが見つめている。ライは頬を膨らませ子供らしくてかわいらしいがルシも同じように頬を膨らませていて気持ちが悪い

 二人は口をあわせて


「「おなかすいた!(腹減った!)」」

『ガル様の身体もエネルギー摂取の為食事を必要としております。』


 ナビさん、もといバアルもかよ。てか自由に脳内に行けるのね……


『実体化も可能ですが、こちらのほうがいろいろと効率がいいので引き続き案内人ナビゲーターとして案内ナビゲート致します。』


 はいはい、さっそくうまい飯屋に案内たのむわ。昨日とは違う店で頼むな




「今日は何すっかな、適当に討伐依頼でもやっかな」


 腹も膨れたし、冒険者ギルドに行こうかな。案内(ナビ)頼むわ

 にしてもこいつら食いすぎなんだよな……昼まで寝てた俺が悪いのだろうけど所持金の4分の1持ってかれたよ。ライ昨日あんなに食ってなかっただろ……


『了解いたしました、と言いたいところですが私はライに用がありますので、魔王之空間ディザスターランドにて待機いたしますがよろしいでしょうか?』


 ん? ライと何するんだ?


『少しばかり訓練を施そうかと。ライには魔王軍幹部の素質がありますので戦闘特訓をいたします。』


 幹部の素質ってなんだよ、ライはまだ子供なんだぞ?

 俺は動揺した。こんな子供に戦闘? 小さなライに危険なことをさせるわけにはいかない


「ダメだぞ、ライには関係のないことだろうが」


 つい声に出してしまったがライには聞こえてなかったみたいだった


『いえ、ライには暴食の魔(グラトニウス)が宿っている可能性があります。それ程の能力保持者は幹部としてガル様に仕える必要がありますが、まだ精神も弱く、圧倒的に経験が足りません。それに先ほどその話をしたところライには了承を得ましたし、ガル様の役に立ちたい、と言っておりました。それにライには魔王の配下としての義務がございますので。』


 暴食の魔(グラトニウス)ってなんだよ? 義務とかあるんなら簡単に配下にするんじゃなかったか。それでもライは戦いに出したくはない。魔王の命令ってことでどうにかならねえのか?


暴食の魔(グラトニウス)とは元魔王軍七柱の一柱が持っていた能力でございます。戦うかどうかはライの意思でございますので、私はライには戦闘へ出ろとは言いません。まだ幼すぎるというのも理解しております。ですが本人が戦うと言った場合は止めません。魔王のために戦う、それが魔王の配下の義務ですので。』

「……そうか、ライは強いんだな?」

「はい、魔王軍七柱の一柱の素質があります。人間が定義するSランクよりはすぐに強くなると思われます。」


 わかった、ライがやりたいって言うんだったらもう止めねぇよ。だけど一つ条件がある。強く育てろ。俺にも負けないくらいに、だれにも負けないような強さがあれば俺も心配はしないから


『了解いたしました。ガル様やルシに並ぶほどの強者に育成いたします。ライにはそれ程までの力が宿っておりますので、不可能ではないでしょう。』

「そうか……任せたぞ」


 さすがにこんなことを簡単には決められないが、ライもずっと俺と一緒にいるわけじゃない。自分の身は自分で守れるようにはなってほしいし、そんなすぐに戦争をするつもりはない。いつかは戦わなければいけないのだろうけど……


「おいルシ、とりあえず今日はギルドに行って金を稼ぐぞ。お前らは食いすぎなんだよ。金がいくらあってもたりねぇよ……」

「ん? ああ、そうだな、久しぶりに飯を食ったからな、あんなもんだろ」


 あんなもんってバカみてぇな食費毎日使ってられるか!


「とりあえず行くぞ」


 道しらねぇけどな


「おう、どうせ道わかんねぇんだろ? 俺もバアルほどじゃねぇが道案内くらいならできるからな。大体の場所はわかるから案内するわ、ついてこい」

「僕はバアルお姉ちゃんとがんばるね!」


 ライが胸の前でこぶしを握っている。やる気満々だな

 ふと隣を見ると白いマントと金と銀のツートンカラーの髪をたなびかせた銀仮面の女が立っていた

 さっきまで誰もいなかったのにいったい誰だ……ってバアルしかいないよな


「それでは失礼いたします。」

「お兄ちゃんたちもがんばってねー!」


 ライは笑顔で手を振って、バアルは一礼し、宿屋へと向かっていった




 ギルドに着いたが俺が知っていたジュスクロのようなこじんまりとした酒屋ではなくまるでレストランのようだった

 思ったんだが、魔物の耳を持って来るんだろ?衛生的に大丈夫なのかよ


「そういやルシは冒険者登録してないよな?」

「いんや、いちお持ってるぞ。古いけど」


 おもむろにポケットをまさぐり俺も持っている冒険者カードを出す、少しほこりをかぶっているが俺のカードとほとんど変わらない、ただ一つ違うのは


「なんでお前ランク9なんだ……?」


 俺の名前の横には銀色で6と書かれているがルシのカードには金色で9と書かれている


「え?いや、サタンは10だったぜ?」


 そういう問題じゃねぇよ!これは……新しいの作ってもらったほうがいいな、ランク9とかいきなり国に目をつけられかねねぇ、それはさすがにめんどくさいぞ!?


「とりあえず新しいのを……」


 ルシがいた方を向くといつの間にか受付嬢のところに行き、カードを突き出している


「なんかいい依頼ある?」


 こいつ、やりやがったな……これはめんどくさいことになるな……


「え、え、え、えとあの、あの!ランク9の冒険者様、ルシ様でよろしいですね?、少々お待ちください!マスター!」


 ほらぁぁぁ!獣耳の受付嬢テンパってギルマス呼びに行ったじゃねぇかよ!

 周りの冒険者パーティー達もランク9と聞いてざわつき始めた


「おい、ランク9だとよ……」

「あんな赤髪のやつなんか見たことねぇぞ……」

「あの一緒にいる人も高ランクなのかしら……そうは見えないのだけれど」


 うっせぇほっとけ。お前よりはつえぇよ、多分


「おいルシ何やってんだよ、お前俺よりバカだろ」


 ルシは何も悪いことをしていないのに怒られた時の子供のような顔をして「別にいいじゃんよ」と言っている。ちみちみとやっていくつもりだったのだがこれじゃ本当に国に目をつけられる……めんどくせぇ


「はぁ、まぁいいや、もう知らん、どうにでもなるだろ」


 するとドタドタと肌の薄茶色い猫耳の女の子が走ってきた


「あ、あなたがルシ様ですか? 私はギルド新月の光(ニュームーンライト)のギルドマスター、ティラと申しますにゃ」


 え、この子ギルマス?俺とあんま年変わんない気がするんだけど

 そういやギルドマスターってかわいい女性しかなれないのか? んなわけないだろうけども


「おぅ、なんか暇つぶしになるやつ無い?」

「暇つぶしと申しますか、このタイミングでルシ様がこの国に来ていただけたのは奇跡ですのにゃ」


 この国にはいなかったのは知ってんのか、まぁそりゃランク9だし、そこら辺にはいねぇだろうからギルマスともなれば高ランクの冒険者は把握してんだろうな


「ほぅ、討伐だな? つーかそれ以外受けん。ちまちましてんの嫌いだし」

「おいまて安請け合いすんな、目立ってどうするんだよ」


 受付口にいるルシの頭を少し強めにたたいた

 このバカはいっぺんシメてやろうか……まだ無理だな、こいつバカのくせに滅茶苦茶強いし


「いてぇな! なんだよべつにいいじゃねぇか。んでよ、討伐対象はなんだ?」

「おいまて…」

「実は近くの草原に現れたのですにゃ」


 俺の制止も無駄だったようで、ティラは俺を一度見てから話しだした

 俺の意思は無視ですか? ひどくね


「お、何がだ?」


 ルシはティラの出した依頼書を食い入るように見ている

 ティラはその可愛らしいまだ幼い顔立ちでつり目を細めた


無名ノーネームが2体、現れたのですにゃ」





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