出航と暗殺
どうも鐳波です。
最近不摂生な生活を送っていたつもりはないんですが風邪をひいてしまいました。
何がダメだったんでしょうかね~。
ニコラスとの商談から二週間後に計画は開始された。
「ハリーとチャーリーを探せ!!見つけ次第拘束して団長に差し出すんだ!」
怒号が飛び交う中ハリーとチャーリーはニコラスの家で茶を飲んでいた。
「さて、恐らくこの屋敷にも教団の奴らが来る。息子と武器を預かり次第スクーナーで逃亡する」
ハリーはこれからの事を軽く整理する。
「サン、入れ。アナもだ」
整った顔に長い金髪の男と、昨日会った胸の大きいメイドさんが入ってくる。
「サンズ=ニコラスです。戦闘は得意ではないですが知識はあります、よろしくお願い致します」
サンズは頭を深く下げる。
「そして私はアナ=マリア・ラファルグです。ここではパーラーメイドとして雇われていますが17歳までは傭兵として生きていましたので戦闘はお任せください」
柔らかい笑みと柔らかそうなその体からは想像もできない過去を持ってるようだ。
「アナさんまで着いてきてくれるのか...」
ハリーは険しい顔が歪むのを感じて顔を元に戻す。
「ではアサシンブレードと6 UNICAを二人に。ブレードはアサシンの証、6 UNICAはガンプラトーンの一員の証だ。これを持ったからにはたとえどんな拷問を受けようとも我々の情報を一文字でも明かしてはいけない。アナさんも例外じゃない、というか傭兵だったらそれくらいは分かるはずだ」
「じゃあハリー君、そろそろ行きましょう。教団も待ってはくれませんからね」
アナに言われスクーナーに荷物を運びこんだ後に一行も乗る。
「そうだ、鎧は君のおかげで届いてるよ。部屋の中にいれてある」
「ありがとうございます。じゃあ俺たちはもう行きますね」
軽く頭を下げて帆を全開にして風に乗る。
操舵はニコラスから寄越された操舵士に任せて部屋の中に入る。
「さて、まず色々話さないといけないな。まず暗殺義賊に入った以上本名は口にできない。そこで偽名を銃の部品の一部にする。俺はリボルト=トリガー。リボルトは反乱と言う意味だ。別に好きな部品でいい」
ハリーは鎧に着替えてから水をコップ一杯一気に飲む。
「じゃあ私はハマーで!ハンマーってかっこいいしね~」
チャーリーはすぐに決まる。
サンズやアナは少し悩むがすぐに出た。
サンズがボルト、アナはサイトとなった。
「ではこれからの行動だが、基本的に何をするわけでもない。目標はあれども情報はないからな、近くの町の酒場で聞き込みをしたりして地道に情報を集めるのが先だ。あと私掠船を盗めると嬉しいな」
部屋の隅にある木箱の中から海図を一つ取り出して机の真ん中に広げ、地球儀をその近くに置く。
「現在地は分かるだろうがここ、アメリカのニューヨークだ。ロワー・ニューヨーク港から大西洋へ、そしてそこからキューバの首都ハバナへ向かう。あそこは貿易が盛んだし情報の入りも良いからな」
「最悪キューバやアメリカの諜報員を拉致などして情報を吐かせれば分かりますけどね」
アナがそんなことを言い出すのでハリーは驚いたようにアナを見て震えながら両肩に手を乗せる。
「傭兵の頃に戻らなくてもいいんです...可愛いままの貴女でいてください」
震えた声でそう言ってから、一回咳払いをして皆に視線を戻す。
「と、とりあえずだ。これから何か情報が入るまではハバナで普通に暮らす」
「それと、船の上でも軽く組手とかしないとなんかあったときまずいよね?」
チャーリーはコインで遊んで退屈そうにしている。
「まぁそうだな。もしかしたら飯の上に砒素とかかかってるかもな、気をつけてくれ」
懐から白い粉の入った小瓶をかるく振る。
「そんなのどこから...」
サンズが身じろぎをする。
「友人に錬金術師が居るのさ。あいつ、25世紀入ってから始まった大戦争以降魔法体系や神の信仰が重要視されるようになったおかげで今じゃ最前線で腕を振るってやがるんだと。金は無限に湧くし極秘の書物の優先閲覧権や資源の支給がある生活は最高だ、もう最前線じゃない工房じゃ満足できねぇとかほざいてやがる」
ハリーは溜め息を吐いて6 UNICAを細部まで見る。
「あ、そう言えば気になっていたんだが。その銃はなぜ僕ら全員に支給されたんだ?」
サンズも自分の銃を取り出す。
「お前は最初に話を聞いていなかったのか?これがガン=プラトーンの象徴だ。いつかこの銃を見せれば身分証明ができるほどの知名度は欲しいな。おいチャーリー、操舵士に行き先を伝えといてくれ」
「はーい」
チャーリーは鼻歌を歌いながら外に出ていき、それから少し間をおいてハリーも外に出て樽の影に隠れる。
「チャーリーは何気に殺気や人気に敏感だからな...暗殺練習には最適だ」
彼女がドアノブに手をかけた瞬間、音を立てずに素早く駆けだしてアサシンブレードの刃を出し首元に持って行こうとするが、それは刃を出した時の微かな音と、走り出した時の微弱な風に反応したチャーリーが出したブレードによって防がれる。
「今ので殺されてたら困る。よく防いだ」
歯を出したまま中腰になって構えるハリーを目の前にチャーリーは短剣を腰から引き抜く。
それから10分はただ睨み合っていたがしびれを切らしたチャーリーは短剣で斬りかかってしまう。変な所でせっかちな性格が災いしたのだ。
ハリーはその機を逃さず、素早く回し蹴りを入れて首を掴み地面に押し倒しそのまま馬乗りになる。
「どうだ、降参か?」
ハリーは意地悪な笑みを浮かべて再び刃を出す。
「ハリーはたまに詰めが甘いよね。私は体の色んな所に麻痺性の毒針を仕込んでるの忘れてた?ハリーはこういう時いっつも馬乗りになるからその場所にも一本隠しといたんだよ」
ハリーの笑みは引きつったものへと変わり、チャーリーが嬉しそうに笑顔になる。
「あぁ、早速効いてきたよ馬鹿野郎...」
非力なチャーリーが毒で体が動かなくなったハリーを押し倒すのはそう難しい事ではなかった。
「じゃあ、私の勝だねっ。後で50ドル貰うからね~?」
その後痺れて動けないハリーはアナに助けられなんとか部屋に入れたのだった。