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亀の頭  作者: VIPで小説
主人公視点
1/2

亀の頭

いくらなんでも安価が安価なだけにものすごく無理です。

推理とか言われたけどまったくもって無理やりな安価だったのでギャグというキーワード突っ込みました。

後悔はしていない。

今俺のいる場所はとある屋敷だ。

ここで事件が起きた。そう、事件だ。

いろいろな問題が元々あった屋敷だったために、屋敷にいた人物はあまり驚かなかった。

そして屋敷の人物の一人である俺の名前は、村瀬 陽むらせようだ。

事件の種類は殺人事件。まったく、つくづく運のない男だ。

俺は昔から可哀そうな人間だと言われていた。

最近知った事だが、俺はどうやら捨て子だったらしい。

それを見かねたお金持ちの人間が俺を拾った。つまり俺は養子だ。

お金持ちだけあってなんでも買ってもらえたし、なんでもねだれば買い与えられた。

ただ、愛情だけはあまりもらえなかった。

いや、俺の親からしてみれば愛情はくれたんだろう。でも、俺は物なんかじゃなくて、普通に遊んでほしかった。


やはり金持ちというだけあって仕事は忙しい、それが理由で俺は遊んでもらえなかった。

メイドや執事と遊んでもらっても全然楽しくなんてない。

楽しいと思った事はあったかもしれないが、それも今となっては遠い思い出だ。

今日、17歳の誕生日の日に俺一人を残して屋敷中の人間が死んだ。

殺人事件……それにしてもなぜ俺一人を残したのか、屋敷の金はそのままで、未だに犯人の動機は不明。

そもそも犯人さえ分かっていないのだが。

もう疲れた。本当に可哀そうな人間だよ、俺は。

警察は犯人を見つけないとダメなんて言っているが、もうどうだっていい。

悲しい?そんな気持ちはこれっぽっちもないね。

いや、少しはあるか。それでも、愛されてないと自分で自覚してる人間は、親が死んでもそこまで悲しまないもんなんだな。

遺産の相続は全部俺らしい。

金なんて、必要ないな。早く死にたい。

俺の親はどうやら俺をエリートみたいなものにはしたくなかったみたいだ。

だから普通の小学校に行かされて、普通の中学校に行かされて、普通よりちょっといい高校に入った。

そこについては感謝してるけど、いかんせん金持ちっていうのがバレると周りの目は一気に変わるんだ。

人によっては俺をパシリにしようとしたり、貧乏人を見下してるとか言い出したり……。

友達は少なからずいた。パシリや見下してるとか、そんなことを俺がしないと分かってくれてる友達だ。

でも、そんな友達も、今日は俺の誕生会に来てくれていた。


つまり、死んだんだ。


犯人だって、捜さないとダメなのかもしれない。でも探す気にはなれない。

探して何になる?

そんなことを考えていると、警察の人が来た。

犯人を捜すのに必要な手がかり?もう言っただろ、もうないんだ。

……そうだな、少し父さんや母さんの部屋を探してみるかな……。


廊下を歩いていると、なんだか血の匂いがする。

一体誰の血の匂いなんだろうか。みんな死んでいるから分からないな。

何故か血の臭いと一緒に、少し生臭い強い臭いがした。

なんの臭いかは分からないが、人体の構造なんて俺は詳しく知らないし、それが普通のかのかもしれない。

俺はそう思って特に気にも留めずに、階段を歩いて行った。

ここはまだ警察が介入していない、二階建ての屋敷の二階で、一番奥でそれでいて真ん中の部屋。

大きさもそこまで大きくはないが、本がたくさんある。

いや――――金持ちと貧乏人の部屋の大きさの感覚は違うだろうしな。何も言えないや。

「なんで今ここに来たんだろう」

そんな言葉が唐突に口から零れ落ちた。

そうさ、なにかがあるかもしれないからだ。

扉を開けて入った部屋は、真ん中の奥に大きな窓があって、その手前に父さんの机がある。

とても大きい椅子に座って、俺は引き出しを開けてみた。

木製で出来た引き出しは、キィーと言った軋みかけている音を鳴らしながら開いた。

中には、家族の写真と、俺の小さいころの写真と日記が入っていた。

俺が小学生と、中学生の入学祝の時の写真だ。

こんなの、持ってたんだな。

俺は軽く息を吐きながら、俺の小さいころの写真を見る。

後ろに書いてある日付には、1967年と俺の誕生日が書いてある。

俺の生まれて一年後の写真なのか。

いろんな思いが胸からあふれる。

次に日記を開いた。

日記の1ページ目にはこう書かれていた。

『これでもう12冊目だな。母さんと結婚してから不定期に書いて来た日記もとっても多くなったもんだ。陽が気付いたらもう17歳なんて……去年も思った事だが、月日が流れるのは早い。来年には陽も大人か。』

それからパラパラとページをめくっていく、そしてそのなかで――――最後のページにはこう書かれていた。

『今日は洋の17歳の誕生日だ。楽しみか楽しみではないかと聞かれたら楽しみだ。いつも陽には凛々しい大人として見られるためにあまりはしゃいだりしないが、今年もできるだろうか?仕事が忙しくていつもかまってやれないが、今年ぐらいはどこか旅行にでも行きたいな。そうだ、陽が小学生ぐらいの時に行きたがっていたロンドンにでも行こうか、仕事をもっと頑張れば休みが取れるだろう。』

……なんなんだよ父さん、いつも誕生日は祝ってくれないと思ったらそういう事かよ。

仕事が忙しいのは知ってるけど――――仕事っていうのは仕事が出来る人に頼むもんなんだ。それを頑張ったらもっと仕事増える気に決まってんだろ。

なんだよ、ガキのころに騒いでそんなことも覚えてたのかよ。

俺が、まるで俺が一人で勘違いしてたみたいじゃないか。

俺は――――俺は、なにをしてたんだ……。

悲しくないなんて、そんなことは――――ない。

俺が一人で勘違いしてたんだ。なら何をする?簡単だ、犯人を見つけてやる!

俺は走りながら今度は母さんの部屋に向かった、大切な仕事の資料や、家の通帳、下手をすれば家宝だってみんなあそこだ。

いきよくドアを開けて、急いで父さんの部屋と似た間取りの部屋に入る。

椅子にドカッっと座り、引き出しを勢い良く開ける。

日記などはなかったが、色んなものが入っていた。その中で一つ気になったのがとあるメモだった。

『遺産を狙っている輩がいるようです。注意してください。By 本田 松郎(ほんだ まつろう)』

本田……?どこかで聞いた事があると思ったら父さんの秘書じゃないか。

父さんが社長で、副社長が母さん、そして二人の秘書をしているのがこの本田 松郎だ。

本田さんに聞いてみようかな、いや……誕生日会には来ていないしな。とりあえず警察に渡そう。

俺は他にも部屋のあっちこっちを探してみたが、特にこれといったものはなかった。

通帳とクレジットカードと財布、これらはすでに持っているし、家の相続やらは全て自分の部屋にある。

警察に先ほどのメモを渡すと、彼らはすぐに本田さんの身元、関係などを聞いて来た。

少しの可能性とはいえ、警察にとっては有益な情報だからだろう。


それから数日が立った。


犯人は未だに不明、だが少しある事が分かった。

本田さんが行方不明になっていることだ。

もしかしたら犯人かもしれない。だが、あのメモに書いていたのは注意してくださいとのことだ。

わざわざ犯人がそのようなメモを残すことは考えにくい。

さて、一体どうしようか。学校には行かなくて良いらしい。とはいっても、ちゃんと行かないと留年はするそうだ。

気分も乗らない、うつ病じゃあるまいしな。

家はもう警察に隅々まで捜索してもらった。もう俺にはなにもできない。

それに、なにもしたくない。

本田さんは一体どこにいるんだろうか、あのメモを見る限りあまりその線は考えたくないが――――その遺産を狙っている輩に……か?

そのようなことを考えていると、まさか捜索命令の出されている本田さんが家に来た。

警察にはもう言ってあると彼は言った。

話の内容はどうやら会社を継ぐかどうかの話らしい。

無理だ、そんな知識は俺に持っていない。

ということで社長は俺で、代理が彼になった。実際はそれが妥当だろう。

一応彼は社長と同じくらいの権限を持っていることになったのだ。

その話が終わると、逃げるように本田さんは帰って行った。

俺はそれを見送っていくために一階には飼育されている亀がいる。

亀は二匹いるのだが、そのうちの一匹の亀の頭がなくなっていたのだ。

つまり、亀が死んでいる、ということになる。

おかしい、亀の頭がなくなるなんて一体どういうことなんだ。


それから数日後だ。

家は取り壊す予定だ、あんなにでかい家なんて必要ない。

そして会社は株式なんだが……どうやらうちの会社は大暴落したらしい。

借金はそこまでだが、会社は取り壊しになった。

全部本田さんのせいだ。いや、もう さん なんて必要ないな。

もちろん俺には持ち金がある。切り詰めればアルバイト生活でも一生を過ごせる程度の金はある。

だが、俺は本田を怪しいと思い、警察に言って一度二人で警察署で話すことになった。

その結果は、彼が自白した。殺したのは自分だと。

なんとあっさりしているのか、もっと迷宮入りするような難事件かと思ったのに。

どうやら話を聞くと会社の経営があそこまで難しいとは思わなかった、だそうだ。

俺を生かした理由は簡単で、皆殺しよりはメモなどを残したおかげでバレないだろうと思ったらしい。

ふざけてるのか、もちろん俺は法で裁いてもらうことにした。

全部でメイド、執事を含めて12人。

これだけの人物を殺すのに使った道具はなんと亀だという。

一匹の亀が廊下に歩いていると言って彼は一人一人殺して行ったのだという。

どうりで亀の頭がないはずだ、そして廊下が生臭かったわけだ。

わけの分からない凶器だが、亀は後頭部でも殴れば人を殺せることが分かった。


俺は父さんと母さんの墓に行って一言だけ呟いた。

「今までありがとう」

そう言って、俺は新しい家に向かった。小さい家だけど、俺には十分だ。

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