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男が少なすぎるこの世界で、自分を負けヒロインだと思い込んでいる幼馴染と俺の【遺伝的相性】が最高だと判明してしまったんだが  作者: メソポ・たみあ
第2章 関係を進展させたい幼馴染

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第9話 屋上で匂いを確かめ合う二人


 なのかに呼び出された俺は、彼女と一緒に校舎の屋上へと向かった。


 俺たち二人は、よくここで昼食をとる。


 屋上は見晴らしもよく町の眺めを一望できて、真っ青な晴天の日に太陽の下でご飯を食べると、もう最高に気持ちがいい。


 運のいいことに、今日も空模様は快晴。


 絶好の屋外ランチ日和で、本来なら俺となのかの談笑も弾む、はずなのだが――


「「……」」


 ベンチに座ったまま、俺たち二人は黙りこくっていた。


 ……相変わらず空気が重い。


 クラスメイトの女子たちの囲い込みから連れ出してくれたのは助かるけど、こっちはこっちで気まずいなぁ……。


 ちなみに、俺がなのかに連れ出されたことでクラスメイトの女子たちは酷く残念そうにしていた。


 たぶん俺となのかの間になにかがあったのを見抜いて、取って食おう(・・・・・・)と考えたのかもしれない。


 くわばら、くわばら……。


 とはいえあんまりクラスメイトを邪険に扱うのもアレだし、誘いを断った件は後でもう一度平謝りしておこう。


「――ねぇ、ハジメ」


 俺がアレコレ考えていると、ようやくとばかりになのかが切り出す。


「えっと、さ……昨日は、ごめんね」


「い、いやその、昨日のはお互い様っていうか……!」


「昨日の私、どうかしてた。ハジメの匂いを嗅いだら、頭の中が真っ白になっちゃって……」


 彼女はしょんぼりとした表情で、なんとも申し訳なさそうに謝る。


 ……ん? あれ?


 もしかしてなのか――俺が嫌がってたと思ってる?

 押し倒して無理矢理に迫ったせいで、俺に嫌われたと思ってる?


「だからその……本当にごめん! もうあんなことしないから――!」


「ちょ、ちょっと待ってなのか」


 幼馴染の俺相手に頭を下げようとする彼女を、俺は慌てて制止。


「もしかして……俺が怒ってると思ってる?」


「え……違うの?」


「違うよ! 怒ってるワケないよ!」


 俺が怒る?

 なんで???


 むしろ俺は、なのかの方が怒ってるんじゃないかと思ってたくらいなのに。


 あんな状況にまでなって、男である俺の方からではなく、女子であるなのかに手を出させてしまったから。


 本当なら、俺の方が腹を括らなきゃならなかったのに。


「むしろ俺は、なのかの方が怒ってるんじゃないかって心配で……!」


「わ、私が怒る? どうして?」


「いや、だって……」


「「…………」」


 お互いに見つめ合い、頭上に〝???〟を浮かべ合う俺たち幼馴染。


 そして――俺は思わず、フッと笑ってしまった。


「……なんか俺たち、お互いに勘違いしてたみたいだな?」


「うん……そうみたい」


 なのかもクスッと笑う。


 ようやく、俺たちの間に流れていた気まずい空気が、少しだけ緩和された気がした。


 なのかは小さく息を吸い、


「私さ……ハジメと遺伝的相性がいいって聞かされてから、なんだか自分がおかしくなっちゃったような気がして」


 吐露するように、語り始める。


「昨日もハジメの匂いを間近で嗅いだら、その、が、我慢できなくなっちゃって……」


 ベンチの上で膝を抱え、気恥ずかしそうに話してくれるなのか。


 そんな彼女の姿は、やっぱりとても可愛らしい。


「でも冷静になってみたら、ハジメの気持ちをちっとも考えてなかったなって……」


「俺の気持ち?」


「ハジメはさ――私のこと、どう思ってるの?」


 膝を抱えたままチラッとこちらを見て、なのかはそんなことを聞いてきた。


 ――それは、俺にとって核心めいた質問だった。


 俺が、幼馴染(なのか)のことをどう思ってるか。


 そんなの決まってる。

 ――好きだ。


 俺はなのかのことが大好きだ。


 幼馴染としてだけじゃなく、一人の女の子として。


 ――今、だ。

 今伝えなきゃ。


 なのかが好きだって。

 ずっと好きだったって。


「――!」


 言おうとした。

 でも――〝好き〟という一言を、どうしても口から出せない。


 出そう、言おう、としても喉の奥で言葉が引っ掛かり、意志と反して奥歯がギリッと上下に噛み合ったまま離れてくれない。


 ……異性に好意を伝えるのが怖い。


 いいや、違う。

〝幼馴染〟という関係が変わってしまうのが、俺は怖いんだ。


 幼稚園の頃から、俺となのかの関係性を紡いできた、たった一言の言葉。


 その関係性が変わった先で、俺たちが俺たちのままでいられるのか――。


 それが、俺にはわからなかったから。


「そ、の……昨日されたことは全然、嫌じゃなかったっていうか……」


 しどろもどろに、そんな不甲斐ない言葉を漏らすのが、今の俺には精一杯。


 幼馴染(・・・)から目を逸らし、顔が熱を帯びて赤くなっているのを自覚し、どうにかなのかに届く声量でブツブツと言う。


 俺は内心やぶれかぶれになって、


「す、少なくとも……なのかはいい匂いだった!」


「――!」


 俺の発言を聞き、少し驚いたような顔をして見せるなのか。


 彼女はしばし沈黙した後、


「えっと……それじゃあ、もう一回嗅いでみる?」


「へ?」


「私の匂い……もう一度確かめてみてよ」


 そう言って、指先でブラウスの襟をクイッと押し下げる。


「か、嗅ぐって……今!?」


 予想外すぎるなのかの行動に、流石に俺は驚きを隠せない。


 だが彼女に引き下がる様子はなく、


「今! いいから、ほら……」


 俺の方にグッと身を乗り出してくる。


 ……こうなると、案外となのかは頑固だ。

 やるまで引き下がってくれないだろう。


 仕方なく――俺は彼女の首元に顔を寄せ、すぐ近くでスンスンと鼻を鳴らした。


「……ど、どう?」


「…………やっぱり、いい匂い」


 昨日と同じ、甘く爽やかな香り。


 でもなんとなく、昨日より少し汗っぽい香りが混じってるかな?


 けれど決して不快な香りじゃない。


 むしろ人の身体が放つ自然な香りって感じだし、これがなのかの遺伝子が放つ香りだと思うと……正直興奮してくる。


 やっぱり、いつまでも嗅いでいたくなる……。

 そんな香りだ。


「――ハジメ、交代」


「え」


「今度は……私の番」


 なのかは俺の両肩を手で掴んで、グイッと身体を引き離すと――今度は自らの顔を俺の首元に近付けてくる。


「スン、スン……」


「な、なのか……?」


「ハジメも……やっぱり、凄くいい匂い。それに、昨日よりなんだか濃い……」


 なのかの瞼がとろん(・・・)とする。

 同時に、そこはかとなく瞳の奥に〝熱〟が宿ったような――


「……ねぇ、ハジメ」


「な、なに?」


「ハジメは、昨日の(・・・)が嫌じゃなかったんだよね……?」


「う、うん」


「それじゃあさ……キス(・・)、してもいい?」


もし少しでも「面白い」と思って頂けましたら、何卒ブックマークと★★★★★評価をよろしくお願い致します!<(_ _)>

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