卵
ヴイモンスターズ リノビー の金属の体が、がらんとした遺跡の床に倒れた。
戦いが終わったというのに、まだ心臓がバクバクしている。
「ふぅーっ!」
パルスバン (パルスバン) は体をブルっと震わせ、最後の静電気を飛ばした。そして、誇らしげに振り返る。
「へへっ!やっぱり俺が最強だな!」
愛子 (橘 愛子) はまだ状況を飲み込めていなかった。
「パルスバン… あんた、本当にリノビーをぶち抜いたの?」
「まぁな!古い機械なんて、要はどこを狙えばぶっ壊れるか知ってれば楽勝よ!」
パルスバンは指を鳴らし、小さな火花を散らした。
「名付けて… 電撃式エンジニアリングブレイク!」
「いや、それ名前つける必要ある?」
賢司 (荒川 賢司) が冷静にツッコむが、パルスバンは得意げに胸を張るだけだった。
しかし、その時だった。
リノビーの体が、崩れ始めた。
「……え?」
まるで空間が砕けるように、金属の破片が光る粒子となり、宙に舞う。
青と金の光が揺らめき、空中でひとつの形を作り始めた。
「まさか……」
賢司が息をのむ。
愛子は目を見開く。
この光の流れ、どこかで聞いたことがある。
そして、それは形を成した。
「……卵?」
床にエメラルドグリーンの卵が現れた。
それは、心臓の鼓動のように、ゆっくりと脈打っていた。
パルスバンは腕を組みながら、長く口笛を吹いた。
「ほーらな。ヴイモンスターズのサイクルってやつよ。」
愛子は目を瞬かせたまま、震える声で尋ねる。
「こ、こんなの、毎回起こるの?」
パルスバンは耳をピクっと動かし、キョトンとした顔をする。
「え、知らなかったの?」
「……見たことない。」
賢司は慎重に卵を拾い上げる。
「これはただの卵じゃないぞ……リノビーの卵だ。」
「えっ、それって…問題?」
愛子は不安そうに卵を見つめた。
賢司はため息をつく。
「問題というか……これは希少種かもしれない。もしギルドに知られたら……」
「ハイハイ、もうわかった。」
パルスバンが面倒くさそうに手をひらひらさせる。
「ギルドが見つけたら、即お持ち帰り&研究対象、って話だろ?」
「もしくは、適切に育ててもらえる可能性もある。」
賢司が冷静に反論する。
「俺たちが育てるより、安全な場所に預けるべきだ。」
パルスバンはふんっと鼻を鳴らす。
「でもよぉ……こんなレアな卵、俺が研究したほうがよくね?」
「いや、よくないだろ!」
愛子と賢司が同時にツッコむ。
愛子は額に手を当て、深いため息をついた。
「ねぇ……この話、一回落ち着いてからにしない?」
賢司はしばらく卵を見つめた後、小さく頷いた。
「……そうだな。でも、ギルドには報告する。」
パルスバンは大きく舌打ちをする。
「チッ、やっぱそうなるかー!」
帰り道、3人はほとんど口を開かなかった。
オレンジ色の夕日が森を包み、村の道が見えてきた。
しかし、愛子は違和感を覚えた。
何かが……おかしい。
――ほんの一瞬、世界が揺れた気がした。
「……え?」
視界がブレる。
音が遠のく。
地面が消えたような感覚。
次の瞬間、すべてが元に戻った。
「……っ!」
愛子は足を止め、思わず肩を抱いた。
「……おい、大丈夫か?」
パルスバンが彼女を見上げる。
愛子はとっさに笑顔を作った。
「う、うん。ちょっと疲れただけ。」
パルスバンはじっと愛子を見つめたが、深く追求はしなかった。
やがて、キョウテン村 (拠点村) に到着した。
通りにはランタンが灯り、焼き立てのパンの香りが漂っている。
賢司はまっすぐギルドの方向へ向かった。
「俺は報告の準備をする。また明日。」
そう言って、卵を抱えたまま、姿を消した。
パルスバンは大きくあくびをしながら、愛子の方を見た。
「なーんか、まだ心配事あるだろ?」
愛子は一瞬躊躇した。
彼女は言いたかった。
「この卵、何かおかしい。」
「さっき世界が揺れた気がする。」
だけど……
言葉にはしなかった。
「……疲れてるだけ。」
パルスバンは不満げに鼻を鳴らしたが、すぐに笑った。
「まぁいいや!とりあえず、飯食おうぜ!」
愛子は思わず吹き出した。
「……あんた、いつもそればっか。」
「それが俺の良さってやつよ!」
二人は家へと向かった。
愛子の胸のざわめきが、止まらないまま。
みなさん、ヴイモンスターズ Re:Alive を読んでくれてありがとう!
これから、新しい章は毎週水曜日と金曜日に更新されます!
愛子、パルスバン、賢司の冒険は**まだまだ続く!**
次回もお楽しみに!