33.気軽に話せる中学からの友達
ホームルームが終わったあと、友達から実行委員になりたい理由をいつ聞かれてもすんなり答えられるようにと、色々考えていたが杞憂に終わり気づけば放課後になっていた。
(先生、びっくりするだろうな)
委員会が行なわれる会議室へ向かう足取りは軽く、先生の反応をみるのが楽しみで仕方がなかった。
会議室内の様子をドア越しにそっと伺うと、すでに複数名の生徒が座っていたが、先生はまだ来ていないようだった。
(ドアの近くの方が、すぐ先生気づいてくれそうだよね? それとも少し経ってから気づくパターンの後ろの席がアリかな?)
「……七瀬?」
どこに座るのがいいか悩んでいると突然後ろから自分の名前を呼ばれて、身体がビクッと震える。驚きのあまり勢いよく振り向いた為か、声を掛けてきた人にぶつかってしまい、慌てて身体を離しては頭を下げて謝る。
「ご、ごめんなさいっ」
(わーっ、やっちゃった!)
「くくっ」
いたたまれない気持ちでいっぱいの私に、頭上から笑いをもらす声が聞こえてきて、少しムッとする。
(ドア付近にいて邪魔していたのも、ぶつかってしまったのも私だけれど、謝ってる相手にそんな笑わなくてもいいのに……)
そう思いながらも、なんとなく目の前の人に覚えがある気がして。
「相変わらずだな、七瀬」
記憶を辿っていると、もう一度頭上から声が聞こえて、それが確信に変わる。
「そっちが急に驚かすからでしょ」
顔を上げて軽く睨んではそう口にすると。
「悪い、驚かすつもりはなかったんだけど」
頭を掻きながら悪びれた様子をみせる。
彼は佐藤陽向。鈴と同じく、中学校からの付き合いだ。気さくな性格で、誰とでも仲良くなれてしまう彼は性別関係なく友達が多いようで、私にとっても気軽に話せる男子生徒の一人である。
「七瀬っぽいなって思ったら、つい口に出してた」
「私っぽいって……」
(そんな分かりやすかったかな?)
「そういえば、ここにいるってことは佐藤も?」
「そそ。よろしくな」
八重歯を覗かせながらニカッと笑う佐藤につられて笑みを浮かべる。
「おー、陽向じゃん」
そう声が聞こえて目を向けると、男子生徒が片手を上げながら近付いてきた。
「実行委員とかマジついてねーよ」
「そう? 祭り楽しいじゃん」
「もしかして、自分から?」
「うん」
「まじかよ」
(確かに佐藤なら有り得る)
佐藤は中学の時もみんなが嫌がる委員長を率先してやっていた。たまたま隣の席だった私が、なぜか巻き添えをくらって副委員長をやらされたのも、今ではいい思い出だ。
盛り上がっている佐藤達を横目に会議室へ入り、空いていた後方の席に腰掛けると。
「え、やば、佐藤先輩じゃん。どうしよ、めっちゃ嬉しいんだけど」
佐藤の方をチラチラ見ながら嬉しそうに話している女の子たちが目に入る。佐藤のことが好きなんだろう。
(わかる、好きな人と一緒って嬉しいよね)
それにしても、後輩にまで人気があるとか恐るべし佐藤。
「全員集まったかー?」
「!」
根岸先生の声とともに、先生が室内に入って来るのが見えてドキッとする。
先生は私がいることに気づく様子もなく、根岸先生と軽く打ち合わせをしたあと、こちらに背を向けて徐に黒板に書き始めた。どうやら委員長と副委員長を決めるらしい。
(あ……寝ぐせ直ってる。ハネてるの、気づいたんだ)
「七瀬はやんないの?」
後ろ姿の先生を見ながら思わずニヤけそうになっていると、いつの間にか隣に座っていた佐藤に声を掛けられて、またも身体が小さく震える。
(佐藤? え、なんで隣? さっきの男子と一緒じゃなかったの?)
「……なにを?」
聞きたいことはたくさんあったが、なんとか飲み込んでその一言を口に出す。
「副委員長」
「え?」
「俺委員長やるからさ、七瀬副委員長やんなよ」




