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24.花火大会

 1ヶ月ほどあった夏休みも終わりに近づき、私は明日の花火大会の為の準備に勤しんでいた。

 淡いオレンジ色を基調とした花柄の浴衣に映える、濃いオレンジ色の帯。いつもは普段着で行くのだけれど、今年は母がこの浴衣を買ってくれたから、ヘアスタイルはどうしようか、小物はどうしようかと楽しみで仕方がない。


【明日は友達と花火大会に行きます

先生は見に行きますか?】


 今日も先生へのメールを送る。部活もあるだろうし来ないだろうなと思っていたら。


【見回りに駆り出されることになったから、一応行くけどなー

天気はいいらしいけど夜道には気をつけろよ】


 先生も来るとわかって、さらにやる気が沸いてくる。会えるかなんてわからない。でも、会えた時のために可愛い自分でいたい。

 ギリギリまで悩んだ結果、髪は編み込みのアップスタイルにすることにした。帯とお揃いの色の髪飾りをつけて、ほんのすこし化粧もして。


【今から花火大会に行って来まーす

浴衣着たからこれで私も可愛さ増し増しです

先生も見回り気をつけてくださいね】


 こんな私を見たら先生も少しはときめいてくれるかも、なんて妄想しながら勢いで先生にメールを送ってみたけれど、いつもより早い時間だからか返事はなかった。


(まぁ、しょうがないよね)


 鈴との待ち合わせ場所は、家から15分程歩いた所にある駅前だ。

 普段着慣れない浴衣と履き慣れない下駄のせいか、いつもより足が遅くなってしまい5分遅れで待ち合わせ場所へ着くと、先に待っていた鈴がこちらに気づいて手を振る。


「ごめーん! 歩き慣れなくてさぁ」

「いいよいいよ。そんな待ってないし……それより、いいじゃん。浴衣」

「ほんと? ありがとう。鈴もすっごく似合うね」


 レトロ風の花柄が描かれた紺と白を基調とした浴衣に、さし色の黄色の帯がとてもお洒落で鈴によく似合っていた。

 

「ありがと葵! おっと、そろそろ行かないとね」

「だね! 電車乗ろう」


 花火大会は街の中にある一番大きな川で行われるので、電車で私たちの学校がある街へ向かう。いつもは人がいない車内も今日はとても混んでいた。


「ねぇねぇ」


 外を眺めていると、鈴が耳打ちしてきた。


「ん?」

「葵の浴衣姿、先生に見せたかったね」

「うん……でも先生、似合うとか可愛いとか言わなさそうだけどね」

「あー、乙女心わかんなそーだもんね」


 鈴がうんうんと頷きながらそう口にして、先生が聞いてたら怒りそうだねと、二人でクスクス笑う。

 この間鈴に先生とメールをしていることを話したのだが、案の定すごく驚いていて『先生も葵に気があるんじゃないの?』と言われた。

 そうだったらこれ以上嬉しいことはないし、先生の言動を振り返ってみて、思い当たる節がない訳でもない。でも、そんなこと本当に有り得るのかなと心の何処で思っている自分がいて、勘違いだろうなという結論に辿り着く。

 

「うっわぁー、すっごい人……」

「うん、流されないようしなきゃね」


 駅に着くと既に大勢の人が会場の方へ流れていた。人の波に逆らわないように暫く歩いていると、別の道から合流してきた人の中に見知った顔がいた。


「あ、鈴じゃーん! 葵ちゃんも~」

「なになに、そっちも花火?」

「この流れに歯向かわず歩いてるってことは?」

「聞くまでもないわね、こりゃ失敬」


 鈴と同じクラスの子達だった。

 同じ花火を見に行くのなら一緒に行こうということで並んで歩いていたのだけれど、いつの間にか人の波に流されてしまい、気付いた時には一人になってしまっていた。


──ズキッ


「いたっ!」


 右足に痛みが走り視線を落とすと、鼻緒が赤く滲んでいた。足の指が擦りむけたらしく歩く度にズキズキ傷む。

 会場までいけば鈴達と合流できるだろうけれど、さすがにこのまま歩いていけそうにはない。

 そう思った私は、人混みから外れて座れそうな場所を探す。


(あっちなら邪魔にならないかな……)


 反対側の歩道の縁石に腰掛けて、鈴に電話をかけようと持っていた巾着を開ける。


(……あれ?)


 スマホがない。どこかに落としてしまったのだろうか。

 記憶を遡って最後に使用したのはいつかと考える。


(えっと、確か先生にメールしたあとテーブルの上に置いたよね?)


 持ってきた記憶がない所をみると、そのまま家に忘れてきた可能性が高い。


(どうしよう……足は痛いし、連絡は取れないし……)


 涙で目が滲んで、周りの人がぼやけて見える。

 零れそうになる涙を袖で拭っていると、ふいに肩を叩かれた。

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