第2話
ヒーロー登場回
私が少年に近付くと、少年の後ろから16歳ほどの赤髪の男が現れ、少年を背に隠すように前に出た。
「彼に何か用事でもありますか?」
えっと、なんか騎士っぽい服装のイケメンお兄さんがにこやかながら圧力を感じる表情でこちらを見てくるんだけど、もしかしてこの男の子っていいところのお坊ちゃん?
いや、お兄さんが本物の騎士ならそれを従えられる相手は貴族…あれ?私もしかしてまずいことしでかした?
そう考えていると、ゲイルさんが私に追い付いてきたようで、目の前の騎士様に口を開いた。
「騎士様、申し訳ない、うちのお嬢様はそちらの方に害をなそうと近付いたわけじゃないんだ。話を聞いてやってくれないだろうか。」
ゲイルさん…私が勝手に突っ走って問題起こしたのにフォローしてくれるなんて…本当に出来た人だ。
「ヴェイグ、彼女さっきの口ぶりからすると、さっき飛ばしていたアレのことが気になったと思うんだ。だから大丈夫だよ。」
そう言ってこちらにニッコリと笑顔を向けてくれる天使、天使じゃなかった黒髪金目の少年…ん?黒髪金目って…金目!?
「…もしかして貴方様は…第三王子殿下様…でしょうか?」
そう、金目はこの国、グレーティア王国の王族に出る特徴で、黒髪、そして年齢から考えるとおそらく彼は…
「気付いてなかったのか…この方はこのグレーティア王国第三王子フランベルク・デイム・グレーティア王子です。」
そう、赤髪の騎士様、ヴェイグって呼ばれてたっけ、彼が私の疑問に答えてくれる。
やっべぇやらかした、と思った私に王子殿下が苦笑しながら口を開く。
「そうだよ、城では問題行為ばかり起こす、問題児なんて言われているフランベルクさ、よろしくね?」
第三王子が問題児とか初耳ですが…っとそれよりも
「ええと…私は城下の商団を営んでいるウェルニア商会の娘でミリエルティアといいます。」
「なるほどミリエルティア嬢、いい名前だね。そういえば僕がさっき飛ばしてた玩具に興味があるんだよね?」
はい、と私にさっき飛ばしていたものを手渡してきた。
おおお…これは…!
中に魔力を貯蔵できる魔石が入っててそれをバッテリー代わりにしたのか、それに風の魔力を注いで魔力を貯蔵、なるほどなるほど、それで回転翼は、バッテリーに繋がってるから…ってん?」
あれ?皆さんなんかびっくりした表情でこちらを見てらっしゃる?いやゲイルさんは苦笑してるわ。
「驚いた…君、幼いのにこれの構造が分かるんだね、てっきりこの玩具で遊びたいのかなって思っただけだったんだけど。」
「あ…もしかして口に出てましたか…?」
恥ずかしい、王子殿下の前で失態である。
王子は、笑顔で別に気にしないでいいよと言った。
「それで商人の娘って言ってたけど、もしかしてこれを商品化したいとかかな?」
「いえ、そうじゃなくてですね…それだけのものを作れる技師の方の方が気になりまして、可能ならその技師の方に私のお仕事のパートナーになっていただきたくて…」
「へぇ…技師の方にね…君は子供なのに仕事を任せられているの?」
「いえ、その家の手伝いをしたいと思ってまして…ですがまだ子供なので、案があっても実績がないと話も通せないと思うんです。その実績作りの為に協力者を探している最中でして。」
王子が何か気になることでもあるのか質問をしてくる。
「その実績の為の案って、聞いてもいいかな?」
?なんでそんなことが気になるんだろ…?まぁ言ってもわからないと思うし別に構わないんだけど…
「一応段階ごとに進めていこうと思っているんですけど、まず最初に考えているのは発電機…ですね。」
「発電機?」
「はい、さっきの玩具の魔石のバッテリーと同じようなものなんですけど、魔石のバッテリーって持続性が薄いんです。込められる魔力量には限界があるし、大きなエネルギーを生み出すには相応の大きさが必要になるんです。それって現実的ではないですよね?」
魔石とは、鉱山から採掘される魔鉄石と一緒に採掘される石でそれも魔力を溜める性質を持つものだ、これの最大の利点は再利用できること、つまりは充電池なのだ。
「それを解決できるのが発電機、少量の魔石で爆発的なで雷属性のエネルギーを生み出すことのできる魔法機械です。」
この発電機も最初の一歩であり、これを使用し前世で使われているような便利なものを作り上げることが最終目標である。
「…魔石よりも効率的で大きなエネルギーを生み出せる…へぇ、面白そうだね」
「と、いっても私はそういったものを思いつける頭はあっても技師になる為の力が足りてなくて…」
それを聞いて王子はふむ、と考えるしぐさをする、しばらく考えたのち王子は口を開く。
「わかった、じゃあ僕が君の協力者になるよ、面白そうなものを作れれば僕はそれでいいし。」
…え?それってどういうこと?
「…ッ殿下!勝手なことをされては困ります!ただでさえ両陛下は殿下が何かをするたびに頭を悩ませているのに!」
「だったら城を出ていくよ、継承権なんてとっくに放棄しているし、二人の兄上と姉上がいれば僕がいなくとも大丈夫だろ?」
「そういう話ではなく!」
えー、なんか大事になっちゃってる?というかまさかこの口振りだとあのヘリコプター作ったの殿下?
「もう決めた、それに彼女が考案したものが完成したなら、間違いなくこの国に大きな貢献ができるんだ。国民の為に貢献できるなら王族としてこれ以上にない働きだと思うけどね。」
ヴェイグさんは、頭を抱えながらどうすればいいんだ…と口に出す。
うん、えっとこれ、どうしよう?収拾がつかなくなってきたんだけど?
「とりあえず今日は帰るよ、父上にこの事を言わないといけないしね、僕は自分の為そして国の為に、ミリエルティア嬢は、君の為、両親の為、商会の為に、お互いにいい協力者になろう。堅苦しいのもなんだし、これからはフランって呼んでね?協力者さん?」
と言って王子、フラン様に手を握られる。
私はえっ、はいとしか言葉を返せず、彼は満足そうに笑うと私に背を向け去っていった。
お待ちください!とヴェイグさんが追いかけて行く姿を見ながら、私はゲイルさんに帰りましょうか、と声を掛けられるまでその場に立ち尽くすのだった。
ほんとはもっとふわふわ王子だったのに、なんというか暴走機関車になってしまった…どうしてこうなった…




