暴竜ファーブニル
セリオンは毒の雨事件を解決すると、駅からアウストリエン(Austrien)州の都リンツ(Linz)へと向かった。
セリオンはあらかじめ手配していたガイドを待っていた。
「すいません。その金髪碧眼で戦闘服にブーツを着用している方、あなたがテンペルからの使者ですか?」
「そうだ。君は?」
「私はビアンカ(Bianca)と申します。初めまして」
「初めまして、俺はセリオン・シベルスクだ」
二人は握手した。
「君がガイド……ドラッヘンベルク(Drachenberg)のガイドだな?」
「はい、そうです」
ビアンカは青いワンピースにブーツという服装だった。
髪は金髪でおさげにしている。
「ドラッヘンベルク――それがファーブニルの住みかなんだな?」
「その通りです」
「よし、俺をそこに案内してくれ。俺がファーブニルと決着をつける」
セリオンはガイドのビアンカの後をついて、ドラッヘンベルクを登った。
「ファーブニルはもともとベルゲン(Bergen)山脈に住んでいたそうです。そのベルゲン山脈に人間が来るようになってから、ファーブニルはドラッヘンベルクに移り住んだそうです」
「どういうことだ?」
「ファーブニルのもとの住みかは観光としてPRしたそうです。おそらく、ファーブニルは人間によって住まいを追われたのではないでしょうか?」
「なるほどな。あのファーブニルの怒りと憎悪、人間への敵愾心……人間によって住まいを追われたというなら、納得できる」
ビアンカは山の途中の門のあたりで止まった。
「ここから先はファーブニルの領域です。私はこれ以上は進めません」
「ああ、わかった。帰る方法はあるから、案内はここまでで十分だ。後は俺の仕事だ」
セリオンは遺跡に登っていった。
すると上空を旋回する竜がやって来た。
それはファーブニル(Favnir)だった。
ファーブニルはセリオンを見つめていた。
上空を旋回した後、ファーブニルは着地した。
ファーブニルが翼を広げて威圧してくる。
セリオンは大剣を出した。
ファーブニルの咆哮。
すさまじいプレッシャーがセリオンを襲う。
ファーブニルは長い首を伸ばして、セリオンにかみつこうとしてきた。
セリオンは後方に跳んで回避する。
ファーブニルは口から炎のブレスをはきつけた。
セリオンは蒼気を放出した。
蒼い闘気だ。
セリオンは蒼気を刃に変えて、大剣から撃ち出した。
蒼気の刃がファーブニルに飛んでいく。
蒼気の刃を放つ技「蒼波刃」である。
蒼気の刃は炎のブレスを斬り裂いた。
ファーブニルは両腕でセリオンを押しつぶそうとする。
セリオンは巧妙なステップでそれをかわした。
セリオンは蒼気を大剣に集めると、その剣でファーブニルの頭を打ちつけた。
「ギャオオオオオオン!?」
ファーブニルが悲鳴を上げる。
ファーブニルの巨体が倒れる。
ファーブニルはセリオンを見た。
その目には明らかに、怒りが宿っていた。
たかが人間ごときに屈服させられるという屈辱。
ファーブニルは翼をはばたかせて衝撃を出した。
セリオンは蒼波刃でファーブニルを攻撃した。
ファーブニルの体に傷がついた。
ファーブニルから赤い血が流れる。
「へえ、おまえの血は赤いんだな。俺たち人間と同じだ。奇遇だな」
再度、ファーブニルの咆哮。
セリオンの接近を阻止するつもりだ。
セリオンは蒼気を大剣に収束した。
セリオンは蒼気の波「翔破斬」を出した。
「ギャアオオオオオ!?」
ファーブニルの体を、翔破斬が傷つける。
しかし、ファーブニルへのダメージはそうでもない。
あくまで傷がついた程度だ。
セリオンの攻撃は致命傷にはなっていない。
それをセリオン自身が認識していた。
ファーブニルは翼をはばたかせた。
ファーブニルの口に赤い光が集まる。
ファーブニルの熱線だ。
ファーブニルはセリオンめがけて熱線をはきつけてきた。
セリオンはとっさに横によけて回避する。
「なんて威力だ……」
セリオンの攻撃には、あの熱線に対抗できる技はない。
熱線が直撃したところは地形が変わっていた。
ファーブニルは再び熱線をはきつけてきた。
それによって地面がはじけ飛ぶ。
セリオンは魔力で身体強化し、ファーブニルの頭の上まで跳んだ。
ファーブニルは気づかなかった。
セリオンはファーブニルに膨大な蒼気の一撃を叩き込んだ。
ファーブニルが地面へと落下する。
すさまじい音と、土ぼこりが立ち込める。
セリオンはもう一つの力を解放した。
セリオンの大剣に雷が発生した。
セリオンは別名「青き狼」、そして「雷の息子」である。
それゆえ、雷の力を操ることができた。
セリオンは必殺の一撃をファーブニルに繰り出す。
「雷鳴剣!」
雷電がファーブニルに襲いかかる。
雷電はまるで嵐のようにファーブニルの装甲を貫いて、肉体にダメージを与える。
これゆえに、アンシャルはセリオンをファーブニルのもとへ派遣したのだ。
ファーブニルは虫の息だ。
セリオンは大剣を、神剣サンダルフォンを、雷光で輝かせた。
これこそ、セリオンの真の最強技。
「雷光剣!」
雷光をまとった剣でセリオンはファーブニルを打撃した。
「ぎゃおおおおおおおおおお!!??」
ファーブニルが絶叫を上げる。
セリオンの雷光剣はファーブニルの命を奪った。
ファーブニルはドシーンと倒れた。
まるで大きな建物が倒壊したような音だった。
ファーブニルは青い粒子と化して消滅した。