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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Artemidora
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竜骨兵

セリオンがカミラと話をしていると、突然雨が降り出した。

「雨、か……」

「!? これは!?」

「どうかしたのか?」

「これは普通の雨じゃないわ! これは毒の雨よ!」

「毒の雨だと!?」

「おそらく邪悪な存在が意図的に降らせているんでしょうね」

「これを止める方法はあるのか?」

「私ならこの雨を降りださせた地点に行けるわ。でも、私に戦うのは無理ね」

「問題ない。俺はそういうことはプロフェッショナルだ。戦いは俺に任せてくれ。俺が敵と戦う」


毒の雨が降りそそぐ。

この雨によって人々は苦しみだした。

中には運ばれて病院に運ばれる者も出てきた。

それを見てセリオンは。

「これはまずいな。早くこの雨を止めないと、多くの犠牲者が出る!」

「ええ、そうね!」

「それにしても、俺たちにはこの雨は何ともないが? これはどうしてだ?」

「気息の修業をあなたはしたでしょう? そのせいよ。気息耐性がある人には魔法の雨は通じにくいのよ」

「なるほどな。そういうことか」

「じゃあ、私の後についてきて。この雨の発生源に行くわよ?」

セリオンとカミラはファドゥーツの郊外にある毒の沼に来ていた。

沼にはキノコ花獣かじゅうが漂っていた。

セリオンたちの行く手を阻むように、キノコ花獣は群がってきた。

「さっそく、敵さんのお出ましよ。さあ、あなたの出番だわ。それで、この群がる敵をどうするの?」

「一気に殲滅する! はあああああああ!!」

セリオンは蒼い闘気「蒼気そうき」を出す。

闘気は気息を源とする。

そのため、闘気の訓練はまず気息の訓練から始まる。

気息は精神の上位領域であり、自発的活動の源である。

「くらえ! 翔破斬しょうはざん!」

セリオンは膨大な蒼気の衝撃波を、キノコ花獣めがけて放出した。

キノコ花獣たちは蒼気の衝撃を受けて、体をバラバラに四散させた。

そうしてキノコ花獣の死体が沼に浮かぶ。

「すごい……まさかこれほどなんて……」

「驚くのはまだ早いぞ?」

セリオンは先へとカミラを促す。

「わかっているわ! それでは先を急ぎましょう!」

セリオンとカミラは何もない丘の上に到着した。

「どうしたんだ、カミラ? こんな場所に何かあるのか?」

「そうよ。ここに魔道士の塔があるわ」

「俺には何も見えないんだが?」

「それはそうね。見えないようにしているんだから……光矢こうや!」

カミラは光の矢を射撃した。

光の矢はガラスが割れるようなヒビを空間に入れた。

そしてその結界は砕け散った。

そのあと、魔道士の塔が姿を現した。

「これは! こんな塔があったのか! 俺一人では見つけられなかっただろう。カミラと来て正解だったな」

「この塔の中に雨を降らせているぬしがいるわ。私にできるのはここまでよ。後はあなたに託すしかないわ」

「わかった。俺が行ってくる!」

塔の中は螺旋階段になっていた。

セリオンはこの螺旋階段を登る。

そして頂上で扉を開けた。

その中は広間だった。

その広間の奥に、一人の魔道士がいた。

「おまえがその毒の雨を降らせているのか?」

「ククク、その通り。この毒の雨で人々を苦しめているのはこの私だ。それにしても無粋な客人よな。マナーがなっていないと見える」

「マナー? おまえ相手に媚びる気はない。ではどうする? この雨を今すぐ止めろ。そうすれば命は見逃してやる」

「クハハハハ! 哀れよの! このわしが小僧ごときに遅れをとると思っているのか? 自己紹介しよう。私は魔道士アルカイオス(Archaios)。闇の魔道士だ」

「俺は……」

「おっと、すぐにくたばる奴の名前など聞くだけ無駄じゃ。名乗る必要はない」

「いいだろう。すぐにケリをつけてやる」

「フォッフォッフォ! 誰がいつおまえの相手をすると言った? おまえの相手をする者はこいつじゃ! 出てこい『竜骨兵りゅうこつへい』!」

アルカイオスが杖を上にかかげると、魔法陣から竜のスケルトンが出てきた。

二足歩行に、両手に曲刀を持っている。

「フハハハハ! こいつがおぬしの相手をする! さあ、竜骨兵! この小僧を殺せ!」

竜骨兵が叫び声を出した。

竜骨兵が曲刀で斬りつけてきた。

セリオンは大剣でそれを受け止める。

竜骨兵は力を入れるがセリオンのガードを崩すことができない。

セリオンは片手で竜骨兵の曲刀二本を受け止めていた。

セリオンがバックステップする。

竜骨兵の曲刀が振りぬかれる。

セリオンは再び間合いを取った。

竜骨兵は息を吸い込んだ。

口に闇が現れる。

竜骨兵は黒い息をはいた。

「フハハハハハ! これが闇だ! この闇には対抗できまい! 終わったな! 死ぬがいい、小僧!」

「誰が死ぬって?」

「な、なんだと!?」

黒い息は斬り裂かれた。

セリオンの大剣は光で輝いていた。

「その剣は!?」

「これは『光輝刃こうきじん』! 光の力を収束した剣だ! この剣なら闇を斬り裂くことができるのさ!」

「ぐぬう……おのれ! 竜骨兵よ! 剣であやつを斬り殺せ!」

竜骨兵はセリオンに接近した。

そして十字の斬撃を繰り出す。

十文字斬じゅうもんじぎり」である。

しかし、セリオンは竜骨兵を光の斬撃「光輝斬こうきざん」で斬り捨てた。

竜骨兵はダウンする。

セリオンはあえて追撃しなかった。

竜骨兵が立ち上がる。

「くっ! 小僧ごときにいつまで手を焼いているのだ! 殺せ! 殺すのだ!」

竜骨兵は闇を闇を曲刀にまとわせた。

これは必殺の一撃だった。

「ダークスラッシュ」である。

竜骨兵は必殺の一撃でセリオンを斬ったかに見えた。

しかし、セリオンの一撃が曲刀を砕いて、竜骨兵を斬りつけた。

「ハーッハッハッハ! 無駄だ! 竜骨兵には再生の力がある! きさまの攻撃は効かな……なっ、何!?」

竜骨兵の傷は再生しなかった。

「どうやら光の攻撃には再生できないようだな」

「ええい、何をやっている! このくず! のろまめ!」

アルカイオスが竜骨兵を侮辱した。

セリオンは光の力を大剣に収束した。

そして光の刃を竜骨兵めがけて放った。

セリオンの技「光波刃こうはじん」である。

竜骨兵は両断されて、絶命、消え去った。

「くっ! 竜骨兵を倒すとは……」

「後はおまえだけだな」

セリオンはアルカイオスに大剣を向けた。

「ククク、クハハハハ! クヒャーッハッハッハ!」

「? 何がおかしい?」

「フハハハハハ! このわしを倒せると思うとはな! きさまは闇に葬ってやるとしよう! フィンスター・ラウム(Finsterraum)!」

セリオンの周囲を闇が包み込んでくる。

闇とは包含である。

闇はすべてを包み込む。

「ハッハッハ! どうじゃ! 逃れられまい! そのまま闇に蝕まれ、消え去るがよいわ!」

「なら、光でこの闇を斬り裂くだけだ」

セリオンは大剣を上にかかげた。

「光、在れ! 閃光剣せんこうけん!」

極大の光がセリオンの大剣から放射された。

光が闇を斬り裂く。

「なあにいいいい!? ぎいやああああああ!?」

その光はアルカイオスをも直撃した。

アルカイオスは倒れた。

セリオンの周りから、闇は消えた。

「どうやら、終わりのようだな」

セリオンはアルカイオスを見おろした。

「このわしが……バカな……」

アルカイオスは死んだ。

アルカイオスが死んだことで塔に激震が走った。

この塔は崩れようとしている。

セリオンはすぐさま螺旋階段を降りた。

それだけではなかった。

毒の雨が上がっていた。

遠くには虹が見えた。

「どうやら雨のぬしを倒せたようね」

カミラはほほえんだ。

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