幕間『とあるマスコミ関係者の反応』
『N社のVTuber事業は必ず成功すると言い切れるこれだけの理由。世界中の企業が群がる勝ち馬の根拠とは?』
2011年12月11日の14時に、Nantendoの本社で行われた会見をYTubeで視聴した筆者はこう確信した。この日の会見は必ずや歴史に明記されると。
正直なところ、十分に時間を置いて筆を執った今も胸が高鳴り、この感動をなんて表現したらいいか、未だに相応しい言葉を見つけられずにいる。
人はあまりに偉大なものを前にしたとき、言葉を失うようにできているのだろうか?
物書きの端くれとして20年以上も活動してきた身としては恥ずかしい限りだが、今もこの会見に関しては、その内容を正確に伝える言葉を探すのにも苦労する有り様だ。
唯一の慰めは、会見に同席した記者たちも筆者と同様に茫然として、質疑応答の段階になってもなかなか質問できなかったことか。言葉を失ったのは筆者だけではなかったのだ。
それほどまでに衝撃的だった内容については後述するが、まず驚くべきは、N社の会見に同席した重鎮たちの顔ぶれにあった。
当事者であるN社からは、この大事な時期に社長代行を託された真白軍平氏が出席し、この人選に関しては妥当という他ないが、日本最大の広告代理店であるD2の鶴見輝昭社長と、白鵬堂の杉本良二社長が揃って同席しているのには驚かされた。
たしかにN社の広告代理店はD2だが、N社が版権を持つ一部のアニメや映画などは白鵬堂が取り扱っている。よって、両者がN社のVTuber事業を巡って水面化で鍔迫り合いを演じるなら解るが、まさか共同歩調を取ったとも見られる会見への同席を了承するとは。
驚くべき点はまだある。老齢を理由に第一線から退いたとされるJ事務所の鯉戸将大会長と、YTubeのサービスを提供するGlobal LLCの最高経営責任者、トーマス・ピュフォイ会長の姿まであったのは、驚愕を通り越して絶句するしかない。
J事務所の鯉戸会長は「芸能界の父」として知られ、日本のマスメディア産業に絶大な影響力を持つとされるが、今回のように公に姿を見せるのは稀で、G社のトーマス会長に至っては、わざわざ今回の会見のために来日したというのだから、経験豊富な記者たちが質問する立場にあるのを忘れて立ち尽くすのも当然かもしれない。
筆者も同様に惚けるばかりだったが、早くから一連の流れを追っていたのですんなりと受け入れられる部分もあった。
彼らがこの場所に集ったのは、もちろんN社に要請されたのもあるだろうが、もっと純粋に一人の少女のためであると。
N社が推し進めるVTuber事業の中核にして、バーチャルYTubeというまったく新しい動画配信のスタイルを生み出し、今や最大の成功例となった一人の少女──アーニャのために、これだけの重鎮が顔をそろえたのだと。
だが逆に言うと、アーニャにはこれだけの大人を動かす力があることになる。それだけの力を持ったアーニャとは何者なのか。今回は改めて説明したい。
次のページは:アーニャの偉大な成功はむしろ必然だった。
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『アーニャの偉大な成功はむしろ必然だった』
筆者がアーニャのデビューに立ち会えたのは幸運という他ない。2011年11月21日の夜に、T社のSNSサービス『Wisper』が騒然となった。多くの利用者が特定の投稿に群がり、界隈はこの話題一色となった。
筆者はゲーム情報誌の編集者という立場から、多数の絵師をフォローしていたので、早期に問題の投稿にたどり着くことができたが、まさに幸運というしかないだろう。雑多なWisperの話題を独占したのは『アーニャ』の名義で投稿された一枚のイラストだった。
そのイラストは、作りかけの雪だるまが転がる真っ白な雪原を背景として、防寒具を着込んだ北欧系の少女がこちらを見上げ、照れくさそうに微笑むものだった。妖精のように可憐で、それでいて人間的な温もりを感じさせるこの少女こそ、初めて目にしたアーニャであり、筆者は一目で彼女の虜になった。
イラスト自体の完成度も素晴らしいが、それ以上にアーニャの視線はこちらに訴えるものがあった。筆者は残念ながら女の子には恵まれなかったが、仮に娘がいたらきっとこんな気持ちになっていただろう。男親というものはいつになっても自分の娘が可愛いものだ。
いや、それは筆者に限ったことではなく、アーニャを目にした全ての人がそう思ったに違いない。Wisperの話題は、どれもアーニャに肉親のような親しみを感じたというものばかりだった。
それからは一丸となってアーニャのことを調べた。いったい如何なる天才がこれほどまでに魅力的なキャラクターを生み出したのか。アーニャの魅力にやられた筆者たちは、さっそく立てられた匿名掲示板の専用スレッドに集結して、手分けして情報を集めた。
G社やY社の検索サイトは当然として、海外のコミュニティーにもお邪魔して情報提供を呼びかけた。その結果ネット上は騒然となり、Wisperトレンド、各種検索サイトのランキングを独占して、大いに世間を騒がせたことはお詫びするしかない。
結局その日は大した情報が集まらず、後に本物の紳士たちとして海外で知られる同志たちと一緒に肩を落としたが、翌日の夕方になるとWisperにアーニャ本人から続報があり、都合3枚のイラストが投稿された。
人気のない寂しい村で雪だるまを作るアーニャ。生命を吹き込まれ、アーニャと共に温かい日本を目指して旅し、次々と散華する雪だるまたち。そんな消えゆく友人たちを振り返り、凍土の終端で涙ぐむアーニャの姿は、いま思い出しても胸に来るものがある。著者はすっかりアーニャに夢中になった。
さらに翌日以降になると、Wisperでアーニャが何のために生み出されたキャラクターか判明した。アーニャ本人の口から、YTubeの動画配信で用いるキャラクターだと説明されたが、当時はどんな形式になるか想像もつかず、期待に胸を膨らませるばかりだった。
そして配信当日──11月27日の夜8時にアーニャちゃんねるの初配信を視聴した筆者は、ただひたすら圧倒され魅了されるばかりだった。
アーニャの配信は、Nicoichi動画の実況配信や生放送の配信者をアニメ調のキャラクターに置き換えるものだった。
そのこと自体は匿名掲示板の予想にもあり、筆者自身も、いわゆる「身バレ」を回避するものとして有効だと考えていたが、まさかここまでの完成度に仕上げてくるとは想像もできなかった。
オープニングやエンディングで使われていた3Dモデルも専門家が目を剥くレベルだったが、配信中に使われていたアーニャのイラストに至っては、まるで実在の人物だと錯覚しそうなほどよく動いた。
瞬きや表情といった小さな動きだけではなく、スカートの裾を摘んであいさつしたり、クルリと身を翻すような大きな動きもフルアニメーションで表現されたのだ。さすがに3Dモデルに比べるとぎこちない箇所もあったが、もしこれが演者の動きを再現しているのだとしたらとんでもない技術力だ。
筆者は後日アニメやCGを得意とするスタジオに、リアルタイムでこれほどまでに動かせる技術が存在するか問い合わせたが、アーカイブの動画を確認した彼らは一様に絶句するばかりだった。今さらだが悪いことをしてしまった。
話を戻そう。このようにアーニャの配信で使われていた技術は、専門家をして絶句させるレベルの完成度にあったが、それ以上にアーニャ本人の魅力が視聴者の脳髄を蕩けさせた。
あの頭に染み込むような甘く幼い声で、一生懸命に語りかけてくるアーニャのトークと、声質からすぐに本人だと判明した二曲のテーマソング。そして何より、アーニャ本人の愛らしい仕草と、時おり不満そうに頬を膨らませる等身大のキャラクターに、吾々は時間も忘れて夢中になった。
この時点で筆者はアーニャの試みが成功すると確信したが、彼女の真価を目撃した今となっては己の浅慮に恥いるばかりだ。
彼女の真価は、YTubeの不当なBAN(アーニャちゃんねる、並びにアカウントの凍結)が解除された直後に発揮された。後に海外の悪質なクレーマーを恐れるあまり、YTubeの規定にない不当な処理をしたとしてG社から公式に謝罪されたが、この時点のアーニャは残念ながら悪名が勝っていた。
アーニャの登場に危機感を抱いた既存の配信者が悪評を撒き散らしていたのもあるし、一部の悪意ある切り抜き動画もそれに拍車を掛けた。だが、そんなアンチの悪評はアーニャの歌が吹き飛ばした。
アーニャ復帰後の初配信となる12月2日に、アーニャちゃんねるでは全8曲のオリジナルソングの熱唱が行われた。
オープニングに使われている代表作「いまも地球を七周半」の英語版と、エンディングテーマの「祈り」のロシア語版に加え、新曲の「星海の夜」と「黎明少女」を、それぞれフランス語とドイツ語で歌ったのに続いて、さらに3曲を英語とギリシャ語とウクライナ語で歌いあげるのを耳にした吾々は、アーニャが如何に偉大なアーティストであるか理解した。
後日、筆者は音楽の専門家に問い合わせたが、仮に歌詞にルビが振ってあろうと、ネイティブな発音を知らなければ歌い切るのは不可能だと回答を得た。
最後に「この中にいるかもしれない、大好きな貴方へ」というタイトルの日本語版を耳にした筆者は、己が不明を恥じた。
たしかに、アーニャちゃんねるの映像技術は素晴らしい。アーニャのパートナーであり、米国から最重要人物に指定されてるMIT卒の天才。サーニャことアレクサンドラ・タカマキ博士の協力がなければ、これほどのものは用意できなかっただろう。アーニャの配信を支援するN社のバックアップと、敏腕を謳われるマネージャーが配信に集中できる環境を整えたのも充分に理解している。
しかし違ったのだ。仮にそれら全てがなくてもきっとやり遂げた。それだけの力量がアーニャにはあった。
比肩するのは全盛期のナリリシャ・キャリーか、ドナルド・M・ジャクソンしか存在しないと言われるのも頷ける。この日を境に「奇跡の歌姫」と呼ばれるようになったアーニャに全世界が着目したのは当然の帰結だった。
次のページは:アーニャの歴史的成功がネット配信の強みを明らかに。
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『アーニャの歴史的成功がネット配信の強みを明らかに』
さて、こうしてアーニャは世界中から熱い視線が注がれるようになったわけだが、当時はあくまで高名なアーティストとして、音楽関係者のラブコールがこちらの耳にも入る程度で、今ほど国内外の企業が群がっていたわけではない。
もちろんG社の株価がこの頃から大きく値上がりしていたことから、筆者の知らないところで、アーニャの配信に広告を挟みたいという企業は存在しただろうが、今ほどあからさまではなかった。
ではなぜそうなったのかというと、C社の怪物狩人シリーズの最新作、通称3Gがアーニャの配信で大きく取り上げられたことが決め手になった。
これについて筆者は専門家なので自信を持って語れるが、C社は当初、P2G以来となる海外での販売を決定したものの、売上についてはまったくと言っていいほど期待していなかった。
何しろC社には、あまりの注文の少なさに海外でのP3の発売を断念した苦い過去がある。前作の3も奮わず、事前に用意された3Gの海外分はわずか20万本という少なさだ。
それが蓋を開けたら国内分の300万本、海外分の200万本が発売から数時間で売り切れとなり、多くのモ◯ハン難民を生み出す結果となった。
諦めきれない彼らは、急遽発売されたPC版をダウンロードすべく、世界中の量販店でゲーミングPCを探し求めた。
そして今朝になってN社の全面的な協力を得たC社が国内150万本、海外350万本に及ぶ大規模な出荷を行ったが、ほぼ即日完売の有り様らしい。
3Gはなぜこれほど売れたのか? その答えを筆者はすでに記載している。それは3Gがアーニャちゃんねるで大きく取り上げられたからであり、そしてその好機をC社が逃さなかったからだ。
アーニャが3Gを楽しみにしていると口にしたのは、折りしも彼女が匿名掲示板の同志であり、問題児である女性──今やすっかり有名になった社畜ネキをお試しVTuberとして紹介したときだが、それから二日後にNicoichi動画のハルエリちゃんねるのお二人をお試しVTuberとして紹介した配信を皮切りに、フルHDのPC版が以後4回に渡って配信される運びとなった。
確かにゲーム業界の慣例として、メーカーが発売前のゲームを筆者の職場のようなゲーム雑誌に宣伝目的で貸し出すことは広く行われている。しかし、それとて無断配布を禁じる誓約書を書かされ、厳重に管理されるのが普通だ。
いかに業界の内外で、N社の真白軍平氏がアーニャのマネジメントを行なっていることが公然の秘密になった時期とは言え、N社の会社ぐるみの関与が否定されていたこの時期に一配信に貸与するなど、こちらの常識では考えられない。
だがC社はそれをやった。そして成功した。シリーズ未経験の初心者に配慮したアーニャの配信は分かりやすく、視聴者に3Gの魅力を存分に伝えたのだ。
だがそれ以上に、自身の配信に招いた友人たちと3Gを遊ぶアーニャはとても楽しそうで、これを見て一緒に遊びたいと思わないファンは存在しなかった。
その結果、3Gは世界中で売れに売れた。最終的にどこまで売れるか現時点では予想もつかないが、年内に2000万本は売れるのではないかと筆者は見ている。
この成功を見て、国内の家庭用ゲームソフトメーカー各社は、12月8日にN社がアーニャと契約していることを明かしたのもあって、自社製品の使用は原則事後承諾でも構わないと声明を出した。
N社と家庭用ゲーム機市場を巡ってライバル関係にあるS社寄りの姿勢を明確にしてるSQ社でさえ、許諾申請には前向きに対処すると声明を出したことから、彼らも気付いたのだろう。
今回のC社の成功は、無論、世界中に影響を及ぼすインフルエンサーに成長したアーニャ自身の功績であることに相違ないが、それ以上にワールドワイドに情報を発信できたからだ。
知っての通り、YTubeでは世界中の動画が視聴できるが、言葉の壁は厚く立ちはだかっているのが現状だ。
だがアーニャの配信にはそれがない。先述のサーニャ女史が開発したとされる自動翻訳により、今やアーニャのメッセージは世界中の国々にそれぞれの字幕で届けられるのだ。YTubeの仕様にないこのシステムはアーニャちゃんねるにしか存在しない。
だから国内外の企業はアーニャに群がるのだ。この幸運の女神に自社製品の情報を発信して欲しいと。
アーニャのマネジメントを担当する真白軍平氏の部署は、おそらく息をつく暇もない嘆願を処理するのに苦労していることだろう。だが忘れてはならない。それを決めるのはアーニャ本人である。
未成年の子供を案件漬けにするなど、あのN社が認めるはずがない。女神の寵愛を渇望する気持ちが分からないとは言わないが、ここは企業倫理に則って自重すべきだ。
そして、それは今回の会見に参加したG社にも言えることだ。
次のページは:G社は選ばれた立場を自覚したからこそ協力を申し出た。
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『G社は選ばれた立場を自覚したからこそN社に協力を申し出た』
アーニャがYTubeで配信するようになって以来、G社の株価は順調に値上がりして、何もかもが順風満帆に見える。
だがそうではない。彼らは既にやらかしている。先述した海外のクレーマーとアーニャという配信者を秤にかけ、自分たちで決めたルールを破ってまで不当な処分を下している。
その件に関してはすでに謝罪しているが、それで済む話ではない。YTubeに登録するときに同意した利用規約が遵守されないとあっては、アーニャも安心して配信できないだろう。
ここでもし、N社がアーニャのために新たな動画配信のプラットホームを立ち上げたらどうなるだろうか? 断言するが、筆者はそちらを利用するようになるだろう。
滑稽無糖な話だと思うだろうか? だが莫大な内部留保を抱えているN社に、世界3位の経済大国である日本を代表する広告代理店であるD2と、ライバルの白鵬堂がそろって協力するなら、世界的な動画サイトの立ち上げも夢物語ではないと筆者は予測する。
ガワだけ作っても仕方ないと思うかもしれないが、そこはN社である。N社が子供から大人まで安心して楽しめるコンテンツを山ほど抱えていることを考えれば、一般のファミリー層はむしろ安心してそちらを利用するだろう。
そこにアーニャが移籍しようものなら、もはや初心を忘れたYTubeなどに用はない。YTubeが日本国内で先にサービスを開始したNicoichi動画を追い抜いて成長できたのは、その清心的な姿勢にあった。
Nicoichi動画が利用者のモラルの問題と放置している各種違法動画を、YTubeは厳しく規制することで視聴者の信頼を勝ち取り、それが追い風となって作用した。
それがアーニャの移籍で逆風になろうものなら、今のNicoichi動画が未来のYTubeとなり、その悪評が降りかかることになる。
実態とは無関係に自社の儲けばかり気にして、利用者のためにプラットホームも改善せず、悪貨が良貨を駆逐するのを是とする。
そんな企業体質だと疑われたら、YTubeだけではなく、Global LLC全体のイメージも大きく損なわれる。
それを避けるためにはどうしたらいいか? その答えが今回のトーマスCEO自らの会見への同席なのだろう。
Global LLCはN社より格段に規模の大きいグローバル企業だ。普通なら誠意を見せる必要があろうと最高経営責任者が出向くとは考えられず、日本支社の月島昇支社長を矢面に立たせてお茶を濁すはずだった。
だがトーマスCEOはそうせず自ら出向いた。そこに上手いことやったC社とはまた別の英断があったと筆者は考える。
実は昨日の12月10日の時点で、Global LLCは今週末の大規模なシステムの刷新に合わせてYTubeの利用規約を改定している。
このアップデートは驚くべきことに、再三にわたって記載しているサーニャ女史の協力を得たもので、投げ銭機能の追加や、アーニャちゃんねる独自の自動翻訳をYTube全体で取り入れるという大規模なものだ。
これが実現したらYTubeから言葉の壁が取り払われるが、本当に驚くべき点はそこではない。先ほども言及した利用規約の改定だ。
この中でG社は著作権の侵害や、各国の法律に触れるような動画の投稿だけではなく、それらを誘発するような動画や、人の名誉を傷つけるような動画の投稿も厳しく禁じている。
違反した場合は、サーニャ女史の開発した最新の人工知能13機が相互に監視し、合議制で運用される「AX13T」というシステムが即座にアカウントを抹消するという。
実際にどれだけの精度と猶予があるか今の時点では不明だが、仮にこのシステムが、サーニャ女史がアーニャちゃんねるで使っている全自動モデレーターソフト(アーニャの配信に不快なコメントがないのはこのソフトのため)の上位互換的なものなら、現在Nicoichi動画で蔓延っているような問題のある動画は一掃されるだろう。
やはりGlobal LLCは解っている。今やグローバリゼーションは企業倫理と法令遵守に向かっている。やりたい放題の企業が生き残れる時代はもう終わっているのだ。
次のページは:アーニャの身元を明かしたN社の狙いとその背景。
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『アーニャの身元を明かしたN社の狙いとその背景』
さて、前置きが長くなったがそろそろ本題に言及しよう。すでに3ぺージを費やして、アーニャという配信者が持つ影響力の凄まじさと、それを利用しようと多くの企業が群がってきたことを説明してきたが、この浅ましい企業の中には、非常に残念なことに筆者らのマスメディア産業も含まれる。
いや、言葉を飾っても仕方ない。ようはネットで『マスゴミ』と揶揄される輩がやらかしたのだ。
先週の土曜の12月9日に、アーニャの正体に迫ろうとした週刊誌の編集者が、アーニャの父親ではないかと噂されるN社の真白社長代行のご令嬢に接触しようとしたところを、不審者として大阪市警に身柄を拘束されるという事件が起こった。
本当に嘆かわしい話ではあるが、はたして筆者にこの男を非難する資格はあるのだろうか?
実は筆者自身、アーニャにインタビューできないものかとN社に申し入れたことがあり、そのときは断られたがなかなか諦められなかったのを覚えている。
ゲーム雑誌の編集者として長年N社と付き合いがあり、最終的にN社との信頼関係を損なうわけにはいかないと涙を飲んだが、これがもし無関係な立場にいたら諦めることができただろうか? 一歩間違えれば、この男と似たようなことをしでかしたかもしれない。そう思うと無責任に批判する気にはなれなかった。
今回N社は会見で、こうしたマスコミ対策のために、アーニャの身元を公開した。一部の情報通の予想は的中し、アーニャというVTuberを演じていたのは真白氏の長女である12歳の少女だった。
N社は会見の中でこの少女が未成年であることを理由に接触を禁じた。正しくも効果的な処置だと思うが、同時に吾々がそうさせたのは明白で、忸怩たる思いもある。
会見で使われたこの少女の写真は、おそらく父親の真白氏が撮影したものだろう。あのとき初めて見たアーニャと同じようにこちらを見上げて、照れくさそうに微笑む顔は本当によく似ている。だがそう思うと、筆者は彼女の信頼を裏切ったように感じて申し訳なくなる。
たしかに今回の処置は、吾々マスゴミ対策としては効果的だ。何しろ会見にはD2の鶴見社長と白鳳堂の杉本社長が同席しているのだ。この両者を怒らせ、広告収入を絶たれて生き残れるような会社は、日本のマスコミ業界には存在しない。だがその代償に、真白氏の長女は重い十字架を背負った。
素顔を公開したことにより、アーニャに抱いた憧憬を重ねるファンも出でくるだろうし、身元を公開したことにより一目会いたいと押しかけるファンも現れるだろう。下手をしたらストーカー被害に発展することすらあり得るのだ。
吾々マスコミは、せめてマスゴミと呼ばれたくないなら、彼女に重い決断をさせた責任を自覚し猛省しなければならない。
それともう一つ触れねばならない点がある。それは最近のマスコミの報道姿勢だ。
N社が大々的に広告を打った先週金曜の12月8日以来、テレビはこの話題で持ちきりである。その論調はアーニャの活躍を正しく評価し、絶賛するものだったので気に留めなかったかもしれないが、これは筆者のようなマスコミの端くれからしたら、あまりの異常さに何か裏があるのではないかと眉を顰める性質のものだ。
ご存知のように、マスコミがあらゆる情報を独占し、世論をコントロールできる時代は、インターネットの登場をもって終わりを迎えた。
だというのにそのことを認めようとせず、むしろ敵視したマスコミは、インターネットとその利用者を悪者にするとき以外は、存在自体を無視する方針を貫いた。
にも拘らず、YTubeというインターネット上のサービスに登場したアーニャのことを好意的に報道する。その狙いがどこにあるか、筆者はすぐに判った。
インターネットでアーニャの存在を知り、ずっと応援してきたファンの方は今回の報道で自尊心をくすぐられたかもしれないが、騙されてはいけない。彼らはインターネットからアーニャを取り上げる腹づもりだ。
自局の番組を持たせ、代わりに動画配信を禁じる。そうしてアーニャを意のままにコントロールして、金の卵を産む鶏を利用価値がなくなるまで飼い殺しにする。それが彼らの狙いだ。
自由に、心のままに楽しそうに遊んでいるアーニャの笑顔は永遠に見られなくなる。そんなことを許してはならない。違うというのなら、マスコミは今こそ襟を正さなければならない。
次のページは:今こそマスコミは襟を正すべき時だ。
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『今こそマスコミは襟を正すべき時だ』
4ページ目で、筆者は世界的なグローバル企業は企業倫理と法令遵守に向かっていると説いた。それは何故か? そうしなければ生き残れないからだ。
企業は事業規模が拡大するごとに社会的責任が重くなる。中小企業なら自社の雇用を守ればいいが、株式を公開すれば株主への責任が生じる。そして世界的な大企業になれば社会的な影響は絶大になるが、その責任に無関心であっては社会的な制裁を免れない。だからどの企業も自社の企業イメージには神経質になり、自分たちは敵ではないとアピールをするのだ。
さて、そう考えると日本のマスコミ各社もここが正念場だろう。あんな政府をでっち上げておいて、自分たちに責任はないという態度は頂けないものがある。ここらで変わらなければ致命的に信用を損なうと申し上げたい。
それとも自分たちが滅びることはないと思っておいでだろうか? ならば勝手になさればよろしい。若年層ほどマスコミを信用してないこの国で、10年後にどうなっているか楽しみですらある。
アッシリアはすでに滅び、ペルシア、マケドニアも滅びた。驕れるものは久しからず、老朽化した家屋は取り壊されるというのに、なぜ自分たちの家だけは手入れもせずに保てるというのか。
不道徳な企業が社会的な圧力によって解体された事例は何度も報じているだろうに、なぜそこまで頓着せずにいられるのか筆者には不思議だ。
具体的な例を挙げれば、経団連に所属せず、広告費を負担しないN社を敵視する日Kが「N社のVTuber事業が失敗するこれだけの理由」というとんでもない飛ばし記事を掲載したが、彼らの言い分に何一つとして頷けるものはなかった。
特に最後の「N社に限らず、後発のVTuberは、アーニャという需要を独占する怪物に食い殺される」という意見も、今なら絶対にそうはならないと断言できる。
それがなぜか疑問に思うなら、アーニャが後輩のVTuberに寄り添う先週の配信を確認してみるといい。このときのアーニャたちの笑顔と、視聴者の熱狂を見ても「こんなものはまやかしだ」と言うなら、そんな御仁は自分だけの妄想の世界で生きればよろしい。
筆者は今こそ申し上げたい。N社のVTuber事業は必ず成功する。わたしたちが必ず成功させると。
浜面信通
家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ研』の編集長として知られる業界通。今回は私憤を公憤に偽装して、愛するアーニャたんのために筆を執った雪国民。同志たちが次々とVTuberとして巣立っていくのを喜ぶのと同時に、寂しくも思って自分もアーニャたんの配信に出れないかと、すでにコラボが決まっている旧知の磐田社長に懇願して困らせる日々を送っている。
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コメント4893件 [コメントを書く]
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磐田肇
浜ちゃん、最後ので台無しだよ。
返信1673件
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社畜ネキ
もー、浜ちゃんったらー。どんだけアーニャたんが好きなのって記事になってるよ。この名誉雪国民3号め! それとお姉さんとあのスレの話題を口にするなって言っただろうが!!
返信889件
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寺田K子
最後の自己紹介で笑ったけどいいんじゃない? 本文でアーニャたんを使ってないし。あのスレに書き込まれたような全方位にケンカを売る内容でもないし。推敲に付き合った甲斐があったよ。
返信446件
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