黒聖杯の女神は聖騎士の愛を求める
■あらすじ
卒業論文に向けて陽菜が大学図書館の地下書庫で資料探しをしていると、ほんのりと発光している本を見つけた。気になり手に触れた瞬間、目がくらみ――次に目を開いた時には、真っ暗な場所にいた。
停電したのかと大慌てする陽菜だけれど、図書館ではない場所にいると気がつく。途方に暮れていると、ズッズッという重たいものを動かす音がした。正体不明の音に怯えていれば、壁に隙間ができて、松明の明かりと一緒に一人の青年が現れる。
「君、閉じ込められたのかい!?」
青年の名前はロウエン。騎士をしていて、探し物のためにこの古代遺跡を探索していたのだとか。陽菜はロウエンに助けられて、遺跡から脱出する。
ロウエンは馴染みの宿屋に陽菜を預けてくれた。元の世界に戻る方法を探しながら、なんとか生活に馴染もうとする陽菜に、ロウエンは何かと目をかけてくれる。
ある日ロウエンが、陽菜のいた遺跡から一冊の本を持って帰ってきた。その表紙は陽菜が書庫で見つけた本と同じで「女神代理戦争」について書かれていた。
意味のわからない陽菜がロウエンに尋ねれば、ロウエンは苦々しそうに囁やいて。
「やっぱり君が、女神の代理人だったのか」
この世界の女神は代替わりする。次代の女神を決めるために代理人が現れ、殺し合うのだそうだ。
代理人は女神の権能を一人一つ与えられ、女神となれば代理人は願いを一つ叶えてもらうことができる。
この世界の人々は、自分たちの求める権能を持つ代理人を擁立し、守る。権能にも種類があり、加護から災厄まで存在した。だから不要な権能は女神の代理人だけではなく、人々に狙われる可能性もあるらしい。
陽菜の権能は「記録」。象徴は本。
ロウエンは騎士団へ陽菜を連れ帰るけれど、すでに「従属」を権能とする女神の代理人リゼットが擁立されていた。
陽菜が女神の代理人だと知られると殺される危険がある。ロウエンは陽菜を守ろうとするけれど、気づいたリゼットによって自我を奪われ、陽菜を殺す命令を受けた。
陽菜は逃げ出した。逃亡生活は厳しく、そんな中でロウエンを好きになっていたことを自覚する。
「必ず助けるから……!」
権能である記録の中に残るロウエンを心の支えにしながら、もう一度陽菜はリゼットの元に向かった。リゼットは陽菜の命と引き換えに、ロウエンの自我を返すと言うけれど――




