【南雲皋様主催】文字書きキャラデザ企画
■設定
【采火考案主人公】→南雲皋さんへ
名前:原田立花
年齢:16歳
性別:女の子
外見的特徴:黒髪黒目、セミロング。紺のブレザー、臙脂色ネクタイ、グレーのカーディガンをブラウスの上に着てる、グレーのスカート、ローファー。
家族構成:マイペースで気さくなお父さん、真面目だけど優しいお母さん、からかってくるけど根はいい大学生二年生のお兄ちゃん
性格:明るく天真爛漫。ちっちゃいことを気にしたら負けだと思ってる。決断を迫られた時、踏み出すための勇気を選べるタイプ。暗い過去は一切なし。暗い展開になっても打破しようともがけるし、前向きに考えられる子。本当にだめな時はいれるかもしれないけれど、誰かに支えられたらちゃんと自分で立ち上がれる。
短編のフックになる設定:学校の帰り道、歩道橋の階段から落ちて異世界転移。お兄ちゃんに似ている騎士に出会う。どうやら自分は龍の御子として、龍の巣に落ちてきたらしい。立花は優しい家族のもとに帰りたいと思うけど……?
どこかに龍の要素
【佑佳様考案主人公】→采火さんへ
名前:チェル
年齢:14歳
性別:女の子
外見的特徴:胸より上の長さのくすんだオレンジブラウン。家にいるときは耳の高さのツインテール、身売りの仕事のときは下ろしている。普段の服は仕事先の先輩たちから古着を戴いたものを着用。シミや汚れも多く、スカート裾や袖口はボロボロになっている。
家族構成:死別両親。稼ぎ柱の長兄セウ(16)は放浪の旅に出ていて帰って来ていない(旅先で入手したらしき物資に紛れて定期的にカネだけが届く)。次男ラニ(10)、三男チロ(6)は家の裏で養鶏をし生計の一助をしている。
性格:頑張り屋さん、頑固。すぐ気丈に振る舞う。口が堅い。
弟たちの前では無垢に笑うが、身売りの仕事に出ているため心根がかなりスレている。どこか諦めているような思考になりがち。
短編のフックになる設定:
父親は養鶏や牛飼いをしていた。取引相手に騙され牛や土地を取り上げられてから殺されてしまう。
母親はチロを産んで半年後に肥立ちが悪く他界。
働き手を失ったがため、セウが出稼ぎに出るもまったく帰ってこなくなる。
わずかに残った鶏と弟二人を育てるため、チェルは父親と取引関係にあった顔馴染みレストランへ働きに出る。オーナーはよくしてくれたが、それをよく思わなかった料理長から虐げられ二年前にクビに。料理長からオーナーへ上手く言われてしまいツテをなくしたがため、幼女趣味の店に誘導されてしまった。水面下ではチェルの稼ぎの一部が料理長に回っている。
兄と弟たちへはレストランで働いていることにし続けている。ラニには一連の事実がバレているものの、互いに明言し合っていない(言い出しにくそうな雰囲気とラニが身売りの真髄を理解しきれていない)。
「いつか兄が帰ってきて、兄と共にクリーンな仕事をしつつ大人になれたらどれだけいいだろう」と心の奥底では願ってやまない。チェル本人は「そんな夢みたいなことなど考えない」と言い張り認めないだろうが、その辺りがまだ稚さとして拭いきれない心理である。
■本文
【コインを重ねて】
くすんだ橙色が襤褸の布に散る。
煙草の煙たさと黴びたシーツの臭いに、チェルは小さく咳き込んだ。
「ゆっくり休め」
誰かがチェルの頭を撫でた。優しいくせに、ひどい人。チェルを抱く人間の中でこの龍族の雄だけは、まだ夜鷹として幼いチェルを優しく手折ってくれる。
うとうとと微睡む。ふと目が覚めた時には、傍らには七枚のコインだけ。温もりはとうになく、チェルはもう一度まぶたを閉じると、ぱっちりと目を開けて身を起こした。
「帰らなきゃ」
ぱっと身を起こして、さっと服をきる。七枚のコインのうち、三枚はこの店の上前だ。これ以上儲けをはねられないうちに、四枚のコインをスカートの裏のポケットに突っ込んで店を出た。
裏道に朝日が差し込むのが目に染みる。朝靄がかかっていて、しっとりと冷たい外気がチェルの体を冷やした。チェルは石畳を蹴って、裏通りの端にある我が家へと駆け込む。
「ただいま! ラニ、チロ、起きな! 朝の卵を採らないと!」
家に帰るとまず真っ先に、ぼさぼさになっていた髪を両耳の後ろで二つにくくった。声を張って寝坊助な弟たちを起こすと、ばたばたと奥から二人の少年が飛び起きてくる。
「ねーちゃんおはよ」
「おはよぉ、おねぇちゃん! セウにーちゃんから荷物とどいてたよ!」
「分かった。ありがとね」
末の弟のチロから机の上の荷物を示されて、チェルは笑う。ラニは何か言いたげな素振りをしながらも、そのままチロを引っ張って裏手にある養鶏場へと飛び出していった。
(ラニは聡いから、私の仕事に気がついているのかもしれない)
子供でチェルが実際に何をしているのか理解できていないからこそ、言いあぐねているのかもしれない。いずれチェルがやっていることを正しく理解された時、ラニがどう思うのかを考えると怖い気持ちもある。けれど弟たちを食わすために今はまだ、仕事をやめるわけにはいかなかった。
チェルは兄から届いたという荷物を手に取ると、さっさとその中身を開けてしまった。包まれていたのは旅先で手に入れたらしい木彫りの人形。切れ目が入っていたので丁寧に割ったら、中からコインがじゃらりと落ちてきた。兄からの内緒の仕送りだ。
「……セウ兄、次はいつ返ってくるかな」
父は取り引き先に騙されて殺された。母も産後の肥立ちが悪くて、チロが産まれてすぐに死んでしまった。長兄は出稼ぎに行ったまま帰ってこない。幼い弟たちは父の養鶏場を継いで卵を売ってくるけれど、一度信用をなくした家の売り物なんて大した稼ぎにはならない。弟たちを食べさせるためにチェルが身体を売って日々をしのいでいるものの、一人の力じゃどうしても限界があって。
(はやく大人になりたいな)
チェルはずくりとむずついた腹を抑えると、テーブルに突っ伏した。
チェルの人生は人に騙されてばかり。父は騙されて死んだ。父のつてをたどって最初はレストランで働いていたものの、料理長と馬が合わずにオーナーにあることないことを吹き込まれて、夜鷹の店に売られた。
二つに割った木彫りの人形を見て、チェルはふと笑った。木彫りの人形はチェルの上客であるあの龍族の雄にちょっと似ていたから。
(いつかこんな暗い仕事じゃなくて、兄と共に明るい仕事ができたらいいな。……まぁ、夢のまた夢だけど)
チェルは兄からの仕送りのコインの中に、ポケットから出した自分の稼ぎをそっと足した。




