物語る日記帳
■ジャンル
現代ファンタジー
あやかしもの
■あらすじ
妖怪達の中で噂になっている日記帳がある。それは付喪神の前によく現れるらしい。薬箱、藤、猫、番傘……。まだまだ沢山ある日記の書き手達。彼らの非日常は、謎めいた日記の持ち主、結姫梨香とそのパートナーの烏之瑪によって一変する。現代妖怪ファンタジー。一話一話、違う視点で語られる形式のお話です。妖怪達の視点から見て私たちはどのように見えるのか。そして結姫と日記の因縁の果てにあるモノとは……。
■作品解説
現代ファンタジージャンルのあやかしもの。
章毎に主役が違っていて、基本一人称です。
主役のキャラクターは付喪神がメインのあやかしたち。主人公である結姫梨香から渡される妖怪専用の交換日記に、主役の妖怪が日記を書くまでが基本ストーリーとなっています。
章構成と各主役は以下の通り。
1.薬箱の奇跡(薬箱の付喪神)
2.藤の想い出(藤の木の化身)
3.猫の鬼ごっこ(猫又)
4.番傘の空(番傘の付喪神)
5.カボチャのランタン(カボチャのランタンの付喪神)
6.翡翠の恋心(この章のみ三人称)
前述の通り、基本的にはあやかし視点のお話ですが、全体を通して主人公・結姫梨香の物語になっています。
結姫は烏之瑪との契約で、神烏である烏之瑪が神界に帰るための妖力を集めているのですが、その手段として妖怪同士での交換日記という方法を取っています。その努力も今世で三回目。最終章で明かしていますが、実は前世二回、この妖力集めが失敗に終わっています。そして三回目である今回も失敗なうになっているのですが、それというのもラスボスである大妖・耶赦のせい。耶赦は神界を追放された神狐で、神界に戻ろうとする烏之瑪の邪魔をし、あわよくば自分の糧にしようと企んでいる妖怪です。物語は耶赦を封印して終わりますが、耶赦関連のどさくさに紛れて烏之瑪が日記帳に込めた妖力を全て使用してしまったので、結姫と烏之瑪の契約はまだまだ続いていきます。
ほっこりした物語が徐々に殺伐としていくストーリーですが、その傍らでほんのりと淡い恋愛も絡めていたりいなかったり。殺し愛を堂々と行く恋愛模様となっております。
■主要人物
結姫梨香
主人公。高校二年生。烏之瑪と契約して妖怪たちの間で交換日記を回している。楽観主義な上に人生三回目なので、達観しているところがある。
烏之瑪
結姫と契約している神烏。地上に降りてきて以降、神界に帰れずにいる。梨香が楽観主義なのでちょっと苦労人だけど、梨香の事を言えないくらいには楽観的だし、やる時は豪快。力を取り戻すと天狗の姿をとれる。
白世
ラスボスの眷属の妖狐。梨香の前世で梨香に惚れた。前世でラスボスともども封印されていたが、復活して梨香にちょっかいをかけている。物腰丁寧な紳士的な性格。
蛍野光
没個性な梨香の後輩。妖怪なんて無縁の生活だったのに、梨香や白世に巻き込まれることになった不憫な子。ラスボス封印時に即死したけれど、最終的には肉体を失った白世と魂の共存をすることになって復活。
■所感
物語る日記帳は本格的に小説を書き出した私の起点になる作品です。
名ばかりだった中学の文芸部ではなく、ちゃんと小説を書かせてもらえる高校の文芸部に入部してから始めて書いたお話で、部誌「原色」に掲載していた短編連作。
当時は「物の気持ちってどんな風なのかな」って考えながら書いていました。それは今でも続いていて、物語る日記帳の後にも同じ付喪神視点のお話である「はなだのぶし」シリーズ等に引き継がれています。
始まりこそ短編連作でしたが、web掲載の際に大きく内容を改稿して、部誌掲載時にはいなかった妖狐・白世が増え、主人公である結姫の前世や単語カードを使用した術、相棒である烏の烏之瑪の天狗化などの追加設定が増えました。すごいね、術式構成みただけでどのラノベの影響受けたのかがよく分かる。詠唱法見るからにほぼ確で伝勇伝だと思うけど、もう7年? 8年? も前のことなのであやふやですけど。
ただ今なら言えることなのですが、最初の路線通りにほっこりほのぼのあやかしもののままが良かったのかもしれないなぁと。当時はラノベ一強思考だったのでローファンジャンルであるこの作品もバトル要素を盛り込みたかったんだよなぁというのを思い返しています。
作中内で高校生活の描写がありますが、当時の私は現役高校生をしていたので高校生活に関しては完全に等身大の描写だなって今では思います。
必然と母校をモデルにしてるので、高校生活の描写がテストと部活動くらいしかないのはご愛敬。私も登下校中に英単語の暗記勉強してたなぁと懐かしむことができるようになったのはやっぱり卒業してからですね。懐かし~!
主人公である結姫梨香と相棒の烏之瑪は、今の私の創作の軸を作ってくれているキャラクターたちです。
Twitterとかでもたびたび言ってはいるのですが、私が力をいれている作品のメインヒロインたちは基本的に「名前二文字」かつ「2文字目は『か』」の法則を持っています。
今挙げられるだけでも「梨香」「ニカ」「美嘉」「智華」「瑠花」「由佳」がいます。続編が書けてなかったりエタっている子達もいますが、彼女たちは私の中でも特別な子達であるというのは、結姫の名前の法則を引き継いでることからも自明の理ですね。
そして烏之瑪の要素は「作中マスコット」という要素として取り込まれました。
私の作品のマスコットキャラはほぼ鳥です。
黒いカラスの「烏之瑪」から始まり、赤いぬいぐるみの鳥「トット」、青色のフクロウ「アナクレト」、黄色いインコの「ティー」、緑の鶏冠のような髪を持つ妖精「フィール・フォール・リー」、赤銅色の鷲「ジャーヒル」。ご覧の通り、やっぱ鳥ですね。鳥じゃないのは白蛇「白縹」くらいでしょうか?
作中一番のお気に入りキャラはカボチャのランタンです。ハロウィン時期になると毎年のようにTwitter等に出没しています。その上、カボチャのランタンは未だに好きだと言ってくださる方がいて嬉しい限り。ヤクバコも気に入ってくださる方が多くて、イラストをいただく機会が多かったです。すごく嬉しい!
またそのうち、リメイクか続編かで書いてみたい作品の一つです。
■イラスト
表紙絵
梨香と烏之瑪
ヤクバコとカボチャのランタン
白世
物語る日記帳×はなだのぶし
カボチャのランタンとエノプキン(算裏友城 様「私達、シイタケガールズやってます! 」より)
ヤクバコとコハク(水月尚花 様「神様の水鏡」より)




