大人気バーチャル美少女配信者を殴り、「生きててごめんなさい」と言わせてお金を貰う仕事が楽しい。ドル箱のオタク共、ありがとうな。お前のスパチャ、全部俺のものだから。
「奈落の底から今日もリア充共を呪ってます。はぁーい、どうも、皆さん、こんばんのろうぅー。自分より可愛い女の子は全員消えろと思っている、奈落ちゃんですぅー」
スマホの画面に映るのは、一人の二次元少女の姿。
色白で黒紫色のエプロン。笑うと可愛らしい八重歯が見える。
肩まで伸びる銀髪が特徴的で、頭には二つの角がある。
彼女の設定は、奈落の底から生まれし悪魔なのだと。
スマホの右側にある、チャット欄が勢いよく動き始める。
それもそのはず。
奈落ちゃんは、現在人気沸騰中のバーチャル動画配信者の一人なのだ。
『奈落ちゃん、こんばんのろうぅー』
『てら……マジで今日もリア充共をぶっ殺すですー』
『ぶひひひ……彼女持ちの奴らは奈落ちゃんの良さが分からない。マジで人生損してると思うわぁー』
『おい、ゴミキモオタ共、奈落ちゃんは彼氏持ちだぞwww』
『【悲報】有名配信者さん無事に逮捕』
「えっっーとねぇー、今日はお便りを読みたいと思います。お便りの主は、『生まれ変わるなら奈落ちゃんの卵子になりたい』さんからですー。うーん、流石にちょっとキモい……」
『きもい……もっと言って』
『射精しました。ありがとうございます』
『もっと言ってくださいぶひー。もっとぶひらせろ』
「僕は公立高校に通う普通の男子高校生です。以前から気になっていた女の子に告白しました。すると、相手から「ごめん……生理的に無理」だと言われました。もう吐瀉物を見たかのような目でした。失敗したなーと思う気持ちがある反面、生理的に無理だと言われて、興奮してる自分がいます。僕はドMでしょうか? 奈落ちゃん教えてください!!」
『告白頑張ったんだな!! おじさんは応援するぞ』
『お前が抜け駆けするから、振られるんだよ、ばぁーか』
『告白するって時点でダメ。俺、普通に女子生徒から毎月のように告られるよ? 本当ブサメンってかわいそうだなぁー』
奈落ちゃんの放送は、老若男女問わず誰もが見る。
と言っても、人生を捨てたというのが条件付きだが。
チャット欄を一目見るだけで分かる地獄絵図。
『スパチャ読めよ!! こっちは20万も払ってんだぞぉ!』
『20万払うとか普通だろ。俺は今月100万払ったし』
『あのぉー、僕の学校バイト禁止なのですが……奈落ちゃんのために親の財布から金をくすめてスパチャしてます』
「もうぉー。みんな喧嘩しないのぉー。ダメでしょー? 喧嘩はダメって一番最初の放送で約束したでしょー?」
幼稚園の先生みたいな口調で怒る奈落ちゃんの声を聞き。
『奈落まま……』
『ばぶぅー。今日もママのおかげで生きていける』
『ママの同人誌って発売まだですかー?』
紆余曲折ありながらもLIVE放送が無事に終了。
今日の放送だけで、キモオタ信者が寄付した金額——。
なんと、1000万円!?
一流企業に就職した人が十年間働いてやっと手に入るとか、昔読んだギャンブル漫画に書いてたっけ。
そう思いながら、俺は完全防音室のドアを開く。
扉の向こう側は相変わらず真っ暗だった。
そんな中、パソコン画面の光を浴びる人の影がある。
病的なまでに痩せ細った体躯の少女は小さな声で言った。
「キモオタって、どいつもこいつもブヒブヒ言ってさー。毎日数時間単位で配信してるのに、ずぅーと見てるし。こいつらって、そんなに暇なわけ? お金を稼ぐわけでもないのに、ただぼぉーとスマホを見て時間を過ごしてるのよ。本当、生きてる価値がないと思わない? あっははは」
「お前の商売相手は、アイツらだぞ。それ分かってんのか?」
少女——鳥城彩花はクスッと笑う。
「何を言ってるの? アイツらはただのドル箱よ。適当に卑猥な言葉とか、甘えた声を出すだけでブヒブヒ言ってくれるから楽なのよねー。ただの商売道具に過ぎないわ」
鳥城彩花は、奈落ちゃんの正体である。
年齢は二十代前半と若く、現在は一流大学に通う女子大生。
二年連続でミスキャンパスに選ばれ、男女共の憧れの対象だ。
えっ? で、お前は誰だって?
あー仕方ないなぁー。答えてやるよ。
奈落ちゃんのプロデュース兼、彼氏みたいな感じ?
学歴は高校中退。理由はクラスメイトを孕ませたから。
根っからの悪い奴だ。誰もが近寄らないようなさ。
あー今思い出しても最高だったぜ。俺をイジメるヤンキー女を、可愛がってやるのわさー。普段は声がデカいくせに、ヤってるときは涙を流して喘ぐんだぜ。本当にそそるよな。
って、こんな話は誰も聞きたくないって。分かったよ。
「それで、お前はどうして俺の服を勝手に着てるんだ?」
昨日洗濯カゴに入れたはずの、無地のTシャツ。
汗臭いはずなのに、彩花は俺の服を勝手に拝借し、我が物顔
で着てやがる。臭いものが好きなら、俺の排泄物でも食わせてやるか。喜んで食うはずだぜ。この女ならな。
「だってだって……」
「だっては一回でいい。お仕置きが欲しいのか?」
「お……お仕置きっ!?」
手をパタパタと振りながらも、彩花の口はぐへへとだらしなくよだれを垂らしている。餌の前で立ちつくす犬だな。
「それよりも、さっさと今月分を渡せよ」
「ううっ……そ、その前に頭を撫でて欲しい」
「嫌だと言ったら?」
「今月分は渡しません」
そう言って、彩花は手元に持つ封筒を後ろに隠した。
調子に乗ってんな、この女。俺の言うことだけを聞いてればいいものを。妙なところで知恵をつけやがって。
「おい、お前さー。勘違いしてるだろ? さっさと金を渡せ」
「今日という今日は渡しません。頭撫でてくれるまで」
やっぱり調子に乗ってやがる。
こんな女は、痛い目を見ないとダメだな。
——バチン——
部屋の中を鈍い音が響いた。
女を殴るのに躊躇う必要はない。
金が成る木を、揺らすのと同じことさ。温泉が湧きますと言われたら、誰だって地面を掘るだろ?
暴力に身を任せ、泣きじゃくる女から金を巻き上げるだけ。
キモオタ共が必死に働き、奈落ちゃんへ貢いだお金。
それは全て、俺のお金になるってわけだ。
本当楽な仕事だよ。
世の中は搾取する側と搾取される側がいるんだ。
で、キモオタ共は、敗北者ってわけだよ。最高に面白い話さ。自分たちが大好きな教祖様が、実は——高校中退で、暴力が大好きな俺に調教されてるって知ったら、どんな顔するのかなー。
マジで考えただけで笑みが溢れちまうよ、傑作だな。
「……ごめんなさい……も、もうやめてっ!」
女の扱いは楽だ。一度殴れば勝手に懐く。
懐かないなら、もう一発殴ってやればいい。
えっ? それでも懐かないなら?
懐くまで、殴ってあげるだけさ。
服従した方が楽だよって教えてあげればいい。
「ごめんね。俺だってさ、こんなことしたくないんだよ?」
今月分の給料は、2000万か。流石は大人気動画配信者様だ。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
涙を流して謝る姿は、可愛いもんだ。ボロボロと泣きじゃくる姿は、額縁に入れて家宝にしたいもんだ。さっきまでの高飛車ぶりはどうかな
ただ、今回は反抗があったから、少し厳しめにするか。
「あのさー、お前、生きてる価値ないよ?」
「えっ……? 私……い、生きてる価値ないの?」
「お前は、キモオタの性的対象だ。一生お前は、キモオタたちの性の捌け口なんだ。何度、お前はアイツらの妄想内で犯されただろうなー」
「わ、私は……性のは、捌け口……?」
「そうだ。お前さ、自分が人気だと勘違いしてるだろ? アレ、全部……あわよくば、お前とヤりたいと思ってるクズどもだぞ。毎日数万人集めてるが、全員そうだ」
「うそよ、わ、私のトークが面白いから。私の日常を、みんな待ってる。だ、だから、アレは全て……わ、私の実力っ!」
「実力笑わせんな。アレ、八割型、サクラだぞ?」
「えっ……? ウソだ、そんなはずがない」
「業者に頼んでんだよ。お前の人気はその程度だ」
「うそ……うそよっ! そんなはずは……」
自尊心を叩き割る。
そして、弱った女を抱きしめて、優しい言葉をかけてやる。
「はい。生きててごめんなさいって言ってみて」
「生きてて、ご、……ごめんなさい」
「感情が篭ってない。お前、生きてる価値ないんだよ」
「い、生きててご、ごめんなさい」
——バチン——
「おいっ!? 本気でやれよ。遊びじゃねぇーんだよ」
「は、はいっ!? が、頑張りますっ!」
「頑張るって言うなら、最初からやれよ。ゴミが」
「はいっ! ご、ごめんなさい……い、生きててご、ごめんなさい……わ、私はウジ虫です。生きてる価値がないゴミです。プロデューサーさんが居ないと、何もできない。ゴミです」
最高だね。涙を流す女の子は可愛い。
ギュッと介抱したくなるよ、全く。
「ごめんね、彩花。ちょっと言い過ぎたよ。俺はさ、彩花が一番だと思ってるんだ。一番の人気配信者になれるって」
「ほ、本当……? 本当に思ってくれてるの?」
「あぁー本当だよ。俺は嘘は付かない。絶対に彩花が一番稼げる。現在は、バーチャル配信者だけど。もう少ししたら、顔出し配信もしようね?」
「か、顔出し……は、配信? そ、そんなのこ、怖いよ」
「大丈夫だよ。彩花は可愛いから。俺もプロデュースつづきで、色々と困ってるんだ。彩花は世界で一番だよ」
「うう……世界で一番と思うなら……わ、私を抱いて」
「彩花は欲張りだなぁー。昨日の夜もヤッテあげたでしょ?」
「全然物足りないんだもん。だ、だからもう一回するの」
「分かったよ。でも、もうワガママはしないと約束できる?」
「できる……抱いてくれたら……ワガママ言わない」
俺は彩花の頭を優しく撫でて。
「ありがとう、彩花。それならベッドに行こっか?」
***
「プロデューサーさんのこと、好きっ!? 大好きっ!?」
よだれを垂らして、彩花は僕をギュッと抱きしめてくる。
俗に言うところの、しゅきしゅき大好きホールドって奴。
どこでこんな技を身につけたのだろうか? エロ過ぎだ。
「俺も彩花のことが好きだよ。だから一緒に幸せになろう」
——チュ——
お姫様に口づけを交わすように、俺は永遠のキスをした。
絶対にお前を離さないと言う証拠に。
と言っても、俺は彩花ではなく、若い身体とお金が目当てだがな。
「うんっ!? し、幸せになりゅ。なりましゅ、一緒に幸せぇになりゅの。プロデューサーさんと一緒に、幸せにぃぃぃ!」
***
「彩花……って、もう寝ちゃったか? ゆっくりおやすみ。俺のドル箱。もっともっと俺のために金を稼いでくれ」
何も知らずにグッスリ眠る彩花の頭を撫でて。
「彩花……俺はお前が大好きだ。俺を本気で落としたいなら、もっともっとお金を稼いで、俺に貢げ。分かったな?」
返事はないものの、寝たフリしてたのは分かる。
狸寝入りができるようになったとは……。
彩花の奴も少しずつ知恵を付けてきたな。
部屋を出た後、俺は一件の電話を掛ける。
場所は——某有名AVプロダクション。
「奈落ちゃんのマネージャーです。はい、その……奈落ちゃんの中の人をですね。是非とも、AV出演させたいなと。お金? あーはい。それはもう30億ぐらい出してもらわないと。ちなみに、ミスコン出場者で、はい……分かりました。50億で」
ニタァと笑みを浮かべて、俺は彩花の元へ戻った。
「お前は一生、俺の奴隷だ。キモオタ共から金を荒稼ぎして、俺に回してくれよ。俺の、俺だけの……ドル箱ちゃん」