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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無名剣士

作者: たなは

英雄が名を残すように

伝説が語り継がれるように


時代を動かした人は記録が残り、名が残る


英雄の名声が照らされ、影に幾千の無名有り


無名の残した物は 歪んだ鎧と折れた剣


これはその時代、名を残す事が無かった


最も有名な無名の剣士のお話




(やるせないな。)

一人の剣士が心の中でぼやいた。

剣士は戦場にいた。大雨だった。

遠く弾ける鉄の激突音

つんざくような雷鳴(大砲か?)

音が剣士を囲んでいた。

突撃部隊、剣士の所属だ。

最初に敵に向かって突撃する、簡単な作業だ。

安全かは別として。

突撃部隊が最前線で戦う最中に、「こちらの国」の

主力騎士団員たちーーー英雄、が

敵の王とそれを囲む騎士を地に伏せ、勝利を掴む。

国民に語られるのは英雄の勝利だ、皆が祝杯をあげる。

無名の騎士たちの死は栄誉ある死であり、意味のある物

として語られる。英雄たちが公の場で彼らを追悼する姿が

容易に想像できる。


「私は勝った!だがこれは私の勝利ではない、あの場まで私を行かせてくれた英雄たちから受け取った勝利なのだ!」


(してその英雄の名は、どんな人だった。答えられまい。)


剣士は自身の想像の英雄に自問した。彼らが血も涙もない人でない事は分かっている。(そうであるはずだ。)

だがそれでは、今朝まで挨拶を交わした

友の扱いがそれでは、あまりにも。


(やはり、やるせない。)


剣士が戦場に似合わない、「勝利の後」を想像している時、

もう一つの「閃き」、疑問が浮かぶ。

(先程の雷鳴は何だ。)

この大雨の中、雷の一つも聞くことがあるだろう。だが

剣士が覚えている限りでは視界が光る様な事は無かった。

そもそもこの時期に大雨はあっても雷が鳴る等とは体験した事もなく、聞いた事も無かった。

(やはり大砲か、この雨で?)

火種がない、不可能だ。剣士は思いつく限りの

「雷鳴」を探した。

(火薬、爆薬、この雨でも聞こえる規模の爆発か。)

剣士が顔を上げる。敵の城から煙が見える。戦闘前に見せられた地図が正しければ火薬庫の位置だった。

(城が落ちたわけではない、故意に火を付けない限りは。)

剣士は数秒考えた。

(城を捨てる気か)

(英雄達が危ない)

剣士は城に向かい突撃した。妨げられる物は居なかった。

剣士の周りには誰も居なかった。皆地面に転がっていた。


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