84 通じぬ話
「──ぷはっ!? けほっ!?」
指先に確かに感じた、温かく力強い感触が失われて。気づいた瞬間には何か深く恐ろしいものに体を飲み込まれて。体の中がぐるぐると回るような──否、体の外もぐるぐる回るような不思議な感覚に、絶えず聞こえていた激しい水しぶきの音。
一瞬のようにも、永遠のようにも感じたそれにも終わりが訪れて、そしてミルカは無意識のうちにしっかり結んでいた口を開き、荒い息をついた。
「はあ、はあ……!」
妙な魔法の大渦に飲み込まれたのだけはわかる。ただ、いったいどうしてそんな目に合ってしまったのかだけがわからない。あんなところで水の魔法を行使したところで、結局はあたりが水浸しになるだけだ。間違っても、これから人を拉致しようとする人間がすることではない。
そのはず、なのに。
「ここ、は……」
呼吸が整い、頭の方もやや落ち着いてきて。幾許か冷静になったミルカが辺りを確認してみれば、目の前に見えたのは。
「……領主の部屋?」
ちょっぴり豪華なデスクに、座り心地のよさそうな椅子。そのほかの調度品は決してきらびやかではないが、落ち着いた上品なデザインで、仕事をする場所としても、客を歓待する場所としても使えそうな内装となっている。
ある意味ではとても馴染み深い、このオルベニオの街の領主の部屋。それもそのはず、だってミルカは領主夫人の従者として何度もこの部屋に入っているのだから。どこに何が置いてあるかも全て頭に入っているし、掃除のやり方だって弁えている。この館の中で三番目にこの部屋に詳しい人間と言っても過言ではない。
問題なのは。
「大丈夫かい、ミルカ? 一応、あの水が使用者に害を与えることは無いはずなんだけど」
「……っ!」
文字通り、心配そうな瞳で──この部屋の主が、自分の背中をさすっているというその事実だ。
「触らないでくださいっ!」
「おっと……ごめんよ」
カルサスの腕を払いのけ、そしてミルカは反射的に距離を取る。
「はは……そんなに露骨に警戒されると、ちょっと傷つくな。知らない仲じゃあるまいし、もう少し信用してもらえると嬉しいんだけれど」
「知らない仲じゃないからこそ、警戒してるってわからないんですか?」
カルサスのことを真正面に見据えながら、ミルカは考えた。
まず、自分は着の身着のまま──エプロン姿で、武器の一つも持っていない。一応魔法は使えるが、風の魔法と言う性質上、武器として使うには少々心もとない。そのうえ相手はあのカルサスだ。ただの魔法使いでも驚異的だというのに、この街一番の……下手したら、この国一番の魔法の使い手である。
となると、逃げの一手しかない。幸いなことに、館の構造は把握しているし、ここで働いている人間は皆ミルカの知り合いだ。こんな格好の自分が騒ぎ立てて走っていたら、尋常ならざる事態であると察して然るべき処置をとってくれることだろう。
ただし。
「──悪いけど、それは今は無しだ」
「でしょうね」
ちら、と出入り口の扉を見た瞬間、それが薄い水の膜で覆われた。
「それよりも、何処も濡れてはいないかい? 魔法の水だからもう霧散しているとは思うけれど、なんせいつもは一人で使っていたものだから」
「……移動魔法が使えるなんて、初めて聞きましたけど?」
「大々的に話すようなことでもないからね。……そこの机にある鏡は《水の標》と言ってね。ただの鏡じゃあなくて、《旅人の湧水》の移動先となるんだ。尤も、移動先として機能する範囲はせいぜいがこの街の中くらいってところだけれど」
道理で、火遊びの痕跡が全く見つからなかったわけだ──と、ミルカは一切の遠慮も躊躇いも無く舌打ちした。
「……それで? いきなり戻ってきた挙句、今度は私を誘拐ですか? あなた、本当にいったい何がしたいんです?」
「やだなぁ。……まぁ、確かに少々強引だったかもしれないけれど、僕は自分の従者を自分の館に連れ帰っただけだよ」
「どの口が──!」
「──話を聞きたい、って言ったはずだよね」
「っ!?」
いきなり変わった、カルサスの雰囲気。ちょっと遊んでいそうな、それでも優しげで甘い顔立ちから発せられたとはとても思えない、ある種のプレッシャー。先ほどまでのカルサスがただの女たらしだとしたら、今のカルサスは領主としての重圧を放っている。
「ミルカはルフィアの従者……つまりは身内だ。だから僕も、出来ることなら身内として話を聞きたい。だけど、もしそれを拒むというのなら……領主として、命令をしなくちゃいけなくなる」
先ほどと同じように優しく笑いかけているはずなのに、カルサスの目は一切笑っていなかった。
「それは僕の本意ではない……言っている意味、わかるかな?」
「ええ、わかりますとも……! 女にだらしがないというその一点を除けば、あなたは領主として誰よりも有能ですものね!」
「ははは……僕としては、誰の気持ちにも真摯に全力で応えているだけのつもりなんだけどね」
ふっと霧散した空気。今度は本当に心からの笑みを浮かべたカルサスは、ポケットから取り出したハンカチをミルカに差し出した。
「遅くなったけど、改めて。……無事でよかったよ、ミルカ。また会えて本当にうれしい。それに、なんだか……」
「……」
「──なんだか、すごく綺麗になった。前よりもずっと魅力的だよ」
「反吐が出ますわ」
差し出されたハンカチを、ミルカは叩き落とした。
「手厳しいね、これは。お世辞なんかじゃなく、本心からそう思っているんだけれど」
だから問題があるんだぞ、とミルカは再び盛大な舌打ちをした。
「ええ、おかげさまで……あなたとは違う信頼できる誠実で心優しい人と共に、心労の無い生活を送れていましたから」
「キミにそこまで言わせるだなんて、イズミもすごい人だよね。……もしかして、雰囲気が変わったのはイズミの影響かな? なんだか少し、妬けてしまうよ」
「聞きたいことはそれだけですか? 私、もう帰っていいですよね?」
「いやいや。それじゃあ連れてきた意味が無いじゃないか。本当に、僕は何があったか知りたいだけなんだよ」
少なくともカルサスは、危害を与えるつもりはないらしい。また、女にだらしがなく、その感性もまるで理解できそうにないが──少なくとも、ティアレットとは違って話は通じる。すなわち、目的を達成することさえできれば、カルサスが自分をここに留めておく理由は無くなる。
だからミルカは、開き直ってやることにした。
「ふん。曲がりなりにも領主さまが、犯罪行為になんて手を染めないと信じていますよ。……だから早く、質問でも何でもして私を解放してください」
「おかしいな。これでも僕は、領主として実績を重ねて信頼があると思っていたんだけれど」
「領主じゃないほうの顔での信頼が地に落ちてるって、まだわからないんですか?」
もはや何度目かもわからない困ったような笑みを浮かべて、カルサスは話し出した。
「──まず一つ。これは単純に確認なんだけど……一連の事件について、僕はミルカとペトラがルフィアを賊に売り渡したと聞いている」
「は……?」
「少なくとも公的な記録ではそうなっている。だから処刑されたのは……ガブラの古塔に流刑にされたのはミルカとペトラで、ルフィアは賊に襲われて死んだ……と」
「……」
「だけど、本当はルフィアが井戸に毒を投げ入れたという話も聞いた。しかしそんなことを公表できるはずもない。だから、賊の襲撃ということで処理をした」
「……信じたんですか、それを?」
「わからないから、こうして話を聞いているんだよ」
屈託のない笑みを浮かべるカルサスを見て、ミルカはキレそうになった。
「あなたは……! あなたは奥様が……! 自分の妻がそんなことをする人間だと、本気でそう思っているんですか……!?」
「いいや、思っていないよ。僕のルフィアがそんなことをするだなんて、そんなの絶対にありえない。もちろん、キミたちがルフィアを賊に売るなんてことも、絶対にないと思う」
「なら──!」
「でも、記録としてそうなっている。そして証拠は十二分に揃っていて、僕が帰ってきたときには、キミたちはこの街にいなかった」
「だからって……!」
「感情としてそうであったとしても、理屈として、ルールとして正しく処理が行われている。領主である僕がそれを捻じ曲げるわけにはいかないし、なにより……泣こうが喚こうが、ルフィアやキミたちがいなくなったという事実は変わらない」
町の人間も、ティアレットも。誰一人として、実は水の巫女たちがひっそり生きているだなんて夢にも思わなかった。それは純然たる事実であり、そういう意味ではカルサスの言っていることは間違いなく正しい。
ただし。
それはあくまで、感情を抜きにした場合の話だ。
「あなたは……!」
悔しくて悔しくて、ミルカの声は当の本人が驚くほどに震えていた。
「あなたは、なんとも思わなかったですか……!? 記録として正しくとも、おかしなところなんていくらでもあったでしょう……!?」
「……」
「なんで、水の巫女が井戸に毒なんて入れるんですか! なんで、処刑されるのが二人になるんですか! 賊に襲われたというのなら、一緒にいた従者の話も出てくるはずですよね!? 井戸に毒を入れたというのなら、奥様とペトラと私の三人か、あるいは実行犯である一人だけが処刑されるはずですよね!? 冷静に考えれば……いいえ! 冷静に考えなくとも! 無理矢理に辻褄を合わせようとして、おかしなことになっている部分がいくらでもありますよね!?」
「……そう、だね」
「私でさえすぐに気づけることですよ!? 街のみなさんだって何かおかしいと感づいていたんですよ!? それなのに、あなたが……! そういう面では誰よりも優秀なあなたが、気づかないはずがないでしょう……!?」
「……僕が帰ってきた時には、すでにガブラの古塔への転移は完了していたんだ。もう、死んだものだと諦めていた……っ!?」
あのカルサスが、狼狽えた。
それもそのはず……だって、あのミルカの目からぽろぽろと大粒の涙が流れ出したのだから。
「み、ミルカ……?」
「だまらっしゃい! なにをいけしゃあしゃあと! そんなの、調べればすぐにわかったことでしょう!? あなた、自分の伴侶が大変な目にあったっていうのにろくに調べようともしなかったんですか!? 伴侶を陥れた罪人の顔がどんなものなのか、見ようとすらしなかったんですか!? 『処刑された』って一言だけを見て、それで全部諦めたんですか!?」
悔しくて悔しくて、ミルカは泣いているのだ。今目の前で起きていることがあまりに信じられなくて、感情が追い付いていないのだ。いったいどうして……と自分でも不思議に思っているのに、それでも目から零れるそれを止めることが出来ないのだ。
「……真実はわからなかった。本当に賊だったのかもしれないし、ルフィアがやっていないという証拠も無い。ルフィアの名誉を守るため、書類上は従者であるキミたちの名前にした可能性だって強かった……状況証拠だけを見るなら、むしろ」
「あ、あなた……本気で言っているんですか!? あの奥様が……自分が愛した人がそんなことをする人だと、本気で思ったんですか!?」
「いいや……さっきも言った通り、ルフィアがそんなことをするとは思っていない。だけど……」
「いいえ……それどころか、処理に細工があったと気づいた後も! ガブラの古塔に転移したとわかったなら……どうして、探しに行こうとしなかったんですか! どうして、あがこうとしなかったんですか!? 領主であるあなたなら、ガブラの古塔の場所だって調べられたんじゃないんですか!?」
「……僕にも、あの古塔の場所はわからないよ。あれの管理は政治とは全く独立して行われているからね」
「だったら! わからなかったのならなおさら、真実を確かめようとするものじゃないんですか!? たとえどんな手段を使ってでも、調べようとするものじゃないんですか!?」
「……越権行為だよ、それは。領主として絶対にやってはいけない行いだ。いくらきな臭い案件とはいえ、塔の管理そのものはそれとは別件だ。僕がそれを犯したら、この街の仕組みそのものが崩壊する」
ミルカがヒートアップしているのが、はっきりと感じられたのだろう。なだめすかすようにして、カルサスは穏やかな声で語り掛けた。
「それに……仮にそれができたとしても、あまりにも時間がかかりすぎる。生きてる見込みが絶望的なのに、個人の感情だけで動くことはできない。僕がそれに時間をかけていたら……領主としての仕事を放棄したら、結果として苦しむ人間が何百人、何千人……何万人とでてきてしまう。領主として、それを許容するわけにはいかない」
「……」
「そして結果として、ガブラの古塔は帰らずの森の中にあった。そのうえ、普通の人間じゃまず太刀打ちできない強力な防衛機構も備えていたんだろう? だから、全ての無理を通したとしても、どのみち無駄足になっていた。間に合うはずもなかっただろう……ミルカ?」
ポロポロと零れていた涙すら止まって。
呆れたというか、何と言うか。
ミルカは本気で、目の前にいるこの生物が人間なのかと──自分たちと同じ理性と感情を持ち合わせているのかと思った。人間の皮を被った何か薄気味悪いものではないかと、不気味にすら思えた。
「あなた……自分が何を言っているのかホントにわかっているんですか……? 愛する自分の伴侶と子供が死んだかもしれない……もしかしたら生きている可能性もあるかもしれないのに、なんでそんな他人事みたいな態度取ってるんですか……?」
「努めて冷静に、この立場に求められる振る舞いをしていたつもりだけれど……ふむ」
パン、とカルサスはその場の空気を払拭するように手を叩いた。
「ミルカ。どうやらキミも少し疲れているみたいだ。この続きは、明日落ち着いてから聞かせてもらおうかな」
「……」
「家には……ああ、今のキミの家って言えるのはイズミの家なのかな。残念だけど、そっちにはまだ帰すことはできない。今日の所は僕のベッドを使ってくれ」
「……どういう意味です? これ以上私を失望させないで下さいよ。あなたに股を開くくらいなら、舌を噛み切って死んだほうがマシです」
「ひどいな……確かに、客観的に見ればそう思われてしまうのもわからなくはないけど、今までに一度だってそんな真似をしたことは無いってキミは知っているだろう? 本当に、言葉通りの意味だったんだけれど」
「ええ、知っていますわ! もしそんなことをするお人でしたら、この街の過半数の女性があなたの毒牙に掛かっていたでしょうね!」
そしてミルカは、カルサスに背を向けて扉の前に立った。
「──こっちの自室に戻ります。この館から出なければいいんでしょう? 私はそこから逃げも隠れもしませんし、何よりこの部屋になんて居たくない。軟禁するにしても、その方がお互い都合がいいんじゃありませんか?」
誘拐じゃないなら、吞んでくれますよね──と、ミルカは背中だけで語ってみせた。
「……だったら、構わないけれど。ずいぶん威勢が良いというか、思い切っているというか……なんというか、自信に溢れているね」
「ええ、それはもう──」
カルサスの方を振り返って。
ミルカは、この部屋に来て初めての極上の笑みを浮かべた。
「あなたと違って──イズミさんは、絶対に助けに来てくれますから」
▲▽▲▽▲▽▲▽
「おい、あの賢者の話聞いたか?」
「ああ、もちろん……俺達、どうすればいいんだろうな?」
「どうって……騎士団なんだから騎士団の仕事をするしかないだろ?」
「でもさ……」
「うん?」
「賢者の嫁さん、領主さまが攫ったんだろ? じゃあ、捕まえるべきは領主さまなんじゃないのか?」
「でもその前に、賢者が領主さまをぶん殴ったんだぜ?」
「そんなの、酒場の近くじゃよくあることだろ。それだって、適当に一晩反省させれば前科にはならないし」
「俺達みたいな平民ならそうかもしれんが。ご貴族様を殴ったとなったら、それだけじゃ済まないだろうよ。もっと言えば、領主さまはあくまで従者を迎えに来ただけ……と、言えないこともない」
「……従者の前に、誰かの家族だろ。それを力ずくで連れていくってのは」
「……言いたいことはわかるが、明確にやらかしたのは賢者の方になる。そして、領主さまからはあくまで個人のやり取りだから不問にするとお達しが来ている。被害者がそう言うのだから、俺達はそれを信じるほかないだろう?」
「……」
「それにあの領主さま、女癖の悪さで有名だが無理やりってのは聞かないからな。毎回毎回女の方がぞっこんになって……まぁ、だからこそタチが悪いともいえるんだが」
「……だよなあ。なんであんなのに水の巫女様は惚れたんだろうなあ」
「……よく考えてみれば、そういやその問題はどうなったんだ? いや、妻とこれから奇跡の再会をするっていうのに別の女を連れ込んだのか?」
「どうなってんだよあの領主……アレか? 側室とか愛人とか妾ってやつか?」
「ちょーっといいかなあ?」
薄明りの向こうで、声が上がった。
「こんな辺鄙な牢屋の見張り番とはいえ、うっかりが過ぎるんじゃないかな? 不敬罪と捉えられかねないよ?」
「うぉ……っ!? なんだよ、急に声を出すなよ。びっくりするじゃねえか」
「なんだよ真っ赤っか野郎、今日はおしゃべりしたい気分なのか?」
「僕はいつだっておしゃべりしたいのに、応えてくれないのはキミたちのほうだろう?」
「……」
「……」
「ま、それが本来の在り方だろうけどね。僕としてはいつでも尋問してくれて構わない……けれども、お口のうっかりが過ぎると、キミたちもこっち側になっちゃうかもよ?」
「……生憎、ウチの領主さまはそんなに狭量じゃねえよ。これくらいだったら笑い飛ばしておしまいさ」
「うん、実際マジでそうなるだろうね。あの人、女癖の悪さ以外は本当に理想的な領主さまだもんね」
「……」
「……」
「それにしてもまあ、賢者様の周りには話題が尽きないね! ちょいと興味本位なんだが、その辺の詳しい経緯を教えてくれないかい? どうにも、牢獄の中は退屈でしょうがなくて!」
「……誰が教えるかよ、そんなの」
「ええー……さっきまではノリノリで話していたじゃあないか! 同じようにおしゃべりしてくれるだけでいいんだ! どのみち僕は抵抗のしようが無いし、模範囚だろう? どうせ街中では同じような噂がいっぱい流れているんだろうし、それくらいは許してもらってもいいんじゃないかな?」
「確かにその通りだが、お前の意思でそうしたと思われるとこちらの沽券に関わるんだよな」
「だが、忠告は受け取っておこう。これからは口を噤んで職務を全うすることにするよ」
そうして、おしゃべりの声はピタッと止まる。そのことを非常に口惜しく感じながら、赤づくめの男は冷たい牢の壁に寄りかかって、そしてぽつりとつぶやいた。
「……忠告を、もう一つ」
もし、彼らが耳を澄ませていれば。
赤づくめのその言葉が、聞き取れたかもしれない。
「……僕の方に話し声が聞こえたってことはさ」
もはやすっかり貧弱になってしまった魔力感知を使おうとして、赤づくめの男は荒い息をついた。
「……間違いなく、反対側にいるあの人にも聞こえてたってことなんだよね」
▲▽▲▽▲▽▲▽
「うふふ……カルサス様、帰ってきたのね……!」
薄暗い、牢の奥。
「待っててくださいね、カルサス様……! 私が、必ず……!」
狂気を帯びた不気味な笑い声が、冷たい牢獄に小さく響いた。




