物語の始まり
ここは唯一、四種族が共存している自由国エギジスト、かつての英雄グランファミリアの一人が四種族の共存を願い作った国である。
「それでは、これより学園卒業最終工程、ファミリア階級適性検査を行う」
そう声を講堂に響かせ、持っている杖を高々と掲げたのは屈強な身体には似合わない腰までの長い髭が目立つ老人、このファミリア学園の学園長だ。
この学園に行かないとファミリア階級が上の階級になることができない。ファミリア階級は上から、王、将軍、聖騎手、騎士、兵士となっていて、ファミリア学園を卒業しないと騎士以上になれないため、ファミリアに所属したい者は学園に行くのである。
そして、彼らもまたファミリアで上の階級になるため、この学園に来ていた。
「やっとだね、ソラ」
茶色の癖のない髪が目を引く優しそうな青年が、ソラの方を向く。
その顔から落ち着いているようだが、興奮が伝わってくる。
「そうだな、レイ」
あからさまに興奮した声でそう答えたソラはレイとは対照的な黒色の少し癖のある髪型だ。
「ここから、始めるんだ」
ソラが決心を強くしたのと同時に検査が始まった。
検査は至って簡単で一人ずつ順番で、学園長の前に行きそこにある水晶に手を触れると適性のある階級が浮かび上がるようになっている。これは学園長のファミリアの能力であらゆるものの適性をはかることができる。このようにファミリアにはファミリアごとにひとつファミリア能力があり、そのファミリアに所属するとその能力を使うことができる。
さらに、ひとりひとりに個別の能力が与えられ、階級が上がれば上がるほど強力な能力が与えられる。つまり、ファミリアに所属すると二つの能力を使うことができる。ちなみに学園長の能力は「創造」あらゆるものを作り出すことができるというものだ。この学園も一から学園長が創ったものである。
しばらくすると、ついにソラたちの番がやって来た。
まずは、レイから検査が始まった。レイは水晶の前に立ち、一呼吸おいてから水晶に手をかざした。文字が浮かび上がってくる。
適性「将軍」、能力「停止」
「なっ、レイ、適性 将軍、能力 停止」
学園長は少し驚いたようだが、気を取り戻して、宣言した。すると、辺りがざわつく。ざわつくのも無理はない、将軍は一年に数人しかなれないからであり、王にいたっては数年に一人しか適性を持つ者が現れないからだ。
「さすがレイだな、まあ、予想はしていたけど」
ソラは笑みをこぼしレイをみる。
ファミリア階級はさまざま鍛練を繰り返すことで上げることができる。努力すればするほどあげられるのだ。つまり、レイはそれほど努力したことになる。
「あれだけ、やって来たからな」
ソラはさらに笑い自分の適性をはかるため水晶の前に行った。ためらうことなくスッと水晶に手をかざす。
適性「王」、能力「瞬間移動」
「なんとっ、ソラ、適性 王、能力 瞬間移動」
学園長が興奮しながら、高々と宣言した。
すると、辺りは先ほどとは比べものにならないくらいの大歓声が湧いた。
ソラはレイの方を向き、拳を突きだし笑った。
「さすが、ソラ」
レイもそれにこたえるように拳を突きだす。
「やっぱソラには敵わないな、あれから十年か、やっとだね。」
レイは微笑み昔のことを思い出していた。